2-3 2次側PWM制御の各モードの動作状態

 2次側PWM制御DC-DCコンバータの定常状態は、8つのモードに分類される。この定常時の動作を、図6に示す動作波形を用いて説明する。

 また、図6の時刻(t0-t8)に対応する等価回路を図7に示す。簡単のためパワーデバイスはスイッチング時間がなくオン、オフが瞬時に切り替わる理想スイッチとする。また、回路も内部抵抗や浮遊容量等のない理想的なものとする。ただし、高周波トランスの漏れインダクタンスは2次側のZCS動作に利用するため考慮している。

図7 動作モード状態遷移図(Mode1〜Mode8)

●Mode1:電力供給期間(0≦t<t1)

 この時刻では、S2,S3,S5(D5),D8がオンしており1次側から2次側へと電力を供給している。この状態は時刻t1でS2,S3がオフされるまで継続する。

●Mode2:ZVS転流(部分共振)期間(t1≦t<t2)

 時刻t1においてS2,S3をオフすると部分共振状態となり、C2,C3(C1,C4)は充(放)電を開始する。Vc2,Vc3は線形的に増加し直流電圧Eに達するとi1はD1,D4へ転流されるためS2,S3はZVSでターンオフされたことになる。トランス電圧V1,V2はS2,S3のオフと同時にV1>0,V2>0となる。V2>0となるとD5は逆バイアスとなるためiS5が急激に減少し、ゼロになった時点でD5はオフとなる。その後にS5をオフさせるとS5はZCSかつZVSでターンオフされたことになる。そして、1次側と2次側は回路的に分離され単独環流期間が開始する。

●Mode3:単独環流期間(t2≦t<t3)

 D1,D4がオンすると1次側の補助インダクタ電流ia,ibはD1,D4を通って電源へ回生される。2次側は負荷電流idがD7,D8を通してながれる単独環流期間である。この期間はS1,S4がオンされてもS6がオフなのでインバータ電流i1は流れず電力は供給されない。補助インダクタ電流が回生中にスイッチS1,S4をオンにしておくと、回生終了後またはインバータ電流i1の流入開始後にS1,S4はZVSかつZCSでターンオンされる。この状態はS6がオンされるまで継続する。実際には高周波トランスの励磁電流が流れるが、その値は実質上極めて小さく、その方向は1次側のZVSを促進させる方向となるのでそれによる影響は問題にならない。

●Mode4:ZCS転流期間(t3≦t<t4)

 時刻t3でS6がオンされるとi1,i2が流れ始め、電力の供給を始める。S1,S4はすでにオンされているのでZVSかつZCSでターンオンする。2次側ではi2が流れ始めるためid8からis6へと転流を始める。この時、高周波トランスの漏れインダクタンスのため急激に転流するハードスイッチングにはならず、id8からis6へと徐々に転流するZCSモードのソフトスイッチングでS6はターンオンする。 

●Mode5:電力供給期間(t4≦t<t5)

 2次側がis6へ転流されるとS1,S4,S6(D6),D7がオンとなり電力の供給を始める。この期間は時刻t5まで継続する。

●Mode6:ZVS転流(部分共振)期間(t5≦t<t6)

 時刻t5でS1,S4をオフすると部分共振状態となる。S1,S4はMode2と同様にZVSでのターンオフとなる。2次側では、V2がV2<0となりD6は逆バイアスとなるため、is6が急激に減少しゼロになった時点でオフとなる。その後にS6をオフさせるので、S6はZVSかつZCSでターンオフできる。

●Mode7:単独環流期間(t6≦t<t7)

 Vc1,Vc4が直流電源電圧Eに達するD2,D3がオンとなり補助インダクタ電流は電源へ回生する。2次側では単独環流が始まり1次側と2次側は回路的に分離されるため電力は供給されない。次のMode8でS2,S3をZVSかつZCSでターンオンさせるため、補助インダクタ電流が回生している間にS2,S3をオンにさせておく。

●Mode8:ZCS転流期間(t7≦t<t8)

 時刻t7でS5をMode3と同様にZCSでターンオンさせると1次側電流i1が流れ始め、負荷へ電力の供給が始まる。この時、S2,S3もMode3と同様にZVSかつZCSでターンオンされる。時刻t8でid7からis5への転流が終わるとMode1に戻り、1周期が完了する。

 このように提案するコンバータではすべてのスイッチングにおいてZVSかZCSまたはZVS&ZCSのソフトスイッチング動作が負荷の状態に関係なく実現できる。また、循環電流の除去もされることから大幅な導通損失の低減、変換効率の向上がなされると考えられる。



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