(BACKto)フーリエ変換技術目次

(6)離散(ディスクリートDiscrete)フーリエ変換(DFT)


(6.2) AD,DA変換と標本化定理
 現実の標本化定理
 AD変換対象信号(サンプル・アンド・ホールドされた信号)

 現実にアナログ信号を標本化する場合には,普通それを電圧に変換しその電圧をAD(アナログ-ディジタル)変換器を用いて標本化します.
 AD変換器を用いて標本化する場合,普通AD変換器内にはAD変換前段にサンプル・アンド・ホールド(Sample and Hold)回路が設けてあり,これでAD変換処理の間入力信号を保持するようになっています.
 対象信号g(t)のサンプル・アンド・ホールド回路出力信号をgAD(t)で表します.それを図(a)に示しています.そこではΔtの間,標本値が保持されています.
 
  サンプル・アンド・ホールドのΔtの間に1つの標本のAD変換が完了するとその標本は数値化されます.このとき,この数値はある範囲の整数で表され必ず量子化誤差と呼ばれる誤差(最大0.5)が生じます.(例えば8ビット分解能のAD変換の場合,この整数範囲は-128から127になり,その整数値には最大でこの誤差があります.)しかしここでは数式の単純化のため,標本値は実数としこの量子化誤差は無いとします.
 標本間隔Δtの間信号を保持するために図(b)に示す関数hSH(t)を考えます.これはt=0で値1/Δtを設定し,Δtの間その値を保持する,Sample and Holdの数学的関数です.これをサンプル・アンド・ホールド関数と呼ぶことにします.hSH(t)をt=nΔtまで移動し,nΔtでの標本値g(nΔt)の高さにすることにより作られた矩形波g(nΔt)hSH(t-nΔt)Δtを用いると,gAD(t)は次式で表すことができます.  以下では詳細を省略します.これは次に表現できます. 従ってこのフーリエ像関数は次になります. ここで, となります.これはΔt時間における平均化を行いΔt/2遅れで出力するシステムの伝達関数です.
 DA変換出力信号も簡単化のため量子化誤差が無いとして,その信号を遮断周波数がナイキスト周波数未満のロー・パス・フィルタに通すと,この信号gDA.LPF(t)のフーリエ像関数は次になります. 再生信号gDA.LPF(t)は元信号のΔt時間における平均化に相当し,元信号にHSH(f)のフィルタがかかったことになり,元信号の周波数fにおける成分はHSH(f)の絶対値倍され,それが再現される時はΔt/2だけ遅れます.HSH(f)の絶対値はナイキスト周波数辺りでは2/πに下がりますが,これを近似して1とおくと,gDA.LPF(t)はg(t-Δt/2)となります.これを図に示します.

(FORWARD)(6.3) 離散フーリエ変換