科 目 | 工学倫理 ( Engineering Ethics ) | |||
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担当教員 | 伊藤 均 | |||
対象学年等 | 電気電子工学専攻・2年・前期・必修・2単位 | |||
学習・教育 目標 |
工学系複合プログラム | JABEE基準1(1) | ||
D1(100%) | (b) | |||
授業の概要 と方針 |
技術者は、高度に発達した科学技術を適切に運用していく責任を、社会に対して負っている。この授業では、この責任が、具体的にどのような内容や特徴を有するか、それを果たす際にどのような困難が生じうるか、この困難を克服するためにどのような手段が存在し、また必要か等を、さまざまな具体的事例を題材としながら、多角的に考察し、技術者の負う倫理的責任に対する理解を深めていく。 | |||
到 達 目 標 |
1 | 【D1】 技術者の業務はどのような特徴を持つか、またそれに対応して、技術者の負う倫理的責任はどのような内容のものかを理解している。 | ||
2 | 【D1】 技術者はその日常業務において、どのような倫理的問題に直面する可能性があるかを理解している。 | |||
3 | 【D1】 技術者に関係のある、とりわけ上記の問題に対処する際に重要な社会制度にはどのようなものがあるかについて、十分な知識を身に付けている。 | |||
4 | 【D1】 (1)~(3)の理解や知識に基づいて、技術者が出会う典型的な倫理問題に対して、有効な対処策を考案できる能力を身に付けている。 | |||
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評 価 方 法 と 基 準 |
到 達 目 標 毎 |
1 | 最近発生した事故事例を調べ、それに関わっていた技術者がどのような責任を負っていたかを考察するレポートにおいて、倫理的責任に対する理解を評価する。 | |
2 | 科学技術のリスク、組織に関わる問題、海外での技術活動等に関して、授業中適宜小レポートを提出させて評価する。 | |||
3 | 内部告発等に関して、授業中適宜レポートを提出させて評価する。 | |||
4 | 典型的な倫理問題を扱ったケーススタディを授業中適宜実施し、それに関してまとめたレポートの提出によって評価する。 | |||
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総 合 評 価 |
授業中に適宜行う小レポートを40%、前期末に提出する最終レポートを60%の割合で総合評価し、60点以上(100点満点)を合格とする。 | |||
テキスト | 「はじめての工学倫理」齊藤・坂下編(昭和堂) |
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参考書 | 黒田・戸田山・伊勢田編「誇り高い技術者になろう」(名古屋大学出版会) ハリス他編「第2版 科学技術者の倫理」(丸善株式会社) シンジンガー、マーティン「工学倫理入門」(丸善株式会社) ウィットベック「技術倫理1」(みすず書房) 中村「実践的工学倫理」(化学同人) |
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関連科目 | ||||
履修上の 注意事項 |
授業では、ビデオや新聞記事等を使用し、昨今の事故や企業モラルに関する事例を多く取り上げる。授業中、適宜参考資料等も紹介するので、専門分野以外のことにも広く関心を持って取り組んでほしい。応用倫理学、技術史等の関連科目の講義内容を参考にしてほしい。 |
週 | 上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など) |
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1 | なぜ技術者倫理なのか |
技術者を志す者がなぜ倫理を学ぶ必要があるのか。技術者と倫理との繋がりを、今日の社会的背景や、工学系学協会による倫理綱領の制定等から明らかにし、今倫理について学び、考える意義を確認する。 | |
2 | 設計の思想:安全性を確保する手法1 |
い人工物はあり得ない。しかしそれでも技術者は、安全なモノを作るためのさまざまな手法を培い、設計に生かしてきた。今回と次回の2回にわたり、その手法を確認して行く。 | |
3 | 設計の思想:安全性を確保する手法2 |
前回に引き続き、設計の思想を確認する。この2回で取り上げるのは、安全係数、フェイルセーフ、フールプルーフ、冗長性、細分化、メンテナンス、保守性、知識の伝承、事故調査等。 | |
4 | トレード・オフ、フォード・ピント車の事例 |
安全性の確保は、コストや利便性等とのバランスの中で可能な範囲にとどめる(トレード・オフ)必要がある。それでは適切なトレード・オフを行うには何を考慮しなければならないだろうか。 | |
5 | リスク評価、社会的実験としての技術業 |
技術者が安全な「モノ」を作ろうとしても、必ず何がしかのリスクが付きまとう。ここではこのリスクという概念を確認するとともに、その評価の手法およびこの手法の限界について述べる。 | |
6 | 技術者の判断と経営者の判断 |
ャトル・チャレンジャー号の事故を取り上げる。多くの技術者は企業を初めとする組織の中で仕事を行うが、そこで技術者がどのような状況と出会う可能性があるかを確認する。 | |
7 | リスクマネジメントと技術者の責任 |
チャレンジャー事故の後にNASAにおいて図られた組織改革を参考に、リスクマネジメントが有効に機能するために、技術者はどのような責任を負うかを考察する。 | |
8 | 集団思考 |
前回に引き続き、組織集団内での技術者について取り上げる。JCOにおける臨界事故を例として、集団行動が個人としての技術者の思考にどのような影響を及ぼすかについて述べる。 | |
9 | 技術者の自律性 |
これまでに確認したように、技術者の行動や判断は、組織や集団から大きな影響を被る場合がある。その中で、専門家としての自律性を失わずに行動するにはどのような工夫が必要かを考える。 | |
10 | 内部告発 |
企業から見れば内部告発は一種の裏切りではある。裏切りにならないよう、制度化しておこうというのが最近の流れである。この制度は有効に動くだろうか。 | |
11 | 製造物責任 |
過失がなくとも損害を出したという結果があれば、それだけで賠償責任を負うという「結果責任」という法制度が製造業者にも課せられている。その考え方を学ぶ。 | |
12 | 知的財産 |
モノだけでなく、情報やアイデアも財産的価値をもつ。その一方で、情報の占有は研究開発を停滞させる要因ともなる。どのように折り合いをつけるべきだろうか。 | |
13 | 海外での技術活動 |
社会のグローバル化の流れもあって、技術者が海外で仕事をする機会は、今後ますます増加すると考えられる。その際に、技術者はいかなる問題に出会うかを、ボパール事故を例にして考察する。 | |
14 | 組織と倫理 |
社会のグローバル化の流れによって、技術者個人だけでなく、組織や集団も、新たな対応を迫られている。その例として、国際標準化規格取得の動きや学協会の活動の倫理的意義について考える。 | |
15 | 技術者倫理の射程 |
技術者による新たな技術開発は、情報社会や医療といった分野にさまざまな影響をもたらしている。技術者は、これら他の分野の倫理とどのような関わりを持つべきなのかを考察する。 | |
備 考 |
中間試験、定期試験は実施しないが、授業中に小レポート、期末に最終レポートの提出を課す。 |