科 目 | 半導体工学 ( Semiconductor Engineering ) | |||
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担当教員 | 西 敬生 准教授 | |||
対象学年等 | 電子工学科・4年・通年・必修・2単位 ( 学修単位III ) | |||
学習・ 教育目標 |
A4-D2(100%) | |||
JABEE 基準1(1) |
(d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g) | |||
授業の概要 と方針 |
現代のエレクトロニクスは半導体によって支えられている.この半導体を,エネルギーバンドや電子輸送現象などの固体物理の基礎から学ぶとともに,ダイオードやトランジスタに代表される半導体デバイスとして,応用面からも深く理解できるよう学んでいく.授業で出てくる数値のほとんどは実生活では使わない桁のものばかりであるため,演習などで比較検討することで慣れながら理解することを目指す. | |||
到 達 目 標 |
1 | 【A4-D2】 半導体の物質名(SiやGaAsなど)を3つ以上言え,結晶構造やその特性の概要について説明できる. | 2 | 【A4-D2】 金属,半導体,絶縁体を抵抗率やバンド構造の違いで説明できる. | 3 | 【A4-D2】 半導体中のキャリア密度の式の中の量記号が何かを言え,(授業の出席者数)=(出席率)×(席の数)の例が,キャリア密度,状態密度,占有確率のどれと対応するかわかる. | 4 | 【A4-D2】 物質中のオームの法則がわかり,抵抗率と移動度やキャリア密度の関係がわかる. | 5 | 【A4-D2】 電子や正孔が物質の中を拡散することによって流れる拡散電流をイメージすることができる. | 6 | 【A4-D2】 pn接合の整流性をエネルギーバンド図で説明できる. | 7 | 【A4-D2】 pn接合の空乏層幅や静電容量を,不純物密度などの諸条件と数式から見積もることができる. | 8 | 【A4-D2】 金属-半導体および金属-酸化物-半導体構造の電気特性をエネルギーバンド図を用いて簡単に説明できる. | 9 | 【A4-D2】 MOSトランジスタやバイポーラトランジスタの動作原理を構造図やエネルギーバンド図を用いて簡単に説明できる. | 10 |
評 価 方 法 と 基 準 |
到 達 目 標 毎 |
1 | 半導体の物質名や半導体とはどのような性質をもった物質かを問うことを小テストおよび前期中間試験の中で行い評価する. | |
2 | グラフや図を使って3つの違いを説明する問題を小テストおよび前期中間試験の中で行い評価する. | |||
3 | キャリア密度の式の意味や実際例から値を計算させる問題を小テストおよび前期定期試験で出題することで評価する. | |||
4 | 物質中のオームの法則を説明させる問題や,抵抗率の式の意味を説明させたり,実際例から値を計算させたりする問題を小テストおよび前期定期試験で出題して評価する. | |||
5 | キャリアの拡散について説明させる問題や,拡散方程式の各項の意味を答えさせる問題を小テストおよび前期定期試験で出題して評価する. | |||
6 | pn接合の整流性をエネルギーバンド図で説明させる問題を小テストおよび後期中間試験で出題し,評価する. | |||
7 | pn接合の接合状態によって空乏層幅や容量を導出させる問題を小テストおよび後期中間試験で出題し,評価する. | |||
8 | 金属-半導体や金属-酸化物-半導体構造の電気特性について小テストおよび後期定期試験で説明させ,評価する. | |||
9 | MOSトランジスタやバイポーラトランジスタの動作をバンド図や構造図から,定性的に説明させる問題を小テストおよび後期定期試験で出題し評価する. | |||
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総 合 評 価 |
成績は,試験85% 小テスト15% として評価する.100点満点中60点以上を合格とする.4回の試験の平均を試験点とする. | |||
テキスト | 「半導体デバイス」:松波弘之,吉本昌広(共立出版) |
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参考書 | 半導体デバイス-基礎理論とプロセス技術 第2版」:S.M. ジィー (産業図書) 「応用物性」:佐藤勝昭(オーム社) 「半導体工学」:高橋清(森北出版) 「半導体素子」:石田哲朗,清水東(コロナ社) |
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関連科目 | 電子デバイス(3年),光エレクトロニクス(5年),電子応用(5年) | |||
履修上の 注意事項 |
毎回の授業に電卓を持参すること. |
回 | 上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など) |
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1 | 半導体の電子構造:半導体材料,結晶構造,不完全性 |
金属や半導体,セラミックスなど材料の分類,単結晶や多結晶,非晶質などの固体の分類,ダイヤモンド構造,閃亜鉛鉱構造という結晶構造による分類や結晶の不完全性について考える.予習はテキストpp.1〜4をよく読み,周期律表をよく見ておくこと. | |
2 | 半導体の電子構造:エネルギ帯構造,エネルギ準位 |
一原子の中,そして固体の中の電子がとるエネルギ準位について考える.このエネルギ準位から形成される帯構造,また電子の存在が許されない禁制帯について発展させる.予習はpp.5〜7をよく読み,式(1.1)を理解してくること. | |
3 | 半導体の電子構造:結晶中の電子 |
前回の帯構造を使って金属,半導体,絶縁体を描写し違いを考える.また“遷移”という言葉の意味や,禁制帯幅が物質固有のもので,禁制帯での電子遷移により正孔が生じることなどについて考える.予習はpp.7〜10をよく読むこと. | |
4 | 半導体の電子構造:真性半導体と外因性半導体 |
n形とp形の半導体,ドナーとアクセプタ,多数キャリアと小数キャリア,また有効質量について考える.予習はpp.11〜14をよく読み,周期律表を見なおすこと.また原子模型について復習しておくこと. | |
5 | 半導体の電子構造:状態密度と占有確率 |
多数の荷電粒子の挙動を扱うため,一個の粒子の運動方程式ではなく,統計力学を用いて粒子群を表現する.粒子の個数に対応する「キャリア密度」を表現するための「状態密度」と「占有確率」について考える.球の方程式や運動量について復習しておくこと. | |
6 | 半導体の電子構造:キャリア密度の導出と真性キャリア密度 |
あるエネルギの範囲内にあるキャリアの密度を導出するには,前回導いた式を積分して求める.その式の展開によって導電帯(価電子帯)中の電子(正孔)密度の式を導出する.真性キャリア密度,pn積について考える.前回の講義をよく復習しておくこと. | |
7 | 半導体の電子構造:フェルミ準位 |
半導体デバイスの動作説明によく用いられる「フェルミ準位」について考える.水面の高さに似て,フェルミ準位も電子がどのエネルギの高さまでいるかを表す量である.予習はpp.20〜23をよく読み,わからないところをチェックしておくこと. | |
8 | 中間試験 |
半導体の特徴を,電気的な性質や帯構造などの観点から説明させる.授業中の重要語句について説明させたり,キャリア密度の導出などを行う. | |
9 | 試験解説 |
試験解答の解説および学生による学習目標達成度評価を行う. | |
10 | 半導体における電気伝導:キャリアの熱運動,ドリフト電流 |
熱による原子の揺れ動き(格子振動)やキャリアの熱運動,外部電界によるドリフト電流について考える.キャリアの流れで考えたときのオームの法則も導出する.予習はpp.25〜28を読むこと.抵抗率について復習しておくこと. | |
11 | 半導体における電気伝導:ホール効果 |
ドリフト電流と印加磁界によって生じる起電力の関係を説明するホール効果について考え,この効果の測定によって何がわかるかまで発展する.電磁気学のローレンツ力について学習してくること. | |
12 | 半導体における電気伝導:キャリア密度の温度特性 |
金属と半導体の違いとしてよく表現される抵抗率の温度依存性について,半導体のキャリア密度の温度依存性との関係から考える.予習としてpp.30〜31をよく読むこと,金属の抵抗率の温度依存性について調べてくること. | |
13 | 半導体における電気伝導:拡散電流 |
粒子が拡散する様子を数式で表すとどうなるか,それを電子や正孔に適用した場合に電流がどのように記述できるかについて考える.またアインシュタインの関係式についても触れる.予習はpp.31〜33をよく読むこと,電流の定義を復習すること. | |
14 | 半導体における電気伝導:連続の式と拡散方程式 |
半導体中でのキャリアの生成と消滅や,キャリアの拡散による流れを記述した拡散方程式について考え,p.38の式(2.37)の各項について理解する.半導体の中で重要な役割を演じる「トラップ」についても考える.予習はpp.33〜41を読んでおくこと. | |
15 | 半導体における電気伝導:半導体電気伝導のまとめ |
これまで出てきた式や現象を使って問題を解き,理解を定着させる. | |
16 | 試験解説 |
試験解答の解説および学生による学習目標達成度評価を行う. | |
17 | pn接合:整流性の原理,拡散電位,少数キャリアの注入 |
ダイオードとして用いられる整流作用がなぜ起こるかを帯構造から考え,電流電圧特性との関連を理解する.予習はpp.45〜47をよく読むこと. | |
18 | pn接合:拡散方程式による電流密度の導出 |
理想的なpn接合は電圧印加時に拡散によって粒子の流れが起こる.2章の拡散方程式を用いてpn接合中の電流を導出する.予習としてpp.47〜51を読んで,忘れている式などがあれば1,2章の該当部分を読み直しておくこと. | |
19 | pn接合:理想特性からのずれ,再結合電流 |
前回求めたpn接合の理想特性に対して,実際のpn接合の特性がどれだけずれているかを確認し,そのずれの理由を考える.キャリアの生成と再結合について2章のpp.33〜40の関連部を復習しておくこと.またpp.56〜60をよく読んでおくこと. | |
20 | pn接合:空乏層の静電容量と幅 |
pn接合のp形−空乏層−n形という構造はコンデンサと考えられ,静電容量を有している.この静電容量と空乏層幅を導出する.階段接合や傾斜接合といった接合形態でどう変わるかを確認する.電磁気学のポアソンの方程式を学習しておくこと. | |
21 | pn接合:降伏現象 |
pn接合の逆バイアス時は理想的には電流はほとんど流れないはずであるが,ある電圧を境に急激に電流が流れ始める.この現象について考える.pp.65〜67をよく読んでおくこと. | |
22 | pn接合:交流特性,少数キャリア蓄積効果 |
pn接合に正弦波やパルス波を印加した場合,順バイアス時に注入され,空乏層近傍に存在する過剰少数キャリアが,どのような挙動を示すか,電流電圧特性がどう影響受けるかについて考える.予習としてpp.71〜74をよく読んでおくこと. | |
23 | 中間試験 |
pn接合をエネルギーバンド図で説明させたり,拡散電位や空乏層幅などの導出を行う. | |
24 | 試験解説 |
試験解答の解説および学生による学習目標達成度評価を行う. | |
25 | バイポーラトランジスタ:基本構造と動作特性,直流特性 |
バイポーラトランジスタの基本特性や構造(特にIC上での)を確認した後,エネルギーバンド図で動作原理について考える.pp.95〜100を読み,バイポーラトランジスタの動作原理について復習しておくこと. | |
26 | バイポーラトランジスタ:到達率,注入率 |
バイポーラトランジスタの到達率や注入率について考える.予習としてpp.100〜110をよく読んでくること. | |
27 | 金属―半導体界面の整流性とオーム性 |
金属―半導体界面の整流性,オーム性について考える.半導体と金属の接触の状態や,その組合せによって接触部の抵抗が大きく異なり,整流性を示しもする.それぞれについてエネルギーバンド図で表現する.予習としてpp.78〜83をよく読んでくること. | |
28 | 絶縁物−半導体界面,MOS構造の特性 |
MOSトランジスタの原理となるMOS構造について考え,蓄積,空乏,反転状態のエネルギーバンド図を描く.またそのときの静電容量の変化や周波数特性についても考える.予習としてpp.88〜94をよく読んでくること. | |
29 | MOSトランジスタ:構造と原理,電流−電圧特性 |
MOSトランジスタの構造と原理について考える.MOSトランジスタの電流−電圧特性についてnチャネルやpチャネル,ディプレッションやエンハンスメントといった違いでどのように変わるかなどについて考える.予習としてpp.122〜128をよく読んでくること. | |
30 | MOSトランジスタ:短チャネル効果とスケーリング則 |
MOSトランジスタの短チャネル効果とスケーリング則について考える.予習としてpp.129〜131をよく読んでくること. | |
備 考 |
本科目の修得には,60 時間の授業の受講と 30 時間の自己学習が必要である. 前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.いずれの試験においても電卓を持参すること.必要ない場合に限り,連絡する. |