(BACKto)フーリエ変換技術目次

フーリエ変換の性質


(5.1)フーリエ変換の性質1(不確定性)

測定時間と周波数についての不確定性(有限時間で打ち切られたコサイン波のフーリエ変換)

 周波数f1のコサイン波が、図のように、間隔t=-A/2〜+A/2で打ち切られた、とします。

次の図はA=1,f1=100の場合のG(f)のf=100~110の部分を示しています。フーリエ成分はf=±100でのピークを中心に分布し、だいたい中心から±1/A、この場合は±1に分布しているとみなしてよいでしょう。

 また、次の図はA=4,f1=100の場合のG(f)のf=100~110の部分を示しています。フーリエ成分はf=±100でのピークを中心に分布し、だいたい中心から±1/4に分布しているとみなしてよいでしょう。  このように、フーリエ成分はf=±f1でのピークを中心に分布し、だいたい中心から±1/Aに分布しているとみなしてよいことが判ります。

 ラッパが「ラ」の音を鳴らすとき、人間は鳴りだすとすぐに「ラ」の音を認識できます。このように人間は、ある周波数の正弦波振動は有限時間に認識できるもの、としてとらえています。
 しかし、フーリエ変換理論では、-∞〜+∞の時間で積分することでフーリエ成分に変換しており、ある周波数の正弦波振動、とは無限の過去から無限の未来に続く正弦波を意味します。
 人間の場合は、音を分析する何らかの器官が、ある分解能で分析するのにある有限時間かかる、ということであろうと思われます。フーリエ変換理論では、100%分解能で分析するのには無限時間必要、ということです。

 発振回路の電源がある時間Aを越すとOFFするとき、そこから発生する発振電圧は、発振器の発振周波数を中心とする無数の周波数の正弦波で合成できることになります。従って、フーリエ変換理論ではこの信号はある単一周波数の正弦波ではない、ということになります。
 この信号の周波数が、発振器の発振周波数を中心として、どのぐらいの周波数範囲に分布しているかがG(f)より判ります。G(f)より、周波数の誤差ΔfとAとの積をつくると、だいたい、

AΔf≦1

の関係になることが判ります。このことは、有限時間Aの正弦波の周波数は1/Aの不確定性がある、と言うことができます。
 フーリエ変換によって信号の周波数成分を解析するとき、周波数分解能を上げるためには、測定時間を長くする必要があることになります。


(FORWARD)(5.2)フーリエ変換の性質2(移動則)