【 2022 年度 授業概要】
科   目 応用数学U ( Applied Mathematics II )
担当教員 笠井 正三郎 教授
対象学年等 電子工学科・4年・後期・選択・2単位【講義】 ( 学修単位II )
学習・教育
目標
A1(100%)
授業の概要
と方針
3年次の電気数学に引き続き,電気電子系専門科目の基礎として複素関数論について修得する.複素関数論は変数が複素数をとる関数についての理論であり,身近なところでは回路理論で使われるが,電磁気学などの物理現象の解析やラプラス変換の基礎,定積分解法への応用など広い分野に使われる強力なツールとなる.



1 【A1】 複素関数の連続性の判定や,関数の正則性について理解できる.
2 【A1】 正則関数の基本的な性質を理解するとともに,その写像を描くことができる.
3 【A1】 コーシーの積分定理,コーシーの積分表示を簡単な複素関数の積分に適用できる.
4 【A1】 留数の意味を理解し,その性質を使って実数関数の無限積分等の特殊な積分を求めることができる.
5  
6  
7  
8  
9  
10  












1 複素関数の連続性の判定や,関数の正則性について理解できているか,後期中間試験およびレポートで評価する.
2 正則関数の基本的な性質を理解するとともに,その写像を描くことができているか,後期中間試験およびレポートで評価する.
3 さまざまな関数の積分問題に対して,コーシーの積分定理とコーシーの積分表示を用いて,積分値を求めることができるか後期中間試験および後期定期試験で評価する.
4 簡単な複素積分を留数を使って求めることができるか,さらにはこれを応用して実関数の無限積分を求めることができるかを,後期定期試験およびレポートで確認・評価する.
5  
6  
7  
8  
9  
10  




成績は,試験85% レポート15% として評価する.試験成績は,中間・定期の2回の試験の平均とする.状況により再試験を行なうことがあるが,その場合最高60点で評価する.なお,総合評価は100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「応用数学」:上野健爾(監修),高専の数学教材研究会(編) 高専テキストシリーズ (森北出版)
「応用数学問題集」:上野健爾(監修),高専の数学教材研究会(編) 高専テキストシリーズ (森北出版)
参考書 「新版応用数学」:岡本和夫他著(実教出版)
「新訂 応用数学」:高遠節夫他著(大日本図書)
「詳解 応用解析演習」:福田安蔵他共編(共立出版)
「道具としての複素関数」:涌井貞美編(日本実業出版社)
「なるほど 複素関数」:村上雅人著(海鳴社)
関連科目 D1〜D3の「数学I」,「数学II」,D3「電気数学」,D4「応用数学I」
履修上の
注意事項
電気数学に限らず,1年〜3年で習った数学をよく理解できていることが大切である.特に微分積分学,三角関数,指数関数,対数関数をよく理解しておいて欲しい. 授業の進捗のペースが速いので,予習・復習に努め,その都度授業内容を理解するよう心がけてほしい.

【授業計画( 応用数学U )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 複素数と複素関数
複素数の極形式を復習し,それとオイラーの公式の関係を示し,基本的な複素関数を説明し,演習する.
2 複素関数とその微分
基本的な複素関数を紹介し,複素関数の極限,連続性,微分という一連の流れを示し,演習する.
3 正則関数の基本
正則関数の意味を説明し,複素関数が正則関数であるための必要十分条件であるコーシー・リーマンの関係式を導き,演習する.
4 調和関数と逆関数
逆関数の性質と対数関数を紹介する.また,正則関数の実部と虚部が調和関数であることを説明し,演習する.
5 等角写像
正則関数による写像は等角性を持つことを示し,演習を通して基本的な関数について確認する.
6 複素積分
実変数関数の積分では,積分経路によって積分値が異なることは無いが,複素関数に対する積分の場合には,積分経路によって値が異なることがある.どのような条件で積分経路により積分値が異なるか調べてみる.
7 コーシーの積分定理
複素関数論における基本的で,かつ重要な定理であるコーシーの積分定理について説明し,その応用について学ぶ.また,この定理が複素積分の定義式にグリーンの定理とコーシーリーマンの関係式を適用することによって導かれることを示す.
8 前期中間試験
1週から7週の内容についての理解度を測るための試験を行う.
9 試験解答と復習
中間試験の解答を行うとともに,再度,重要な点について理解を深める.
10 コーシーの積分表示
単一閉曲線の内部で複素関数 f(z)が正則であるとき,その内部の一点αにおける複素関数の値 f(α),あるいはその微分形が,コーシーの積分表示と呼ばれる積分形の式で与えられることを導く.また,それを複素積分の計算に適用できることを示す.
11 孤立特異点と関数の展開(ローラン展開)
孤立特異点の定義を説明し,その近傍で関数を級数展開する(ローラン展開)と,負のべき乗項を伴うことを示すとともに,ローラン展開を求める具体的な方法を示す.
12 留数の定義と留数の計算方法
孤立特異点αを内部に含む単一閉曲線まわりの f(z) の積分を2πi で除したものを留数と定義し,それがローラン展開における1/(z-α)の係数に等しいことを導く.
13 留数定理とその応用
留数の拡張形として留数定理が容易に導かれること,また留数定理を用いれば具体的な実積分問題,特に無限積分問題が比較的容易に解けることを示す.
14 複素積分の応用
複素積分の応用として逆ラプラス変換(ブロムウィッチ積分)の計算を紹介する.
15 演習
主に10週から14週の内容について演習を行う.


後期中間試験および後期定期試験を実施する. 本科目の修得には,30 時間の授業の受講と 60 時間の事前・事後の自己学習が必要である.事前学習では,次回の授業範囲について教科書・資料を読み,各自で理解できないところを整理しておくこと.事後学習では,授業最後に課題を配布するので,指定期日までにレポートを提出すること.