【 2021 年度 授業概要】
科   目 物理化学T ( Physical Chemistry I )
担当教員 渡辺 昭敬 教授
対象学年等 応用化学科・3年・通年・必修・2単位【講義】 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
A4-C3(100%)
授業の概要
と方針
化学の基礎となる物理化学より,物質の状態や化学変化に関わる化学熱力学と,その応用として平衡論について講義する.化学熱力学では,物理量と単位,気体の状態方程式,熱力学(第一,第二,第三法則)とその化学への応用について解説する.平衡論については相平衡,化学平衡の分野でその基礎と応用について理解させる.さらに電気化学ついてもその基礎的事項を学ぶ.



1 【A4-C3】 気体の状態方程式および気体分子運動論について理解する.
2 【A4-C3】 熱力学の各法則を理解し,反応におけるエンタルピーおよびエントロピー変化を理解する.
3 【A4-C3】 ギブズエネルギーの考え方をもとに,純物質および混合物の相平衡の熱力学的記述を理解する.
4 【A4-C3】 化学平衡について熱力学的観点からの原理を理解する.またその応用として種々の平衡(相平衡,プロトン移動,塩,溶解度)について理解する.
5 【A4-C3】 電池の全反応と半反応を理解する.
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1 気体の状態方程式(完全気体と実在気体の違い)と気体分子運動論に関する事象を説明することができるかどうか,レポートならびに前期中間試験で評価する.
2 エンタルピー,エントロピー,ギブズエネルギーについて理解し,反応における各量の変化が求められるかをレポートならびに前期定期,後期中間試験で評価する.
3 各状態(固−液−気体)間の相図,ならびに純物質および混合物の相変化を熱力学の対応について説明できるかどうか,前期定期試験ならびに後期中間試験で評価する.
4 ギブズエネルギーと化学平衡の関連,ファントホッフの式など平衡の圧力,温度依存性をについて説明できるか後期中間試験ならびにレポートで評価する.
5 化学電池およびその電極反応,電極反応の平衡論および溶液中のイオンの挙動を説明できるかどうか後期定期試験ならびにレポートで評価する.
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成績は,試験90% レポート10% として評価する.各期の中間・定期試験の平均を試験成績とする.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「物理化学要論 第7版」P. W. Atkins・J.de.Paula著・千原 秀昭・稲葉 章 訳 (東京化学同人)
参考書 「アトキンス物理化学 第10版(上・下)」:P. W. Atkins(東京化学同人)
「アトキンス物理化学要論問題の解き方(第6版/英語版)」:C. A. Trapp, M. P. Cady,Jr. (東京化学同人)
「たのしい物理化学1化学熱力学・反応速度論」:加納 健司,山本 雅博(講談社)
「バーロー物理化学 第6版(上・下)」:G. M. Barrow (東京化学同人)
「ムーア物理化学 第4版(上・下)」:W. J. Moore (東京化学同人)
関連科目 一般科目の数学・物理学・化学・C3化学工学I
履修上の
注意事項
物理化学は,物理の視点から化学の基本原理を考察する教科であるので,当然,物理学とその基礎となる数学に精通していることが望ましい.1〜3年までの物理学や数学のみならず,同時進行で学習する化学工学の内容も必要となってくる.

【授業計画( 物理化学T )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 物理化学はどんな学問か(物理化学量とSI単位 数値計算方法 )
物理化学の学習意義について説明する.また,各物理量の定義について学び,SI単位系とそれ以外の系との変換や実際の数値を伴った単位換算について学習する.
2 気体の状態方程式を解く(完全気体)
完全気体の性質について理解し,また状態方程式についての理解を深める. ドルトンの分圧の法則,モル分率についても学ぶ.
3 気体分子運動論 その1
気体分子運動論の考え方からも,完全気体の状態方程式が導き出せることを学び,統計的手法の考え方を学ぶ.
4 気体分子運動論 その2
平均自由行程ならびに衝突頻度について学ぶ.
5 気体の状態方程式を解く(実在気体)その1
完全気体と実在気体の違いについて理解する.また,実在気体の状態方程式であるビリアル方程式について学ぶ
6 気体の状態方程式を解く(実在気体)その2
実在気体の状態方程式であるvan der Waals方程式について学ぶ.
7 エネルギー及びボルツマン分布の概念 気体運動論の補足 
エネルギーの概念と熱平衡の重要な概念であるボルツマン分布について簡単に説明する.気体運動論による気体分子が壁に衝突することから生ずる圧力を表す式の導出についても学習する.
8 これまでの復習
1−7週の内容について,不明点の再説明などの復習を実施する
9 中間試験
1〜7週の内容に関する試験を行う.
10 中間試験解答 および 熱力学 その1
中間試験の解答を黒板を用いて説明し,注意点を指摘する.熱力学の考え方を学ぶ.第一法則を主体とし,仕事と熱の関係,比熱,内部エネルギ−について学ぶ.
11 熱力学 その2
エンタルピー,熱化学方程式について学ぶ.
12 熱力学 その3
熱力学第二,第三法則を学び,そこから得られるギブズエネルギーの考え方について学ぶ.
13 純物質の相平衡(相転移の熱力学)
相変化とギブズエネルギーとの関係を学習する.
14 純物質の相平衡(相律,相図)
相境界,相図について理解する.また,代表的な物質の相図を学習する.
15 これまでの復習・演習
これまでの講義について必要に応じた演習を実施する.
16 混合物の性質(熱力学的記述)
非電解質溶液の混合物の性質を学習する.モル濃度,質量モル濃度,モル分率を用いて,ラウールの法則,ヘンリーの法則を学習し,例題を解いて理解する.
17 相平衡と熱力学
2週にわたり混合物の相平衡について,ギブズエネルギーの関係を含めて学習する.
18 相平衡と熱力学
2週にわたり混合物の相平衡について,ギブズエネルギーとの関係を含めて学習する.
19 反応ギブズエネルギー
化学平衡の考え方のもととなる反応ギブズエネルギーについて学習する.
20 化学平衡の原理
2週にわたり化学平衡を反応ギブスエネルギーを用いて説明することによって熱力学的な裏づけを学習する.
21 化学平衡の原理
2週にわたり化学平衡を反応ギブスエネルギーを用いて説明することによって熱力学的な裏づけを学習する.
22 化学平衡の移動とその熱力学的考察
平衡の移動に対する触媒の存在,温度の効果,圧縮の効果を学習する.併せてそれらと熱力学との関係についても学習する.
23 中間試験
16〜22週の内容について試験を行う.
24 中間試験解答
中間試験の解答を黒板を用いて説明し,注意点を指摘する.
25 化学平衡の応用(塩の水溶液,溶解度平衡)
酸−塩基滴定に関するヘンダーソン-ハッセンバルヒの式から酸,塩基の濃度とpHとの関係式が導かれることを理解し,緩衝作用,溶解度定数,共通イオン効果について学習する.
26 電気化学(イオンの移動)
電解質溶液中におけるイオンの電気伝導率,イオン移動度など,水溶液中のイオンの移動と電荷の移動について学習する.
27 電気化学(半反応と電極,電池反応,電極電位)
種々の電池の電池反応とその半反応を学習する
28 電気化学(標準電位)
標準電位は標準水素電極の電位を基準に表されている.ネルンストの式について学習し,標準電位の考え方を学習する.
29 電気化学(熱力学関数の決定)
標準電極電位と標準反応ギブスエネルギーとの関係より反応式から電池の電圧が計算できることを学習する.
30 これまでの復習・演習
講義全体にわたって必要に応じた演習を実施する.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.