【 2022 年度 授業概要】
科   目 流体力学T ( Fluid Mechanics I )
担当教員 [前期] 鈴木 隆起 准教授, [後期] 高峯 大輝 助教
対象学年等 機械工学科・4年R組・通年・必修・2単位【講義】 ( 学修単位III )
学習・教育
目標
A4-M2(100%)
授業の概要
と方針
流体には気体と液体があるが,これらの流れは空気,水などのように身近に見られるだけでなく,工業上多くの工場や装置で様々な形での流体の流動が見られる.これらの装置の設計や運転に必要な流体の性質および流体の静力学と動力学を理解させる.



1 【A4-M2】 流体の特徴を表す物性値を理解できる.
2 【A4-M2】 流体の静力学を理解できる.
3 【A4-M2】 完全流体の流れが理解できる.
4 【A4-M2】 粘性流体の内部流れが理解できる.
5 【A4-M2】 粘性流体の外部流れが理解できる.
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1 密度,比重,比体積,比重量,粘度,動粘度など流体の物性値が理解できているか,前期中間試験,レポート,演習で評価する.
2 圧力,絶対圧とゲージ圧,パスカルの原理,圧力計,浮力,表面張力など流体の静力学が理解できているか,前期中間試験,レポート,演習で評価する.
3 連続の式,オイラーの運動方程式,ベルヌーイの定理など完全流体の流れが理解できているか,前期定期試験,レポート,演習で評価する.
4 レイノルズ数,層流と乱流,摩擦圧力損失,管路の諸損失など粘性流体の内部流れが理解できているか,後期中間試験,レポート,演習で評価する.
5 境界層,はく離,抗力と揚力など粘性流体の外部流れが理解できているか,後期定期試験,レポート,演習で評価する.
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成績は,試験80% レポート10% 演習10% として評価する.ただし,前期は試験80%,レポート20%として評価する.試験成績は,中間試験と定期試験の平均点とする.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「機械工学演習シリーズ1演習水力学」:国清・木本・長尾共著(森北出版)
参考書 「改定新版流体工学」:古屋・村上・山田共著(朝倉書店)
「新版流体の力学」:中山泰喜著(養賢堂)
関連科目 M1AB,M2AB「数学」「物理」,M3AB「工業力学」「応用物理」,M5R「流体力学」,AM1「熱流体計測」,AM2「流れ学」
履修上の
注意事項
上記関連科目のうち,数学,物理,工業力学,応用物理を理解しておくこと.

【授業計画( 流体力学T )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 ガイダンスおよび流体工学に関する単位(国際単位と工学単位)
流体工学を学ぶにあたってのガイダンスを行う.また体積,質量,重量の関係を確認する.国際単位系(SI)の使用を意識付けるとともに,工学単位系とも相互に変換できるようにする.
2 流体の性質(1) 密度,比重,比体積,比重量,圧力,圧縮率,体積弾性係数
密度,比重,比体積,比重量,圧力,圧縮率,体積弾性係数の概念を理解する.有効数字を理解する.
3 流体の性質(2) 粘度,動粘度,表面張力
すべての流体は粘性を持っている.また流れている場合には,それを密度で除した動粘度が用いられる.流体に働く応力を,ニュートンの粘性法則から理解する.また,毛細管現象を例に表面張力を理解する.
4 流体の静力学(1) パスカルの原理,オイラーの平衡方程式
静止流体中の1点の圧力は全ての方向に等しい.このパスカルの原理を理解する.また,圧力勾配と外力(重力)のつりあいを表わすオイラーの平衡方程式を理解する.
5 流体の静力学(2) 圧力,絶対圧とゲージ圧
静止流体中の圧力は,密度,重力加速度,高さの積で表わされることを導出し理解する.また,完全真空基準の絶対圧,大気圧基準のゲージ圧があり,前者は気体に,後者は液体に比較的多く用いられることを理解する.
6 流体の静力学(3) 圧力計
圧力を測定する方法として,各種マノメータによる測定方法を理解する.特に,液柱計(ピエゾメーター),U字管マノメータ,差圧計,微圧計,ブルドン管,電気式圧力変換器などがあるが,これらの特徴を理解する.
7 流体の静力学(4) 浮力と浮揚体の安定性
物体はそれが排除した流体の重量分の力を鉛直上向きに受けるというアルキメデスの原理を理解する.また,浮揚体の安定に関しても理解する.
8 前期中間試験
前期前半の知識を確認するために,中間試験を実施する.
9 中間試験問題の解答と解説,前半の復習
中間試験問題の解答と解説を行うと同時に,前半の復習を行う.
10 流体運動の基礎理論(1) 連続の式
定常と非定常,層流と乱流など,流れの運動状態の分類を理解する.質量保存の法則から導かれる連続の式を理解する.
11 流体運動の基礎理論(2) オイラーの運動方程式
ニュートンの運動の第2法則を流体に適用し,オイラーの運動方程式を導く.実在流体はすべて粘性を持っているが,オイラーの運動方程式には粘性が考慮されていないことに注意する.
12 流体運動の基礎理論(3) ベルヌーイの式
オイラーの運動方程式を積分し,ベルヌーイの式を得る.ベルヌーイの式が,流体の圧力,位置,運動のエネルギーの和が一定であるというエネルギー保存の法則を表わすことを理解する.
13 流体運動の基礎理論(4) ベルヌーイの式の応用1
ベルヌーイの式を適用して,理想流体の流れの管路各部での圧力や速度を求める.演習を中心に行う.
14 流体運動の基礎理論(5) ベルヌーイの式の応用2
実際の流れ,すなわち粘性流れにベルヌーイの式を適用するためには粘性による損失分を考慮する必要があること,例えばオリフィスなどでは流量係数の概念により損失分を考慮することを理解する.
15 流体運動の基礎理論(6) ベルヌーイの式の応用3
速度を測るピトー管の原理を理解する.14回目と同様に,流体の粘性を考慮するための修正係数の概念を理解する.
16 前期定期試験問題,前期授業内容の復習
前期定期試験問題の解答と解説を行うと同時に,前期の総復習を行う.特に,質量と重量,比重と密度,粘度と動粘度,流速と流量の違いについて確認すると共に,連続の式とベルヌーイの式を活用できることが必要である.
17 粘性流体の内部流れ(1) 摩擦圧力損失,修正ベルヌーイの定理,層流と乱流
実在流体には粘性があり流動方向にエネルギーが失われ,摩擦圧力損失が生じることを理解する.これを表すのに修正ベルヌーイの定理が用いられる.摩擦圧力損失は,層流と乱流でその特性が異なる.それは,層流と乱流で,流体粒子の流れ方,速度分布などに違いがあるためであることを理解する.
18 粘性流体の内部流れ(2) 摩擦圧力損失の求め方,ムーディ線図
円管内の摩擦圧力損失はダルシーワイズバッハの式を用いて求めるが,そこに用いる管摩擦係数が層流と乱流で異なること,また乱流では内壁の相対粗さにより異なることを理解する.これらをまとめたムーディ線図を理解する.
19 粘性流体の内部流れ(3) 演習問題
ムーディ線図の読み方を理解する.その際,流体のもつ慣性力を粘性力で除したレイノルズ数を理解する.また,両対数グラフを理解する.
20 粘性流体の内部流れ(4) 円管以外の管における摩擦圧力損失の求め方
工業上,円管だけでなく長方形ダクトや管群のような複雑な断面形状をした管がある.その場合の摩擦圧力損失を求めるために,水力半径の概念を用いた等価直径を理解する.
21 粘性流体の内部流れ(5) 管路流れの諸損失
流体は,直管部だけでなく,エルボ,バルブ,急拡大・急縮小,タンク入口・出口などで損失を生じる.それらの総損失(全圧力損失)を算出できるようにする.
22 粘性流体の内部流れ(6) 演習問題,経済直径
総損失を求める演習問題を行う.また,設備固定費と動力費の兼ね合いできまる経済直径の概念を理解する.
23 後期中間試験
後期前半の知識を確認するために,中間試験を実施する.
24 中間試験問題の解答と解説および後期前半の復習
後期中間試験問題の解答と解説を行うと同時に,後期前半の復習を行う.
25 粘性流体の外部流れ(1) 境界層と剥離,カルマン渦列
流動中の物体のまわりには,粘性の影響で速度が小さくなった領域が存在する.これを境界層と呼ぶが,この境界層の構造を理解する.また,この境界層が物体から離れる現象(剥離)がどのように生じるか理解する.また物体の後方に生じるカルマン渦列を理解する.
26 粘性流体の外部流れ(2) 抗力と抗力係数
抗力には,圧力抗力と摩擦抗力があるが通常これらを合わせて抗力と呼ぶ.抗力は主流の動圧に比例するので,抗力を動圧と物体の基準面積の積で無次元化すると,抗力係数が得られる.この抗力係数の概念を理解する.
27 粘性流体の外部流れ(3) 球の抗力係数
抗力係数は物体の形状により様々である.ここでは一例として,球の抗力係数がレイノルズ数によって変化することを紹介する.層流境界層から乱流境界層に変化する臨界レイノルズ数を境に抗力係数が約5倍変化する.これが,ボールの飛び方に影響を与える事例を紹介する.
28 粘性流体の外部流れ(4)演習問題
27回目の授業の演習問題を行う.物体の形状に応じて抗力係数を定めることができるようになる必要がある.特に球の場合,レイノルズ数が1以下のストークスの法則に従う領域での,球の速度を求める方法を理解する.
29 粘性流体の外部流れ(5) 循環,マグナス効果,揚力と揚力係数
循環の概念を理解すると共に,揚力は循環と速度と密度の積で得られることを理解する.回転物の周りには循環が生じ,マグナス効果と呼ばれる揚力が発生するが,これがカーブなどボールが曲がる理由である.また,揚力を動圧と物体の基準面積の積で無次元化すると,揚力係数が得られる.この揚力係数の概念を理解する.
30 粘性流体の外部流れ(6) 翼とその揚力係数,抗力係数
揚力を最大限に利用した翼の構造と各部名称を理解する.また,翼の揚力係数および抗力係数は,翼の迎え角の関数であり,各係数を定めて揚力および抗力を求めることできる.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する. 本科目の修得には,60 時間の授業の受講と 30 時間の事前・事後の自己学習が必要である.状況に応じて再試験を実施する場合がある.