【 2025 年度 授業概要】
科   目 物理化学Ⅰ ( Physical Chemistry I )
担当教員 梶本 健太郎 非常勤講師
対象学年等 応用化学科・3年・通年・必修・2単位【講義】 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
A4-C3(100%)
授業の概要
と方針
化学の基礎となる物理化学より,物質の状態や化学変化に関わる化学熱力学と,その応用として平衡論について講義する.化学熱力学では,物理量と単位,気体の状態方程式,熱力学(第一,第二,第三法則)とその化学への応用について解説する.平衡論については相平衡,化学平衡の分野でその基礎と応用について理解させる.さらに電気化学ついてもその基礎的事項を学ぶ.



1 【A4-C3】 気体の状態方程式および気体分子運動論について理解する.
2 【A4-C3】 熱力学の各法則を理解し,反応におけるエンタルピーおよびエントロピー変化を理解する.
3 【A4-C3】 化学平衡について,平衡定数と化学平衡の熱力学的原理を理解する.
4 【A4-C3】 純物質および混合物の相平衡の熱力学的記述を理解する.
5 【A4-C3】 電解質溶液の性質について理解する.
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1 気体の状態方程式(完全気体と実在気体の違い)と気体分子運動論に関する事象を説明することができるかどうか,レポートならびに前期中間試験で評価する.
2 エンタルピー,エントロピー,ギブズエネルギーについて理解し,反応における各量の変化が求められるかをレポートならびに前期定期,後期中間試験で評価する.
3 化学平衡の関連,ファントホッフの式など平衡の圧力,温度依存性について説明できるか後期中間試験ならびにレポートで評価する.
4 ギブズエネルギーと各状態(固-液-気体)間の相図,ならびに純物質および混合物の相変化を熱力学との対応について説明できるかどうか,後期中間試験で評価する.
5 溶液の性質,特に電解質の各性質(伝導率,イオン移動,化学電池など)について説明できるかどうか,後期定期試験ならびにレポートで評価する.
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成績は,試験90% レポート10% として評価する.各期の中間・定期試験の平均を試験成績とする.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「例題と演習で学ぶ 物理化学」村上能規・渡辺昭敬ら 著(森北出版)
参考書 「物理化学要論 第7版」P. W. Atkins・J.de.Paula著・千原 秀昭ら 訳(東京化学同人)
「アトキンス物理化学 第10版(上・下)」:P. W. Atkins・J.de.Paula著・千原 秀昭ら 訳(東京化学同人)
「たのしい物理化学1 化学熱力学・反応速度論」:加納 健司,山本 雅博 共著(講談社)
「バーロー物理化学 第6版(上・下)」:G. M. Barrow 著(東京化学同人)
「物理化学」 :PEL編集委員会 監修 福地 賢治 編著(実教出版)
関連科目 C1からC3までの数学, 物理学, C1 化学, C3 化学工学I
履修上の
注意事項
物理化学は,物理の視点から化学の基本原理を考察する教科であるので,当然,物理学とその基礎となる数学に精通していることが望ましい.1~3年までの物理学や数学のみならず,同時進行で学習する化学工学の内容も必要となってくる.

【授業計画( 物理化学Ⅰ )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 物理化学はどんな学問か(物理化学量とSI単位,数値計算方法 )
物理化学の学習意義について説明する.また,各物理量の定義について学び,SI単位系とそれ以外の系との変換や実際の数値を伴った単位換算について学習する.
2 気体の状態方程式を解く(完全気体)
完全気体の性質について理解し,また状態方程式についての理解を深める. ドルトンの分圧の法則,モル分率についても学ぶ.
3 気体分子運動論 その1
気体分子運動論の考え方からも,完全気体の状態方程式が導き出せることを学び,統計的手法の考え方を学ぶ.
4 気体分子運動論 その2
平均自由行程ならびに衝突頻度について学ぶ.
5 気体の状態方程式を解く(実在気体)その1
完全気体と実在気体の違いについて理解する.また,実在気体の状態方程式であるビリアル方程式について学ぶ
6 気体の状態方程式を解く(実在気体)その2
実在気体の状態方程式であるvan der Waals方程式について学ぶ.
7 エネルギー及びボルツマン分布の概念 気体運動論の補足 
エネルギーの概念と熱平衡の重要な概念であるボルツマン分布について簡単に説明する.気体分子運動論に基づく,気体分子が壁に衝突することから生ずる圧力を表す式の導出についても学習する.
8 中間試験
1~7週の内容に関する試験を行う.
9 中間試験解答 および これまでの復習
中間試験の解答を黒板を用いて説明し,注意点を指摘する.試験範囲の内容の復習をする.
10 熱力学第1法則
熱力学の考え方を学ぶ.熱力学第一法則を主体とし,仕事,熱の考え方,内部エネルギーについて学ぶ.
11 定積・定圧変化と内部エネルギー・エンタルピー
定積・定圧変化について学ぶ.各変化が内部エネルギーとエンタルピーに対応していることを学ぶ.
12 熱化学と反応エンタルピー
種々のエンタルピー変化(燃焼,反応,生成)について学ぶ.
13 熱力学第2,第3法則
エントロピーについて学ぶ.様々なエントロピー変化の計算方法について学ぶ.
14 自由エネルギー
ギブズエネルギー,ヘルムホルツエネルギーといった自由エネルギーの考え方について学ぶ.化学ポテンシャルの考え方について学ぶ.
15 これまでの復習・演習
これまでの講義について必要に応じた演習を実施する.
16 化学平衡と平衡定数,熱力学との関係
化学平衡と平衡定数について学ぶ.また,平衡定数とギブズエネルギーの関係についても学ぶ.
17 平衡の移動
化学平衡の移動の条件について学ぶ.ファントホッフの式から温度変化による平衡の移動を,またルシャトリエの原理と照らし合わせて,圧力変化による平衡の移動についても学ぶ.
18 相平衡と相図
相平衡について,相図との関係を含めて学ぶ.ギブズの相律について学ぶ.
19 蒸気圧曲線とクラウジウス-クラペイロンの式,多成分系の相図
クラウジウス-クラペイロンの式について学ぶ.2成分系の相図の考え方について学ぶ.
20 液体の性質(その1)
理想溶液,理想希薄溶液とその基となる法則(ラウールの法則,ヘンリーの法則)について学ぶ.
21 液体の性質(その2)
液体の束一的性質から,沸点上昇や凝固点降下が起こることを学ぶ.
22 固体の性質
結晶の格子エネルギーやブラッグの反射条件について学ぶ.
23 中間試験
16~22週の内容について試験を行う.
24 中間試験解答
中間試験の解答を黒板を用いて説明し,注意点を指摘する.
25 電解質
電解質の性質について学ぶ.
26 電気化学(イオンの移動)
電解質溶液中におけるイオンの電気伝導率,イオン移動度など,水溶液中のイオンの移動と電荷の移動について学習する.
27 電気化学(半反応と電極,電池反応,電極電位)
種々の電池の電池反応とその半反応を学習する
28 電気化学(標準電位)
標準電位は標準水素電極の電位を基準に表されている.ネルンストの式について学習し,標準電位の考え方を学習する.
29 電気化学(熱力学関数の決定)
標準電極電位と標準反応ギブスエネルギーとの関係より反応式から電池の電圧が計算できることを学習する.
30 これまでの復習・演習
講義全体にわたって必要に応じた演習を実施する.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.