科 目 | 物理化学U ( Physical Chemistry II ) | |||
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担当教員 | 渡辺 昭敬 教授 | |||
対象学年等 | 応用化学科・4年・通年・必修・2単位【講義】 ( 学修単位III ) | |||
学習・教育 目標 |
A4-C3(100%) | |||
授業の概要 と方針 |
3年生の物理化学Iで学習した内容を基に,化学反応速度論,原子構造論,分子構造と分子間相互作用を講義し,化学の基礎理論である物理化学全般にわたる基礎知識を理解させる.また,現代化学のことを考えて基本原理からの取り扱いを強調する. | |||
到 達 目 標 |
1 | 【A4-C3】 反応速度論について理解する.特に,速度論の考え方,反応速度の温度依存性,速度式の種々の表し方およびその解釈法を理解する. | 2 | 【A4-C3】 量子論の基礎的事項について理解する.ボーアの振動数条件,光電効果,電子線回折などから量子論的特性を,また,シュレディンガー方程式の解の性質や境界条件とエネルギーの関係を定性的に理解する. | 3 | 【A4-C3】 量子論の知識を基に原子の構造を理解する. | 4 | 【A4-C3】 量子論の知識を基に分子の構造を理解する. | 5 | 【A4-C3】 電気双極子ならびに電気双極子の相互作用の観点から,分子性物質の凝集力を理解する. | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
評 価 方 法 と 基 準 |
到 達 目 標 毎 |
1 | 速度定数の概念,反応方程式とその積分解,定常状態近似,アレニウスの式,反応機構について説明できるか前期中間および前期定期試験,レポートで評価する. | |
2 | ボーアの振動数条件,光電効果や電子線回折から量子論的特性について,またシュレディンガー方程式並びにその解について定性的に説明できるか前期定期試験,レポートで評価する. | |||
3 | 原子構造とスペクトルの関係,原子の電子構造(構成原理,エネルギー項)について,量子論と関連づけて説明できるか後期中間試験,レポートで評価する. | |||
4 | 分子軌道論を中心に主に二原子分子の電子構造,性質を量子論と関連付けて説明できるか後期定期試験,レポートで評価する. | |||
5 | 電気双極子間の相互作用や,分子性物質の全相互作用について的確に説明できるかどうか後期定期試験,レポートで評価する. | |||
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総 合 評 価 |
成績は,試験90% レポート10% として評価する.試験成績は年4回の平均とする.総合100点満点とし60点以上を合格とする. | |||
テキスト | 「物理化学要論(第7版)」:P. W. Atkins・J.de Paula 著・千原秀昭ら 訳(東京化学同人) | |||
参考書 | 「アトキンス物理化学 第10版(上・下)」:P. W. Atkins・J.de Paula 著・千原秀昭ら 訳(東京化学同人) 「アトキンス物理化学要論問題の解き方(第6版/英語版)」:David Smith 著 (東京化学同人) 「量子力学入門ノート 〜 修正版(Ver. 1.3.1)〜」九鬼導隆 著(神戸高専生協) 「はじめての化学反応論」:土屋荘次 著(岩波書店) 「なっとくする量子化学」:中田宗隆 著(講談社) |
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関連科目 | C3 物理化学I, C1〜C3 物理学, 数学, C4 応用物理I,II, C2 分析化学I, C3 無機化学II, C3 化学工学I, II, C4 応用数学I, II | |||
履修上の 注意事項 |
物理化学は,物理の視点から化学の基本原理を考察する教科であるので,当然,物理学とその基礎となる数学に精通していることが望ましい.1〜3年までの物理学や数学のみならず,同時進行で学習する応用物理や応用数学の内容も必要となってくる.さらに,3年生の物理化学Iで学んだ熱力学も,反応速度論を中心に必要となる.これらの科目を復習したり,良く学習しておくことが望ましい. |
週 | 上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など) |
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1 | 熱力学の復習I |
物理化学の理解に必要不可欠な熱力学の復習を行う.主に熱力学の3法則,エンタルピー,エントロピーについて学習する. | |
2 | 熱力学の復習II |
物理化学の理解に必要不可欠な熱力学の復習を行う.主にギブズエネルギー並びに化学平衡論について学習する. | |
3 | 反応速度論:概要,反応速度式 |
化学反応速度論の基本的事項について解説する.反応速度の概念,反応速度式とその解,実験的手法などについて学習する. | |
4 | 反応速度式の温度依存性 |
アレニウスの関係式について解説する.反応速度定数と温度の間にアレニウスの関係式があること,アレニウスの関係式が反応の活性化エネルギーと頻度因子といった要素で決まることを学習する. | |
5 | 活性化エネルギーと頻度因子 |
活性化エネルギーは反応を起こすために乗り越えなければならないポテンシャル障壁であり,頻度因子が分子の衝突や立体因子に関わる量であること,濃度の積が衝突頻度と比例すること等を解説し,活性化エネルギー・頻度因子と反応速度定数が結びつくことを学習する.また,活性錯体理論や触媒作用についても学習する. | |
6 | 化学平衡への接近 |
化学平衡について化学反応論としての取り扱いを学習する.熱力学的取り扱いとの違いを交えながら平衡定数と速度定数の関係を学習する. | |
7 | 速度式の解釈:素反応と反応機構 |
素反応(単分子・二分子反応)を定義し,通常の反応が複合反応であることを示し,反応機構とその反応速度式について学習する. | |
8 | 中間試験 |
3週目から7週目までの内容で中間試験を行う. | |
9 | 中間試験解答 |
中間試験の解答を説明する. | |
10 | 速度式の求め方 |
逐次反応や定常状態近似,律速段階等の考え方を用いて,複合反応の反応速度がどのようにして組み立てられるかを学習する. | |
11 | 速度論的支配 単分子反応 |
反応速度定数の比が生成物の比であることを学習する.10回目の講義をもとにしてリンデマン機構について学習する. | |
12 | 吸着・吸着等温式 |
吸着の種類とその特徴について学習する.ラングミュアの吸着等温式について学習する. | |
13 | 不均一系触媒作用 |
吸着等温式をもとに,固体表面の反応速度論について学習する. | |
14 | 量子論の出現 |
原子,分子スペクトルと光電効果について解説し,エネルギーが離散的である事を学習する. | |
15 | シュレディンガー方程式と波動関数 |
シュレディンガー方程式の概念について解説する.同時に波動関数の考え方についても学習する. | |
16 | ボルンの確率解釈,不確定性原理 |
ボルンの確率解釈について解説する.さらに,ド・ブロイ波と粒子の運動量の関係,波動関数が確率振幅であることからハイゼンベルクの不確定性原理を解説する. | |
17 | 一次元井戸型ポテンシャル,調和振動子 |
量子力学の基本でありかつ近似方等の応用の基本となる厳密に解ける系について解説する.1次元の井戸型ポテンシャルに拘束された粒子と一次元調和振動子を取り上げ,量子論的考え方を学習する. | |
18 | 水素類似原子の構造:量子数と原子軌道のエネルギー・形 |
中心力場に拘束された粒子を取り上げ,その解法を定性的に説明し,主量子数,方位量子数,磁気量子数とその意味について解説する.また,これらの量子数の組み合わせと,水素型原子の電子の軌道の種類や特徴について解説し,量子数と電子の存在確率の節・節面の数の関係から,各軌道の形が予測できることを示す. | |
19 | 原子構造:水素型原子のスペクトル・量子数 |
水素原子のスペクトルを基に,水素型原子の構造を学習する. | |
20 | スペクトル遷移と選択律 |
水素型原子の中の電子遷移の選択律について学習する.主量子数,方位量子数,磁気量子数の組み合わせと,水素型原子の電子の軌道の種類や特徴について学習する. | |
21 | 多電子原子の構造と周期律 |
水素型原子の構造の知識を基に,多電子原子の構造について理解する.構成原理を基に,オービタルの考え方を学習する.原子の性質に周期的な特徴がでることを示し,周期表を原子の電子構造より議論する. | |
22 | 多電子原子のスペクトル |
原子のエネルギー準位を表す項について学習する.各全角運動量などにより種々の項が表現され,またL-Sカップリングにより.最低のエネルギー準位を表す項がどのように表されるのかを学習する. | |
23 | 中間試験 |
16週目から22週目までの内容で中間試験を行う. | |
24 | 中間試験の解答 |
中間試験の解答を黒板を用いて解説し,注意点を指摘する. | |
25 | 化学結合:基本概念 原子価結合法・分子軌道法 |
化学結合の基本概念を解説する.また,化学結合を考える際に用いられる,原子価結合法と分子軌道法の基本概念を解説する. | |
26 | 分子軌道法:水素分子イオンの形成 |
近似問題の基本となる変分法について解説してからLCAO近似を導入し,分子軌道法を用いて,一番簡単な系である水素分子イオンが形成し,分子軌道が結合性軌道と反結合性軌道に分離することを解説する. | |
27 | 二原子分子,分子軌道法の種々の近似 |
分子軌道法を用いて,二原子分子の電子構造について解説する.種々の分子起動計算方法としてab initio法などについて解説する. | |
28 | ファンデルワールス相互作用 |
電気双極子の定式化を行い,永久あるいは誘起双極子との間でもたらされる相互作用を学習する.さらに,永久電気双極子を持たない無極性分子も分散相互作用で凝集出来ることを理解する. | |
29 | 全相互作用 |
電気双極子の相互作用が距離の6乗に反比例すること,分子同士が近接した時に反発的な相互作用が生ずることを,レナード-ジョーンズポテンシャルを用いて理解する.また,最も強い分子間相互作用の例として水素結合について学習する. | |
30 | 演習 |
講義全体にわたって必要に応じた演習を実施する. | |
備 考 |
前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する. 本科目の修得には,60 時間の授業の受講と 30 時間の事前・事後の自己学習が必要である.事前学習に該当週の内容の予習(テキストの読了),また事後学習として,講義内容の復習(ノート内容の精査並びに該当範囲のテキストの読了)が必要である. |