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フーリエ変換技術概要 (1)概要の概要


白色光をプリズムに通すと、いろいろな色に分解できます。これを分光spectrumといいます。
一つの色の光を単色光といいます。
分光でできたそれぞれの単色光を混ぜ合わせれば、再度元の白色光に戻すことができます。

信号を単一振動の波に分解して、
振動数ごとにその成分を並べたものをスペクトラム(またはスペクトル)といいます。

音も何らかの方法でいろいろな音色に分解できます。
一つの音色の音を単色の音と呼びましょう。
分解してできたこれらの単色の音を混ぜ合わせれば、再度元の音に戻すことができます。

単色の音の強さを音色の順に並べれば、
その分布の様子で、その音の全体的な音色が決まります。
だから、その分布の様子を視覚化すれば、
目で見てその音の全体的な音色を当てることもできます。

  筆者のアーの声の信号(上左図)と絶対値表示のスペクトラム(上右図)

  筆者のイーの声の信号(上左図)と絶対値表示のスペクトラム(上右図)

スペクトラムの図のたくさんの山は、それぞれ山の高さに対応した大きさの単色の音を含んでいることを意味しています。これらの山の高さは、発声の仕方で変わります。

混ぜ合わせるとき、ある単色の音を強めたり、
また、別の単色の音を弱めたりすれば、
元の音とは違った音が作られます。
風呂場でいい声に聞こえるのは、
このようなことがうまく起こっているためですね。

フーリエ変換技術とは、
簡単に言えば、
信号がどのような単色の波に分解できるか、
あるいは、どのような単色の波によって、信号が合成できるか、
についての技術です。

これを元にして、
任意信号を合成できるようになります。
音色の認識や、紙幣などの図柄の認識が、コンピュータでできるようになります。
音や、電気信号などの伝達において、伝達路の特性が分かるようになります。
デジタル標本の特性やデジタルの各種フィルタの特性が分かるようになります。
速度計測、距離計測ができるようになります。

また、量子力学の分野では、
時間軸においてもまた空間軸においても一様に存在する(つまり、時間、場所を特定できない)電子や光子などが、単色の波で表わされます。
その波の振動数ν、波長λは電子や光子などのエネルギE、運動量pと
   E=hν、p=h/λ
で結ばれています。
このことが、これらの粒子の時間、空間での「不確定性原理」の元になっています。
いろいろな単色の波で合成すれば、特定時間領域や特定場所領域にある光子や電子の存在を表すことができます。
例えば、時間Tにだけ存在するような振動数νの波は、振動数ν±1/Tの振動数の波でほぼ合成できます。
つまり、このような波の振動数にはほぼΔν=1/Tの誤差がある、といえます。
これより、エネルギの誤差はほぼΔE=h/Tといえることになります。
時間Tで測定した振動数νの波は、
時間Tにだけ存在するような振動数νの波、ということです。
従って、時間Tで測定した電子や光子などでは、
ΔE=h/T
が成立することになります。
これが、時間軸における粒子の不確定性原理と呼ばれるものです。