A: |
BrO3- + Br-
+ 2H+ |
→ HBrO2 + HOBr |
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HBrO2 + Br- + H+ |
→ 2HOBr |
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HOBr + Br- + H+ |
→ Br2 + H2O |
B: |
BrO3- + HBrO2
+ H+ |
→ 2BrO2 + H2O |
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BrO2 + Ce(III) + H+ |
→ HBrO2 + Ce(IV) |
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2HBrO2 |
→ BrO3 + HOBr + H+ |
C: |
MA + Br2
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→ BrMA + Br- + H+
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2Ce(IV) + MA + BrMA |
→ fBr- + Ce(III) + etc |
*ただし,MAはマロン酸,fは化学量論因子.
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振動反応(ベルソフ-ジャボチンスキー反応)
通常,化学反応は反応物が一方的に生成物に変化してしまうか,あるいは,ある平衡状態になってしまう.ところが,うまく条件を整えてやると,反応物が生成物となり,さらに,生成物が反応物に戻り,というように,反応系と生成系を周期的に行き来する反応,振動反応を起こすことができる.
マロン酸と臭素酸カリウムを用いたセリウムの酸化還元反応も,うまく条件を整えてやるとセリウムが酸化状態と還元状態の間を周期的に行き来する.反応機構は完全に解明されてはいないが,A〜Cのようになっていると考えられている.
Aの反応ではBrO3-がBr-を酸化してBr2が生成する.しかし,この反応が進行するとBr-の濃度は減少し,
BrO2-の濃度が増加する.すると,Aの反応の速度は減少し,Bの反応の速度が増加することになる.
Bの反応ではCeが3価から4価に酸化され,溶液の色は赤から青へと変化する.この段階は触媒サイクルを形成しており,一旦反応が始まると反応速度は急激に上昇する.3価のCeが減少し4価のCeが増加すると,この反応の速度は減少し,Cの反応の速度が上昇する.
Cの反応ではマロン酸が分解されながらCeが4価から3価に還元されて,溶液の色は青から赤へと変化し,同時にBr-が再生される.4価のCeが減少して3価のCeが増加,かつ,Br-が再生されることにより,Cの反応の速度は減少し,再びBの反応が支配的となる.
以上のように,この溶液ではBとCの反応が交互に,マロン酸が消費されるまで繰り返され,溶液の色は赤と青の間を振動することとなる.
応用化学科の4年生の物理化学では,前期の前半に反応速度論を学習しており,化学反応速度は各反応物の濃度のべきを含む,時間に関する1階の微分方程式であることを学ぶ.振動反応を数学的な言葉で言い直してみると,それぞれの反応物の濃度が絡み合った連立微分方程式であり,条件によっては自己組織化・秩序化を起こすことがわかる.つまり,数学的な構造としてカオス現象・共同現象の数理としてモデル化できることが理解できる. |