第5章 まとめ

 本レポートでは、実際に試作した高周波ACリンクDC-DC/DC-ACコンバータの実測波形に対してフーリエ変換、ウェーブレット変換を行い、ウェーブレット変換のパワーエレクトロニクスへの応用について検討し、ウェーブレット変換の特徴や有効性について述べた。ウェーブレット変換の特徴を簡単に述べると以下のようなことが挙げられる。

■現象変化の生起時間の特定       
■時間的に変化する周波数成分の可視化

このような、ウェーブレット変換ならではの特徴から、今後のパワーエレクトロニクス分野への応用を考えたとき以下のような利点があげられる。

●スイッチング時の過渡的な現象の周波数解析ができる。これにより見いだされる特徴的な 高調波が、実際に用いるパワーデバイスの内部の状態に起因するものなのか、また回路構 成上の要因によるものなのかといった詳細な考察ができる。
●電力変換装置内で行われる様々なスイッチング動作によって発せられる高調波の伝搬を調 べることにより、高調波対策としてターゲットにしなければならない周波数帯や特定箇所 を絞り込むことができる。
●従来の周波数解析であるフーリエ変換では見えなかった情報をウェーブレット変換を用い ることによって見出し、的確な問題解決ができる。

これらは、実際のシステムの設計において施されるノイズフィルタなど様々な対策装置の簡略化や設計の最適化などに有効であり、全システムの低コスト化や小型・軽量化など周辺回路も含めた改良の手段となると期待される。また、パワーデバイスの特性や配線インダクタンス等による影響を的確に捉えていくことにより、使用する最適なパワーデバイスの選択や電力変換装置の実装面での改善など主回路部分の改良にも貢献できると思われる。
 このように、ウェーブレット変換により得られた新たな情報を、今後さらに詳細な解析、検討を行っていくことにより、これからのパワーエレクトロニクス分野のさらなる発展に大きく寄与できるものと期待される。



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