【 2020 年度 授業概要】
科   目 半導体工学 ( Semiconductor Engineering )
担当教員 河合 孝太郎 講師
対象学年等 電気工学科・4年・前期・必修・2単位 ( 学修単位III )
学習・教育
目標
A2(100%)
授業の概要
と方針
これまで学習した半導体デバイスの基礎知識に,定量的なアプローチや量子論的な考え方を加えることで,より深い知識を学ぶ.また,様々な半導体デバイスの動作原理をエネルギーバンド図などを用いながら広く学び,劣化や降伏などの関連する現象も学ぶ.さらに,半導体デバイス作製に用いられる装置やデバイスプロセスの基礎についても学ぶ.



1 【A2】 エネルギーバンド構造を書くことができ,半導体内のキャリア密度を計算により算出できる.
2 【A2】 pn接合のI-V特性における降伏やトンネルダイオードについて説明でき,金属と半導体の接触を定性的に理解する.
3 【A2】 MOS構造の動作をエネルギーバンド図をもとに理解する.また,酸化膜内の欠陥について理解し,欠陥が及ぼすデバイスへの影響と欠陥低減技術を理解する.
4 【A2】 MOSFETの基本原理や,C-V特性測定を基にしたMOSFETの性能評価方法について説明することができる.
5 【A2】 MOSデバイスの基本的作製工程について説明することができる.
6 【A2】 フラッシュメモリなどのMOSFETに類似したデバイスについて説明できる.
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1 キャリア密度の計算や半導体中における電子の運動について小テスト課題及びレポートで評価する.
2 降伏現象や金属-半導体接触について中間試験及びレポートで評価する.
3 MOS構造の動作や酸化膜内の欠陥が及ぼす影響について小テスト課題及びレポートで評価する.
4 MOSFETの基本原理や特性評価の方法について小テスト課題及びレポートで評価する.
5 MOSFETの作製方法について定期試験及びレポートで評価する.
6 フラッシュメモリやMESFETなどのMOSFETに類似したデバイスについて定期試験及びレポートで評価する.
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成績は,試験45% レポート55% として評価する.試験45%分は,中間試験および定期試験の相加平均をとる.レポートは,2回実施した小テスト課題の成績の相加平均を45%で評価し,これと別途のレポートで10%評価する.全て合わせて100点満点で60点以上を合格とする.総合評価の小数点以下は切り捨てる.
テキスト 半導体工学 第3版-半導体物性の基礎- 高橋清,山田陽一著
参考書 半導体デバイス S.M.ジィー
関連科目 電気材料,応用物理,電子工学
履修上の
注意事項
授業に関係のない私語を一切禁じる.本科目は半期で30回の授業を行うため,中間試験と定期試験とは別途に小テストを2回実施する.本科3年生の電子工学で修得した半導体デバイスの基本的動作原理に,定量的なアプローチや量子論的な考え方の導入,界面準位などの欠陥や降伏などの劣化を加えて,エネルギーバンドを用いてより深い知識を習得する.したがって,電子工学の内容をしっかりと復習しておいてほしい.

【授業計画( 半導体工学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 半導体について
半導体特有の真性電導現象について,金属との比較を行いながらエネルギーバンド図を用いて解説する.また単結晶Siの作製方法として,チョクラルスキー法とフローティングゾーン法について解説する.
2 Si基板中でのキャリアの振る舞い
Si基板中を流れるキャリアが起こす,ドリフト電流,フォノン散乱,有効質量などについて解説する.
3 半導体のキャリア密度および質量作用の法則
フェルミ・ディラック分布関数と状態密度関数から半導体のキャリア密度を導出する.また,真性半導体において,フェルミ準位が禁制帯の中央に存在することについて解説する.また,質量作用の法則(pn積)について解説する.
4 不純物半導体のバンド構造とフェルミ準位の温度依存性
不純物半導体においてフェルミ準位が温度に依存することについて解説する.
5 pn接合の作製方法
基本特性の復習と,pn接合の作製方法について解説する.
6 pn接合のI-V特性
3年電子工学とは異なり,pn接合ダイオードのI-V特性を定量的にキャリア密度の式を用いて解説する.
7 第1回小テスト課題
1〜6回目までの授業内容が理解できているかを小テスト課題で評価する.
8 第1回小テストの解説及び復習
試験問題の解答と解説,採点基準の説明,試験範囲の復習を行う.
9 pn接合の降伏機構
なだれ降伏とZener降伏について説明し,それぞれにおける降伏電圧の温度依存性の違いについて,メカニズムも含めて解説する.
10 半導体の基本方程式
ポアソン方程式ならびに連続方程式について解説する.
11 トンネルダイオードとI-V特性
まず,トンネル効果とトンネルダイオードのI-V特性について説明し,そのメカニズムをエネルギーバンド図を用いて解説する.
12 バイポーラトランジスタの作製方法
バイポーラトランジスタの作製方法を詳細に解説する.
13 金属−半導体接触I
電子親和力と仕事関数について説明した後,ショットキー接触とショットキーバリアダイオードについて解説する.
14 金属−半導体接触II
オーミック接触について解説する.また,ショットキー接触の界面において,オーミック接触を実現する方法について解説する.
15 中間試験
9〜14回目までの授業内容が理解できているかを評価する
16 中間試験の解答と解説
試験問題の解答と解説,採点基準の説明,試験範囲の復習を行う.
17 MOS構造
理想MOS構造における蓄積,空乏,反転のそれぞれの状態について解説する.
18 MOS構造のC-V特性
MOS構造におけるC-V特性の測定方法と測定する意義,また,C-V特性の周波数依存性について解説する.
19 実際のMOS構造I
金属と半導体の間で仕事関数に差が生じている場合に,C-V特性に与える影響について解説する.
20 実際のMOS構造II
界面準位がMOS構造の特性に与える影響と界面準位の軽減方法について解説する.
21 実際のMOS構造III
酸化膜内に固定電荷,捕獲電荷,可動イオンが存在した場合にMOS構造の特性に及ぼす影響について解説する.また,クリーンルームの概要を説明する.
22 第2回小テスト課題
17〜21回目までの授業内容が理解できているかを小テスト課題で評価する.
23 第2回小テストの解説及び復習
試験問題の解答と解説,採点基準の説明,試験範囲の復習を行う.
24 MOSFETの作製方法
MOSFETの作製プロセスと相互コンダクタンス特性の向上について解説する.
25 集積回路
集積回路の分類と集積化の意義,ムーアの法則等について解説する.
26 MOSFETの基本動作
入力特性,出力特性やエンハンスメント型,ディプレッション型について説明する.
27 様々なFET
接合型電界効果トランジスタやMESFETについて解説する.
28 パワー半導体デバイス
サイリスタやIGBTについて解説する.
29 半導体メモリ
DRAMやフラッシュメモリの原理について説明する.
30 定期試験の解答と解説
試験問題の解答と解説,採点基準の説明,試験範囲の復習を行う.


本科目の修得には,60 時間の授業の受講と 30 時間の自己学習が必要である. 前期中間試験および前期定期試験を実施する.