みなさんはスマートフォンやiPadなどの携帯端末の登場により私達の生活は便利になったと感じていると思います。
それらのディスプレイや液晶テレビのほとんどが多結晶シリコン(Si)TFT型液晶と言われているものです。
液晶の中でも高性能であることから、今後もこのタイプが主流になると言われています。
Siは結晶の状態で大きく性能が変わりますが、多結晶Siの結晶性は最近の技術の進歩により最も結晶性の良い単結晶に近づいています。
それにより、画像そのものが綺麗になる他に、ディスプレイ基板に集積回路を組み込むことが可能になり、より高性能な携帯端末を作ることが出来るようになります。
私の研究室ではナノメートル(10億分の1m)という極めて小さな世界で新材料、新技術を用いて「高性能メモリ」、「高性能トランジスタ」、「装置の遠隔操作」の3つを研究テーマに、現在のスマートフォンを超える高性能次世代携帯端末の研究を行っています。
今回はその研究を簡単に紹介します。
1. 高性能メモリについて
携帯端末に使うメモリの条件として、電源を切っても情報が消えないこと、高速書き込み消去、大容量が求められます。その条件に最も適しているのがUSBメモリでおなじみのフラッシュメモリです。
図1. 実際に作製したTFT メモリ |
図2. TFT メモリの断面TEM像 |
2. 高性能トランジスタについて
トランジスタの高性能化により、更に画質が向上したり早い動きに対応出来るようになります。
その高性能化には良い絶縁膜が必要です。
これまで使用されている材料に代わる新たな材料を用いることで、より性能の良いトランジスタの研究をしています。
その絶縁膜の電気特性は理論値とほぼ一致し良質な薄膜の形成に成功しました(図3)。
現在トランジスタでの評価を行っている段階です。
また、新材料であるカーボンナノチューブ(CNT)(図4)、ZnO(酸化亜鉛)を用いた次世代高速トランジスタも研究しています。
図3. 新規絶縁膜の膜質評価 |
図4. CNTの電子顕微鏡像 |
3. 装置の遠隔操作について
高専ではどうしても大型装置などが揃わないため、大学等の研究機関に出張し実験する場合が多くあります。
しかし移動時間、費用を考えると、装置を所有している場合に比べ多くの労力を必要とします。
そこで大阪大学、舞鶴高専と共同研究で神戸高専に居ながら、大阪大学のイオン加速器を遠隔操作により表面分析実験出来るように研究を行っています。
まだ試作段階ですが将来的には携帯端末からの遠隔操作を目指しています。
みなさん10年前を思い出してください。 10年前に比べると現在の私達の生活は飛躍的に便利になっています。 市川研は同じように10年先の私達に「便利になったね」と言われるように、これからも研究を続けていきます。
- 三次元基板を用いた低温ポリシリコンTFT メモリの研究(奈良先端大との共同研究)
- 次世代メモリMRAMの実現に向けた磁性半導体の微細加工の研究(岡山大との共同研究)
- 高性能MOSFETに向けた高誘電率薄膜の研究(奈良先端大との共同研究)
- カーボンナノチューブを用いたメモリ応用の研究(豊橋技科大との共同研究)
- 大型実験装置を高専間で共有する多地点遠隔教育実験システムの構築(舞鶴高専との共同研究)
- ZnO-TFTの作製に向けたチャネル層の研究
- 就職先: 東京電力、大阪ガス、川崎重工業、IHI、ヤクルト、グリコ
- 進学先: 長岡技術科学大学、本校専攻科