【 2022 年度 授業概要】
科   目 電子回路T ( Electronic Circuit I )
担当教員 木場 隼介 准教授
対象学年等 電子工学科・4年・通年・必修・2単位【講義】 ( 学修単位III )
学習・教育
目標
A4-D1(100%)
授業の概要
と方針
エレクトロニクスの技術革新は広範かつ急速である.しかし基礎となるべきことを十分理解しておくことにより,新しい素子・回路・技術に対処することが可能である.本科目ではダイオードやバイポーラトランジスタ(BJT),電界効果トランジスタ(FET)を利用した電子回路の基本的な考え方と解析・設計手法を身につける.



1 【A4-D1】 ダイオード・BJT・FETの特徴・電気特性・グラフが理解できる.
2 【A4-D1】 BJT・FETの直流等価回路と交流等価回路が理解できる.
3 【A4-D1】 簡易計算によるバイアス回路の設計ができる.
4 【A4-D1】 基本増幅回路が理解できる.
5 【A4-D1】 周波数特性とボード線図,高周波等価回路が理解できる.
6 【A4-D1】 差動増幅回路およびその性能向上手法が理解でき,基本的な設計ができる.
7 【A4-D1】 ダーリントン接続・乗算回路・直流増幅回路が理解できる.
8 【A4-D1】 負帰還や位相補償の目的と効果が理解できる.
9 【A4-D1】 基本的な集積アナログ増幅回路やその用途が理解できる.
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1 ダイオード・BJT・FETの特徴・電気特性・グラフが理解できているかを前期中間試験およびレポートで評価する.
2 BJT・FETの直流等価回路や交流等価回路が理解できているかを前期中間試験およびレポートで評価する.
3 簡易計算によりバイアス回路の設計ができるかを前期中間試験・前期定期試験およびレポートで評価する.
4 BJTやFETの基本増幅回路が理解できているかを前期中間試験・前期定期試験およびレポートで評価する.
5 BJTやFETの周波数特性やボード線図,および高周波等価回路が理解できているかを前期定期試験およびレポートで評価する.
6 差動増幅回路の原理・動作・利点や,その性能向上のために必要な電流源(カレントミラー)回路・能動負荷等について理解できているかを前期定期試験およびレポートで評価する.
7 ダーリントン接続を用いた高利得増幅回路,差動増幅回路を用いた乗算回路,直流増幅回路の特徴について理解できているかを後期中間試験およびレポートで評価する.
8 負帰還や位相補償の目的と効果が理解できているかを後期中間試験・後期定期試験およびレポートで評価する.
9 差動増幅回路などの要素技術を集積した集積アナログ増幅回路,特にその代表である演算増幅器の内部回路のうち,基本的なものが理解できるか,またその用途が理解できるかを後期定期試験およびレポートで評価する.
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成績は,試験90% レポート10% として評価する.なお,試験成績は,中間試験と定期試験の平均点とする.100点満点で60点以上を合格とする.担当教員の判断により再試験を実施する場合があるが,その場合の最高点は60点とする.
テキスト 「アナログ電子回路」永田 真(オーム社)
参考書 「アナログ電子回路−集積回路時代の− 第2版」藤井信生(オーム社)
「アナログ電子回路演習」石橋幸男(培風館)
「定本 トランジスタ回路の設計」鈴木雅臣(CQ出版)
「定本 OPアンプ回路の設計」岡村廸夫(CQ出版)
関連科目 D2「電気回路I」,D3「電気回路II,電子デバイス」,D4「半導体工学」,D5「電子回路II」
履修上の
注意事項
電気回路I,電気回路II,電子デバイスの内容を修得していることを前提とする.

【授業計画( 電子回路T )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 電子回路とは,電子回路解析の基礎知識の確認(1)
電子回路の概要とその構成要素について理解する.また,電力比・電圧比・電流比の表し方や基本的なフィルター特性の挙動の理解など,電子回路を解析するために必要な事項について復習を行う.
2 電子回路解析の基礎知識の確認(2),半導体知識の復習
電子回路では能動素子を含む回路を扱うため,等価回路と適切な近似が重要となる.重ねの理・テブナンの定理・トランジスタの挙動の理解に必要な半導体の知識の復習を行う.また制御電源について理解する.
3 ダイオード・BJT・FET
ダイオード・バイポーラトランジスタ(BJT)・電界効果トランジスタ(FET)の構造とその作用,基本的な挙動,静特性及びそのグラフについて理解する.FETは,特にMOSFETについて取り扱う.また,BJTの3端子とFETの3端子の役割について理解する.
4 CMOS回路とトランジスタの増幅作用
CMOS構成のアナログ電子回路とディジタル電子回路との違いについて述べる.また,BJT・FETの持つ増幅作用について理解する.
5 バイアスと小信号等価回路
BJTやFETなどの能動素子は,動作させるために適切な直流バイアスを与える必要があり,また交流での回路計算のために適切な等価回路で表現することが必要となることを理解する.hパラメータ,BJTおよびFETの重要な交流等価回路について理解する.
6 BJT基本増幅回路
直流バイアス電圧・電流に比較して振幅が十分小さい信号電圧・電流を増幅する回路を小信号増幅回路と呼び,直流バイアスと交流小信号を分けて計算することができることを理解する.また,BJTを用いた小信号基本増幅回路の3接地形式の特性,用途を理解する.
7 演習・復習
第1回から第6回までの内容の復習と問題演習を行う.
8 中間試験
第1回から第7回の授業内容について試験する.
9 中間試験結果のフィードバックと解答解説・次回以降に向けての重要事項の復習
中間試験の設問の意図,正答率などについてフィードバックを行い,試験問題の解答解説を行う.また,第7回までの内容のうち,第10回以降の授業を受けるにあたり特に重要な事項について復習を行う.
10 MOSFET基本増幅回路・基本増幅回路のまとめ
MOSFETを用いた小信号基本増幅回路の3接地形式の特性,用途を理解した後,BJTおよびMOSFETの基本増幅回路についてまとめる.
11 増幅回路の周波数応答(1)
利得の周波数特性とボード線図について理解する.容量成分は回路の周波数特性に影響を与えることを理解する.さらに,BJTやFETによる増幅回路には寄生容量や接合容量などの容量成分が存在し,周波数応答に影響を与えることを理解する.ミラー効果についても理解する.
12 増幅回路の周波数応答(2)
前回に引き続き,BJTやFETによる増幅回路には容量成分が存在し,周波数応答に影響を与えることを理解する.
13 差動増幅回路(1)
アナログ回路設計で頻繁に用いられる直流電流源回路(カレントミラー回路)および差動増幅回路の回路構成やその特徴,および作動増幅回路の性能指標であるCMRRについて理解する.
14 差動増幅回路(2)
差動増幅回路の動作について詳細な解析を行うとともに,高利得を実現するための能動負荷について理解する.
15 演習・復習
第10回から第14回までの内容の復習と問題演習を行う.
16 ダーリントン接続・乗算回路
二個のBJTを用いて回路的に電流増幅率が大きいトランジスタを実現する手法としてダーリントン接続があることを理解する.差動増幅回路を応用して乗算回路が実現できることを理解する.
17 直流増幅回路(1)・レベルシフト回路
直流から増幅することを目的とする直流増幅回路ではRC結合増幅ではなく直結増幅とする必要がある.その際,後段のトランジスタに適正なバイアスをかけるために,レベルシフト回路が必要となることなどを理解する.
18 直流増幅回路(2)
前回に引き続き,直流増幅回路で使用するレベルシフト回路について理解する.
19 負帰還の原理,効果,種類
その後,特性が多少不完全ではあるが大きな利得を有する増幅器と,特性の優れた減衰器を組み合わせて温度変化などに対する全体の特性を改善する技術として負帰還があることを理解する.
20 負帰還の種類と入出力インピーダンスの変化
負帰還には4種類あり,このうち電圧増幅−電圧帰還(直列−並列帰還)が最もよく用いられること,入出力インピーダンスは直列接続の場合は増大し,並列接続の場合には減少することについて理解する.
21 位相補償の考え方(1)
負帰還により帯域が改善されること,2段以上の増幅回路では不安定となる可能性があり,安定性が重要となることを理解する.また,不安定となる回路を安定化させる手法である位相補償についてを理解する.
22 復習・演習
第16回から第21回までの授業内容について,復習と演習を行う.
23 中間試験
第16回から第22回までの授業内容について試験する.
24 中間試験結果のフィードバックと解答解説・次回以降に向けての重要事項の復習
中間試験の設問の意図,正答率などについてフィードバックを行い,試験問題の解答解説を行う.また,第7回までの内容のうち,第10回以降の授業を受けるにあたり特に重要な事項について復習を行う.
25 位相補償の考え方(2)
第21回に引き続き,位相補償について理解する.
26 集積アナログ回路の例(1)
集積アナログ回路はBJTでもMOSFETでも構成が可能である.それぞれの増幅回路の構成を用いて,演算増幅器の内部回路を理解する.
27 集積アナログ回路の例(2)
前回の基本的な演算増幅器の内部回路を改良した,さらに高性能な増幅器の内部回路について理解する.
28 電子回路の応用(1)
電子回路を用いたアナログ増幅回路は信号の増幅の基本回路として様々な用途に使われている.生体センサフロントエンド回路,CMOSイメージセンサにおけるノイズ低減回路である相関2重サンプリング回路について学習する.これらを通じアナログ電子回路応用の重要性を理解する.
29 電子回路の応用(2)
電子回路を用いたアナログ増幅回路の応用として,無線通信におけるフィルタとしての役割やその回路構成について紹介する.
30 復習・演習
第25回〜第29回までの内容の復習と問題演習を行う.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する. 本科目の修得には,60 時間の授業の受講と 30 時間の事前・事後の自己学習が必要である.