3.2 高周波化による問題点

 高周波化による高機能化、小型・軽量化がなされた一方で、スイッチング過渡時に生じる問題点がクローズアップされてきた。スイッチング過渡時の問題点は、スイッチング時に伴う、電圧、電流サージによるスイッチングストレスの増大やスイッチング損失の増加である。これらは、システムの変換効率と信頼性に大きく影響してくる。
 図3.2.1に、今回実際に用いたパワーデバイスであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のスイッチング過渡時の電圧、電流波形を示す。実際のパワーデバイスのスイッチング特性は、瞬時にターンオンまたはターンオフされるような理想的なものでなく、テール電流やサージを含むスイッチング特性となる。このようなスイッチング過渡時の現象は、高周波化により以下のような問題点を生じる。

●テール電流と電圧の交差部分(図中の斜線部)はスイッチング損失となる。高周波化により スイッチング回数が増加していくと、それに比例してスイッチング損失は増大し、その結 果、変換効率を低下させる。
●スイッチング速度が非常に高速であるため、配線中に含まれる寄生成分や浮遊成分、また パワーデバイス自身が持つキャパシタンス成分などによる影響が無視できなくなる。これ らは、スイッチング過渡時に生じるサージ電圧、サージ電流の発生要因となる。
●サージ電圧、サージ電流は、パワーデバイスのストレスを増大させてしまい、電力変換装 置の信頼性を著しく低下させる。
●サージ電圧、サージ電流に含まれる高いdi/dtやdv/dtは、EMIノイズやRFIノイズの発 生要因となる。

 これらの諸問題は、ノイズフィルタやスナバ回路を設けるなどの対策を施すことにより解決される。しかしながら、大きなスナバ損失による変換効率の低下やそれによるコスト増は、高周波化により得られるメリットを減殺することがある。



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