【 2022 年度 授業概要】
科   目 電子工学序論 ( Introduction to Electronic Engineering )
担当教員 [前期] 笠井 正三郎 教授, [後期] 荻原 昭文 教授
対象学年等 電子工学科・1年・通年・必修・2単位【講義】 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
A4-D1(100%)
授業の概要
と方針
電気回路から電磁気学までの基礎事項を理解するとともに,各種の電子デバイスについてその構造と電子回路素子としての動作の基礎に触れることで,電子システム系科目学習への導入とする.



1 【A4-D1】 単位の接頭語の意味を理解し,使用頻度の高いものについては使えるようになる.
2 【A4-D1】 オ−ムの法則の意味を理解し,直流回路の基本的な計算ができる.
3 【A4-D1】 重ね合わせの理およびキルヒホッフの法則を用いて簡単な直流回路の計算ができる.
4 【A4-D1】 電流による発熱作用から電力と電力量について理解し,計算することができる.
5 【A4-D1】 磁気と静電気との違いを理解し,それぞれを応用した機器について説明することができる.
6 【A4-D1】 静電容量という量を理解し,簡単な並行平板構造での容量計算,および容量の直列・並列接続時の容量計算ができる.
7 【A4-D1】 磁気現象(フレミングの法則,電磁誘導,ヒステリシス特性)について説明ができる.
8 【A4-D1】 半導体という物質を知り,どんな性質をもっているか説明できる.
9 【A4-D1】 半導体素子であるダイオードとトランジスタの基本的な動作を説明できる.
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1 単位の接頭語の意味を理解し,使用頻度の高いものについては使えるようになっているかを前期中間試験および授業中の演習と課題で評価する.
2 オ−ムの法則の意味を理解し,直流回路の基本的な計算ができるかを前期中間試験および授業中の演習と課題で評価する.
3 重ね合わせの理およびキルヒホッフの法則を用いて簡単な直流回路の計算ができるかを前期中間試験と前期定期試験および授業中の演習と課題で評価する.
4 電流による発熱作用から電力と電力量について理解し,計算することができるかを前期定期試験および授業中の演習と課題で評価する.
5 磁気と静電気との違いを理解し,それぞれを応用した機器について説明することができるかを後期中間試験および授業中の演習と課題で評価する.
6 静電容量という量を理解し,簡単な並行平板構造での容量計算,および容量の直列・並列接続時の容量計算ができるかを後期中間試験および授業中の演習と課題で評価する.
7 磁気現象(フレミングの法則,電磁誘導,ヒステリシス特性)について説明ができるかを後期中間試験および授業中の演習と課題で評価する.
8 半導体という物質を知り,どんな性質をもっているか説明できるかを後期定期試験および授業中の演習と課題で評価する.
9 半導体素子であるダイオードとトランジスタの基本的な動作を説明できるかを後期定期試験および授業中の演習と課題で評価する.
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成績は,試験90% 授業中の演習と課題10% として評価する.前期と後期の成績は,中間試験と定期試験,演習および課題に基づき,総合成績は前期成績と後期成績の単純平均とする.総合評価100点満点中60点以上を合格とする.尚,場合により再試験を実施する.再試験評価は70点以上で合格とし,当該試験の点数を60点とする.
テキスト 「図解でわかる はじめての電気回路」大熊康弘(技術評論社)
「ポイントマスター 電気基礎(上)トレーニングノート」加藤,神谷,山本,岡安,各務,久永,松村(コロナ社)
参考書 「絵で見る電気の歴史」岩本洋(オーム社)
「図でよくわかる電気基礎」高橋寛監修(コロナ社)
「例題で学ぶやさしい電気回路 直流編」堀浩雄(森北出版)
「電子工学入門」大豆生田利章(電気書院)
「よくわかる電子基礎」秋富勝,菅原彪(東京電機大学出版局)
関連科目 D2電気回路I,D3電気磁気学I,D3電子デバイス,D1電子工学実験実習,D2電子工学実験実習
履修上の
注意事項
この科目は専門科目の電気回路I,電気磁気学I,電子デバイスの基礎であるのでしっかり学習すること.また,電子工学実験実習で実際に実験をして確かめることもあるので,実験と合わせて学習すること.

【授業計画( 電子工学序論 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 電気現象と電子工学技術史,SI単位系,単位と指数表現
電子工学科におけるこの講義の位置づけについて概説する.また,電気現象について,歴史的にどのような発見がなされ,応用されてきたかを説明する.さらに,SI単位系と接頭記号(M,k,m,μなど)についても説明する.
2 単位の変換,直流電気回路とオームの法則,電荷・電流の関係
電子工学で用いる様々な単位の変換と,第三者へ伝えやすい単位の記述方法について説明する.また,電気回路の基本である直流電源と抵抗で構成される直流回路について,オームの法則および電荷と電流の関係について説明する.
3 直列回路・並列回路・直並列回路(1)
直流回路で用いる抵抗を複数本として,直列に接続した場合,並列に接続した場合,直列と並列を組み合わせた場合について全体の抵抗値(合成抵抗)がどのようになるか,また,それらを電気回路に用いたとき,それぞれの端子間電圧,素子に流れる電流が幾らになるか求める.
4 関数電卓の使い方
関数電卓は非常に便利な道具であり,その動作を充分に把握して使用することが必要である.ここでは電子工学科の講義および実験において必要な関数電卓の操作について解説する.
5 直列回路・並列回路・直並列回路(2)
3週目に引き続いておこなう.
6 キルヒホッフの法則(1)
回路計算を行ううえで,もっとも重要な基本式であるキルヒホッフの第1法則(電流則)と第2法則(電圧則)について理解し,実際の直流回路網に応用できるようにする.
7 キルヒホッフの法則(2)と復習
6週目に引き続いておこなうとともに,これまでの復習をおこなう.
8 前期中間試験
1週目から7週目の内容について,理解度を確認する試験をおこなう.
9 試験の解答とこれまでの注意点確認
前期中間試験の解説およびこれまで学んできたことの確認をおこなう.
10 重ね合わせの理(1)
複数の電源(電圧源,電流源)をもつ直流回路では,電源を分けて考えることができ,最終的に各素子に流れる電流は,それぞれの電源で考えたときに各素子に流れる電流の総和で求まる.このことを例題を通して理解し,実際に計算できるようにする.
11 重ね合わせの理(2)
10週目に引き続いておこなう.
12 直流ブリッジ回路
4本の抵抗をひし形に組み合わせた構造をブリッジという.直流ブリッジでは,2組の直列抵抗の比が同じであれば並列に接続した2組の中点の電位は等しくなり,その間に抵抗(検流計)などを接続しても電流は流れない.このような状態を平衡状態といい,この条件を利用して抵抗の測定などに利用される.この原理を学ぶ.
13 電圧計と電流計(倍率器,分流器)
『テスター・ハック』をおこなう.電気磁気現象を用いて電流,電圧を測定する計器には抵抗が含まれているが,それぞれの計器に補助的な回路(抵抗)を追加することにより,測定できる範囲を変える事ができる.
14 消費電力と発生熱量(ジュールの法則)
物体に電流が流れるとエネルギーを消費することになる.身の回りの電気機器でもそれぞれ消費電力の表示があることに気がつく.回路での消費電力の定義を知り,実際に求めてみる.また,電気エネルギーが消費されて熱エネルギーに替わり暖かくなる(ジュール熱).この熱により,どれくらい水が温かくなるか考えてみる.
15 復習と演習
10週から14週の内容について,復習するとともに具体的な演習問題を解き理解を深める.
16 電気抵抗と抵抗率,導電率
電気抵抗が抵抗体の長さに比例しその断面積に反比例することを合成抵抗の原理より理解するとともに,材料により単位長さ単位面積あたりの抵抗値(抵抗率)が異なることを知る.一般の金属では,温度に比例して抵抗値が変化することを知る.抵抗とは逆の概念で,電気の通しやすさとして,導電率の概念を身につける.
17 静電気と磁気の現象とその利用
古くから雷や静電気などの電気的な現象や,磁石や地磁気などの磁気的な現象が知られている.これらの物理的な性質を具体例を通して学ぶとともに,身近に応用されている製品などについて学ぶ.
18 クーロンの法則(電気,磁気)
電荷,磁荷(極)によるクーロン力がどのように表現されるか知る(類似性).クーロン力の解釈として,場という概念を理解する.クーロン力はほとんど同じように表現されるが,実際の電荷と磁荷の異なることについて学ぶ.
19 静電気の応用とコンデンサ
平行平板電極間に誘電体(絶縁体)をはさむことにより,コンデンサとなること理解し,その静電容量が電極間の距離に反比例し,面積に比例することを学ぶ.また,電極間にはさむ誘電体についてもどのような種類のものが使われているのか学ぶ.
20 磁気現象1(右ねじの法則,フレミングの法則)
電流によって磁界が発生することと発生する磁界と電流の方向との関係を知る(右ねじの法則).磁界下に電流が流れた導線に働く力について考える(フレミングの左手の法則).
21 磁気現象2(電磁誘導,磁性体)
フレミングの左手の法則と逆の考えで,磁界中に置かれた導体が磁界を横切ると起電力を発生することを知る(フレミングの右手の法則).これらの磁気的な現象の応用として,発電機,トランスなどがあり,その動作原理を理解する.また,強磁性体の磁化現象(ヒステリシス現象)などについても理解する.
22 復習と演習
16週から21週の内容について,復習するとともに具体的な演習問題を解き理解を深める.
23 後期中間試験
16週から22週の内容について,理解度を確認する試験をおこなう.
24 試験の解答とこれまでの注意点確認
後期中間試験の解説およびこれまで学んできたことの確認をおこなう.
25 半導体の種類と特性,半導体の電気伝導
導体と絶縁体の中間的な物質として半導体がある.半導体は抵抗値が導体と絶縁体の中間であるというだけでなく,いろいろな組み合わせ(不純物を添加したもの)でいろいろな特性をもつ.現在の電子デバイスはこの半導体の特性を活かした素子によって成り立っている.この半導体の構造,特性について学習する.
26 PN接合とダイオードの電気的特性
ダイオードで代表される半導体素子の構造がPN接合である.P,Nはそれぞれ電荷を運ぶもの(キャリヤ)のうち,多数を占めているのが,+電荷(正孔)であればP形,−電荷(電子)であればN形と呼ばれる.そのP形とN形の素子を接合させ電圧を印加したとき,その極性によって電流の流れ方が異なることを学ぶ.
27 ダイオードの応用(整流回路)
ダイオードの電気的な特性を応用したものの1つが整流回路である.ダイオードは,交流電圧が印加されたとき,一方の極性のときだけ(+)電流を流し,もう一方のとき(−)には電流を流さない.その結果として,+の成分だけを取り出すことが出来る.これを整流という.実際の整流回路ではこの後平滑回路が必要である.
28 トランジスタとFETの原理と構造
ダイオードは極性に応じて,電流を流すか流さないかの制御をすることができたが,トランジスタ,FETでは,電流,電圧を増幅することができる.ここでは,トランジスタ,FETの構造を説明し,その動作原理について概観する.
29 トランジスタの応用(増幅回路)
トランジスタの増幅回路(エミッタ接地)についてその動作原理,動作点の決め方(直流負荷線の引き方)について実際のトランジスタの特性を元に具体的に説明する.
30 復習と演習
25週から29週の内容について,復習するとともに具体的な演習問題を解き理解を深める.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.