解説07:拡散項


 

パッチ間の移動

 ここまでは空間的に均一な閉じた系を扱ってきた.しかし,現実には動物はある場所から次の場所へと移動するし,化学反応にしても空間的に均一である場合ばかりではない.この場合,均一だと考えられる範囲を一つのパッチとして考え,パッチ間で動物や物質が無秩序に移動する,つまり,拡散するとしてモデル化する.ロトカ-ボルテラ方程式に拡散項を付け加えて,このモデルは以下のようになる.

dx/dt = rx - axy + k1Δx (5)
dy/dt = bxy - cy + k1Δy (6)

 この場合,拡散の長さと比べて小さな領域では拡散の影響はあまり現れず,前述の場合と同様に簡単な振動する解となる.しかし,十分広い領域を考えると,拡散による領域間の相互作用のために空間的なパターンを形成する

 前述の振動反応においても,1998年,寒天で反応溶液の粘性を高めて拡散速度を落とすことにより,赤と青の空間的パターンを形成することに成功した.


<前|  [戻る]  |次>