【 2021 年度 授業概要】
科   目 電力工学U ( Electric Power Engineering II )
担当教員 [前期] 田所 道博 非常勤講師, [後期] 津吉 彰 教授 【実務経験者担当科目】
対象学年等 電気工学科・5年・通年・必修・2単位【講義】 ( 学修単位III )
学習・教育
目標
A4-E4(100%)
授業の概要
と方針
本科目は電力工学Iの内容をさらに高度に学ばせる.発電,変電,送電,配電という電力工学の各要素を学ぶことにより電力の供給に必要な基本的な技術を理論的,体系的に習得させる.電力を利用する産業,市民活動が地球に与える影響を知り,エネルギーの効率的な利用を目指す技術者教育の柱として,単に理論にとらわれず電力利用の動向についても自ら学ばせる.本講義の前期の範囲については民間企業から講師を招いて実施される.



1 【A4-E4】 送電システムを理解し,第2種電気技術者試験相当の問題を解けるようにする.
2 【A4-E4】 配電システムを理解し,第2種電気技術者試験相当の問題を解けるようにする.
3 【A4-E4】 電気事業における発電の原理を理解し,第2種電気技術者試験相当の問題を解けるようにする.
4 【A4-E4】 変電システムを理解し,第2種電気技術者試験相当の問題を解けるようにする.
5 【A4-E4】 電力の利用が地球環境に与える影響を理解し,説明することができる.
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1 送電システムを理解していることを試験ならびにレポート,小テストで評価する.総合で60%以上の達成度を合格とする.
2 配電システムを理解していることを試験ならびにレポート,小テストで評価する.総合で60%以上の達成度を合格とする.
3 電気事業における発電の原理を理解していることを試験ならびにレポート,小テストで評価する.総合で60%以上の達成度を合格とする.
4 変電システムを理解していることを試験ならびにレポート,小テストで評価する.総合で60%以上の達成度を合格とする
5 電力の利用が地球環境に与える影響,エネルギーの有効利用について理論的に説明できる事をレポートで評価する.
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成績は,試験80% レポート10% 小テスト10% として評価する.総合評価で100点満点で60点以上を合格とする.ただし,各試験の成績によらず,後期定期試験で60%以上の評価により合格とする.
テキスト オーム社 OHM大学テキスト 電力発生・輸送工学 著者:伊与田 功 編著
参考書  
関連科目 電力工学I
履修上の
注意事項
前期は非常勤講師による授業を実施する.本科目に限らず5年生の空きコマには補講が実施される場合があるので注意されたい.

【授業計画( 電力工学U )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 電力輸送する送電・変電・配電設備(1,7章)
発電所から電力を消費地点迄輸送する送電・変電・配電及び需要家屋内設備を説明し,機能と及び具備性能と高電圧化して来た送電・配電電圧の歴史的経過と考え方,及び系統構成や電気方式を理解する.
2 交流回路と電力計算に必須な電圧降下や電力輸送可能電力計算(7章)
電力計算に必要な電圧・電流・インピーダンスを複素数で表示してフェーザ図による電圧降下,フェランチ現象や電力相差角曲線を理解する.対称三相回路のベクトルオペレーターや相電圧と線間電圧,Y/△結線など電気計算に必須な電気数学を適宜復習しマスターする.
3 架空送電設備の構成機材,四端子回路解析や弛度計算(8章)
特別高圧電圧の架空送電設備を構成する部材と機能を説明し,具備性能を理解する.送電線の電気定数は分布定数であり,四端子回路の理解と計算解析手法の習得する.また,弛度計算式を誘導してカテナリー曲線,及び電線振動現象を理解する.
4 電力ケーブルの種類別構造や施設方法と電気定数(10章)
過密地域での特別高圧電力ケーブルによる系統構成と適応する種類別の構造や施設方法,並びにジョイント工法や冷却方式を概説して電力ケーブルを理解する.また,ケーブル特有の誘電体損等の電気定数を理解する.
5 変電所の構成と主要機器,変圧器の結線方式・中性点接地方式(11章)
変電所に施設される主要機器とその役割と具備すべき性能要件を説明する.変圧器の結線方式と中性点接地方式の特質,及び単位法による基本式を理解する.電力潮流制御に必要なタップ電圧,調相設備の絶縁方式,避雷機器等性能要件を理解する.
6 変電所の変圧器構成と母線方式(11章)
変電所の機器構成を学ばせ,中性線接地方式や変電所の各機器の役割を理解する.
7 変電所や送電線の異常電圧を概説(9章)
電力機器に発生する異常電圧の種類と規模を概説して,架空送電系統・ケーブル系統・変電所の異常電圧対策を理解する.避けられない異常電圧に対する絶縁協調の考え方を理解し,ギャップレスアレスターの適応実態を習得する.
8 保護継電器(12章)
送変配電設備は過酷な自然環境下に施設され,故障発生に対して早期遮断による事故波及抑制,設備・機器保護及び健全設備からの迅速復電するため,事業者要求性能に対応した保護制御システムを開発し施設している.その種類や機能・特性を理解する.
9 中間試験   
7回までの内容に基づき中間試験を実施する.
10 故障計算と対象座標法 1.  設備故障の実態,対称座標法導入(13章)
電力設備に発生する故障の形態と規模を説明し,三相交流回路では事故相以外の健全相にも影響が波及すことを故障計算に利用される対象座標法を用いて理解する.1.では対象座標法による発電機の基本式や等価回路を作図して故障計算手法をマスタターする.
11 試験返却解説・故障計算と対象座標法 2.  実際の故障計算,対称座標法応用(13章)
試験を返却し解説する.2.では,1.で学習した対象座標法を用いて,一線地絡故障や二線地絡故障時の地絡電流や健全相電圧を演算実践して理解する.特に,演習問題を活用して理解深化に資する.
12 高圧配電設備の系統構成,機材(14章)
我が国の太宗の高圧配電電圧は6kVであり被覆高圧電線を適用している等,独自の技術開発による設備機材を適応している.その系統構成や機材を説明し,接地方式と密接に関連する保護方式との関連も併せてを理解する.
13 低圧配電設備の系統構成,機材.(14章)
我が国低圧電圧は100/200vであり変圧することなく負荷機器に直接接続供給される.低圧系統単相100v/3相200vを効率的に設備構成する3相4線式が一般的であり,これらの低圧配電設備や結線方式を説明して,保護方式との関連も併せて理解する.
14 需要家受電設備や屋内配線
我が国は,需要家電気設備規模の逓増に対応して系統電力からの受電電圧は高電圧化する仕組みである.特別高圧・高圧受電設備例を基に需要家屋内設備の構成やその保安装置等を説明し屋内電力設備と併せて保安確保を図る設備面・態勢面の対策を理解する.
15 送変配電に関する総括,今後の電力発生と輸送の課題(15章)
太陽光等再エネの普及は電力自由化とも相まって電力潮流を双方向化し,機器短絡強度不足問題を惹起する等の課題があるが,スマートメーター適用は新たなロードマネイジメントを誘引してビジネスを創起する.電力系統の将来課題を展望し対策の考え方を考察する.
16 発電総論.エネルギー変換論.我が国の電気事業概説(1章)
エネルギー変換としての発電工学の位置づけを説明し,我が国の電気事業の歴史および現状を述べる.電気エネルギーが低炭素化社会実現に配慮されていることを学ぶ.
17 水力発電の基礎(5章)
水の位置エネルギーから落差,流量の定義および理論出力を導く.またベルヌーイの定理および連続の式より水力学の基本公式を説明する.落差の取り方による各種水力発電方式を紹介し,ダム,導水路等の水力発電所の土木設備と門扉等その付随設備を解説する.
18 各種水車の構造と特徴. 水車発電機.水力発電所の諸設備とその設計(5章)
水力発電で使用される水車の構造と特徴および付帯設備,発電機の特徴を説明し,その他発電所に設置される設備を紹介する.また水力地点から設備を設計する演習を行う.
19 水力発電所の管理.揚水発電.水力問題演習(5章)
水力発電所の運転制御法を解説する.揚水発電の方式,潮力発電を説明し,水力発電全般の演習後,小テストを実施する.
20 火力発電の基礎理論.熱力学.各種燃料の特徴.ボイラおよび蒸気タービン(3章)
熱力学とランキンサイクルを説明し,火力発電におけるエネルギー変換,エネルギーの流れを解説する. 火力発電で使用される固体,液体,気体燃料の特徴と燃焼方法,ボイラ内に設置される熱吸収機器の配置を説明する.次に,各種蒸気タービンの構造と動作原理を解説する
21 燃料の燃焼,給水ポンプ.復水器その他の設備.タービン発電機の特徴と制御(3章)
燃料の燃焼の計算を学び演習する.給水ポンプ,復水器,再熱器,給水加熱器,所内電力設備等の構造と特性.タービン発電機の特徴を解説する
22 火力発電所の各種設備, 火力発電所の管理と運用,さまざまな火力発電(3章)
電気集塵装置,排煙脱硫脱硝装置の構造と動作原理および温排水の影響を述べる. 熱効率その他効率の定義および計算.最近の火力発電所運転制御を紹介する.各種ガスタービンの構造と特徴.ディーゼルおよびガソリン内燃力発電の特徴を述べる.
23 後期中間試験
後期中間試験を実施する.
24 後期中間試験の解説,
後期中間試験を解説する.火力発電の小テストを実施する
25 原子力発電の基礎理論.原子核物理.核分裂連鎖反応と中性子束分布.減速材,吸収材(4章)
原子核分裂による質量欠損と結合エネルギーの放出について説明する.熱中性子によるウラン235の分裂と高速中性子減速材,吸収材による制御について説明し,臨界状態の核分裂連鎖反応を維持する条件を示す.
26 各種原子炉と原子力発電所の構成. 原子炉の制御理論(4章)
加圧水型および沸騰水型軽水炉の構造を説明する.また,ガス冷却炉,高速増殖炉の構造と特徴を紹介する. 軽水炉について,加圧水型および沸騰水型の相違点を中心にその制御方法,自己制御性を説明する.
27 核燃料サイクル.原子力発電の今後
核燃料サイクルや将来的な原子力発電の要となる核融合発電の原理などについて外部講師による授業を行う.
28 原子力発電問題演習. 地熱発電
地熱エネルギーとその発電設備を説明し,世界およびわが国の地熱発電所を紹介する.また原子力発電に関する演習後,小テストを実施する.
29 新しい発電方式.直接発電,太陽エネルギー,MHD発電,燃料電池,その他の自然エネルギー(6章)
太陽光発電などの特性や普及状況,自然エネルギーを取り巻く状況について学ぶ またMHD発電など新発電や,普及が始まっている燃料電池などについて学ぶ.
30 電力工学全般にわたる復習
電力工学II全般について復習,演習する.


本科目の修得には,60 時間の授業の受講と 30 時間の事前・事後の自己学習が必要である. 前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.場合により再試験などを実施する場合がある.後期定期試験の評価が60%でそれまでの成績によらず合格とする.