1.まえがき
近年、半導体製造技術の進歩により電力用半導体デバイス/モジュール(以下、本報告ではパワーデバイスと称す)の電力処理容量、スイッチング速度のなどの基本性能が飛躍的に向上してきた。 そのことにより、半導体電力変換装置に高周波スイッチング技術の導入がなされ、半導体電力変換装置の高機能化、制御性能の向上、小型・軽量化が実現可能となり、制御回路的にもマイクロプロセッサやディジタルシグナルプロセッサなどの周辺機器の高性能化がなされDDC(Direct Digital Control)が推進された。 一方で、高周波化に伴い電圧・電流サージによるスイッチングストレスの増大、EMIノイズの発生、スイッチング損失の増加などが問題となっている。 そこでこれらの問題を解決する一手法として、回路の共振現象を巧みに利用しパワーデバイスの電圧もしくは電流がゼロの状態でスイッチングを行わせるソフトスイッチング方式が提案され、これを利用した高周波電力変換装置に関する研究が活発に行われている。 その中でも、この方式を導入した高周波リンクDC-DCコンバータは、家電・民生機器から系統連系用インバータに至るまで応用範囲が広く考えられることもありその開発が望まれている。 本研究では、今後系統連系用インバータに用いられるような数十kw級の中容量高周波リンクコンバータさらには、数百kw級の大容量高周波リンクコンバータへの適用を考慮しているため、回路構成はパワーデバイスの耐圧の面からフルブリッジ構成を用いた部分共振型高周波ACリンクDC-DCコンバータを採用している。高周波ACリンクDC-DCコンバータの出力電圧制御には従来から位相シフトPWM制御が用いられ、ソフトスイッチングによりスイッチング損失やEMIノイズの軽減がなされているが、循環電流や負荷電流の急峻な変動に対応させる共振電流の増加により導通損失が増加するという問題がある。 そこで著者らは、これらの問題を解決する2次側位相シフトPWM制御高周波ACリンクDC-DCコンバータ(以下、本報告では2次側PWM制御DC-DCコンバータと称す)を先に提案した。 この2次側PWM制御DC-DCコンバータは、2次側のダイオード整流回路内にパワーデバイスを接続し、このパワーデバイスによって出力電圧制御を行うことにより、従来の問題点である循環電流の除去と電流変動の抑制を行うものである。本報告では、この制御法を適用した高周波ACリンクDC-DCコンバータの動作原理について従来方式と比較しながら述べ、ATP(Alternative Transients Program)を用いて行ったシミュレーション結果による動作解析及び特性評価ならびに試作実験結果について報告する。