【 2021 年度 授業概要】
科   目 応用数学T ( Applied Mathematics I )
担当教員 笠井 正三郎 教授
対象学年等 電子工学科・4年・通年・必修・2単位【講義】 ( 学修単位III )
学習・教育
目標
A1(100%)
授業の概要
と方針
3年次の電気数学に引き続き,電気電子系専門科目の基礎として重要なベクトル解析,フーリエ級数,フーリエ変換について修得する.



1 【A1】 空間曲線と曲面の形や性質をベクトルを用いて表現することができる.
2 【A1】 ベクトル場あるいはスカラー場に対して,勾配・発散・回転を計算できるとともに,その物理的意味・幾何学的意味を概ね理解できる.
3 【A1】 線積分と面積分の意味が理解でき,発散定理とストークスの定理の使い方がわかる.
4 【A1】 任意の周期波形(関数)が,sin, cos関数から合成できることを理解し,フーリエ級数の重要性を理解する.
5 【A1】 周期を持たない関数に対しては,フーリエ積分を考えることと,それから複素形フーリエ積分を導いて,フーリエ変換の定義式が導かれることが理解できる.
6 【A1】 離散フーリエ変換について説明することができ,それを用いた音声・画像などの情報圧縮の基本原理を説明することができる.
7 【A1】 3年次に学習した数学Iの基本的な内容(微分・積分・微分方程式)を応用数学に使える.
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1 具体的な位置ベクトルで示された空間曲線や曲面に対して,曲線の長さや単位接線ベクトル,単位法線ベクトルを正しく求められるかどうかを,前期中間試験で評価する.
2 与えられたスカラー場,あるいはベクトル場に対して,勾配・発散・回転を正しく求められるかどうかを前期定期試験によって評価する.
3 簡単な場の問題に対して,ガウスの発散定理とストークスの定理を適用してベクトル関数の積分を求めることができるかどうかを前期定期試験で評価する.電気磁気学への応用をレポートで評価する.
4 簡単な周期波形をフーリエ級数に展開でき,フーリエ級数の基本的性質が説明できることを後期中間試験で,幾つかの周期関数に対してフーリエ級数で合成できることをレポートで評価する.
5 基本的な関数に対してフーリエ積分表示できること,また,この関係を積分を求めるのに応用できるかを後期定期試験で評価する.
6 離散フーリエ変換について簡単な例により理解できているか,後期定期試験とレポートにて確認・評価する.
7 実力試験,前期試験,後期試験とレポートにて確認・評価する.
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成績は,試験80% レポート15% 実力試験5% として評価する.試験成績は,中間・定期の4回の試験の平均とする.状況により再試験を行なうことがあるが,その場合最高60点で評価する.なお,総合評価は100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「応用数学」:上野健爾(監修),高専の数学教材研究会(編) 高専テキストシリーズ (森北出版)
「応用数学問題集」:上野健爾(監修),高専の数学教材研究会(編) 高専テキストシリーズ (森北出版)
参考書 「新訂応用数学」:高遠節夫・斎藤斉他著(大日本図書)
「新版応用数学」:岡本和夫他著(実教出版)
「詳解 応用解析演習」:福田安蔵他共編(共立出版)
「道具としてのベクトル解析」:涌井貞美編(日本実業出版社)
「道具としてのフーリエ解析」:涌井良幸・涌井貞美共編(日本実業出版社)
関連科目 D1〜D3の「数学I」,「数学II」,D3「電気数学」とD4「応用数学II」
履修上の
注意事項
電気数学に限らず,1年〜3年で習った数学をよく理解できていることが大切である.特に微分積分学,三角関数,指数関数,対数関数をよく理解しておいて欲しい. 授業の進捗のペースが速いので,予習・復習に努め,その都度授業内容を理解するよう心がけてほしい.

【授業計画( 応用数学T )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 年間の授業ガイダンスと実力試験
シラバスを配布して簡単な授業ガイダンスを行い,3年次に学習した数学Iの内容について実力試験を行う.
2 ベクトルとスカラ,ベクトルの表示と基本演算(加算,減算,スカラー倍,内積と外積)
ベクトルの表現,加算,減算,スカラ倍の演算について復習するとともにそれぞれがどのように用いられるか紹介する.また,ベクトルの内積について復習するとともに,ベクトルの外積について,その定義と応用について学ぶ.
3 ベクトル関数(ベクトルの微分,速度,加速度)
空間内の物体位置はベクトルで表現され,その物体の運動はベクトル変数の微分により,速度,加速度として表わされる.物体の運動をベクトルを用いて表現する.
4 ベクトルによる曲線・曲面の表現
3次元空間における曲線・曲面についてベクトルを用いて表現するとともに,その幾何学的な特徴づける接線ベクトル・法線ベクトル・曲率・曲率半径について学ぶ.
5 スカラー場とベクトル場, スカラー場の勾配
空間内に大きさだけが定義されるものをスカラー場,大きさと方向をもつものをベクトル場として表現する.これらを数学的に扱う手法について説明する.また,スカラー場φに対して,x, y, z で偏微分したものを成分とするベクトルとしてスカラー場の勾配を定義する.勾配の求め方,物理的意味などについて解説する.
6 ベクトル場の発散と回転
ベクトル場に対して発散というスカラー量と,回転というベクトル量を定義して示し,それらの物理的意味を説明する.
7 線積分
スカラー場とベクトル場の線積分の定義と,媒介変数 t の積分に変換してそれらの値を求める方法を示す.
8 前期中間試験
2週から7週の内容についての理解度を測るための試験を行う.
9 試験解答と復習
中間試験の解答を行うとともに,再度,重要な点について理解を深める.
10 グリーンの定理
線積分から領域積分への変換式を与えるグリーンの定理について,その証明と具体的な応用例を示す.
11 面積分
スカラー場とベクトル場の面積分を定義し,それらを具体的に求める手順を示す.
12 ベクトルの発散とガウスの発散定理
ベクトルの発散とは何かについて説明するとともに,ガウスの発散定理の物理的意味,証明の手順を解説し,その定理の極めて有効な適用事例を紹介する.
13 ベクトルの回転とストークスの定理
ベクトルの回転とは何かについて説明するとともに,ストークスの定理の証明の考え方を示し,この定理の有効な適用事例を示す.
14 ベクトル解析の応用
ベクトル解析を利用するした電磁気学,力学への応用について講義を行う.
15 総合演習
ベクトル解析全般(特に10週から14週に重点をおいて)に関して,演習を行う.
16 これまでの復習と課題の解説およびフーリエ解析の概要
前期定期試験や課題の解説を中心に,間違いやすい点,重要な点について復習する.また,フーリエ解析の概要について電気系専門科目で用いられるものを中心に説明する.
17 フーリエ級数展開(周期2πの関数)
周期2πの周期関数が,定数及びその周期の整数倍の正弦波関数・余弦波関数によって表現できることを説明するとともに具体的な計算方法を示す.
18 フーリエ級数の収束値
フーリエ級数がどのような値に収束するのかについて説明し,具体例を示す.
19 一般的な周期関数におけるフーリエ級数展開
前回までは周期2πの周期関数に関するフーリエ級数展開であったが,これを一般的な周期関数に適用する.数展開(複素フーリエ級数展開)について説明する.
20 複素フーリエ級数展開
正弦波関数・余弦波関数は,複素指数関数で表現できることより(オイラーの公式),複素指数関数によるフーリエ級数展開(複素フーリエ級数展開)について説明する.
21 偏微分方程式への応用
フーリエ級数の応用として,偏微分方程式の解法の例を紹介する.
22 総合演習
17週から21週に関する内容について,総合的な演習を行う.
23 後期中間試験
フーリエ級数に関して17週から22週で学んだことの理解度を試験により評価する.
24 試験解答とこれまでの復習
前半は,後期中間試験の解答を行い,フーリエ級数のまとめと復習をおこなう.
25 フーリエ積分の定義と定理
フーリエ級数展開は,周期関数に対して定義されるものであったが,一般の関数は周期関数とは限らない.このような一般の関数を周期無限大の周期関数として拡張すると級数表示が積分に代わり,フーリエ積分と呼ばれる形になる.このフーリエ積分の定義と基本的な定理について紹介する.
26 フーリエ変換の性質と公式
フーリエ変換の基本的な性質と基本的な公式について説明する.
27 フーリエ変換の応用1
境界が有限でない偏微分方程式の場合,フーリエ変換を用いることにより解くことができる.具体例により,解法を学ぶ.
28 フーリエ変換の応用2
時間領域で表現された信号をフーリエ変換することにより周波数領域の信号が求められる.これにより,いろいろな信号処理を理解することを助ける.代表的な例を紹介する.
29 離散フーリエ変換について
離散フーリエ変換は,離散かされた信号をフーリエ変換するときに用いられる手法であり,画像圧縮などディジタル信号処理に広く応用されている.基本的な変換方法について説明する.
30 総合演習
25週から29週までの内容に関して総合的な演習を行う.


本科目の修得には,60 時間の授業の受講と 30 時間の事前・事後の自己学習が必要である. 前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.