【 2020 年度 授業概要】
科   目 環境化学 ( Environmental Chemistry )
担当教員 濱田 守彦 助教
対象学年等 応用化学科・5年・後期・選択・2単位 ( 学修単位II )
学習・教育
目標
A4-C2(50%), D1(50%)
授業の概要
と方針
工業技術の進歩は我々に多大な貢献をもたらしてきた一方で,地球を構成している物質系のバランスを崩す結果ともなった.その影響は地域的のみならず地球規模へと拡大している.また人為的合成や非意図的に生成した化学物質の環境に対する影響も問題となっている.本講義では,これら環境問題の実態とその影響について正しく理解することにより,原因と対策について考察する.また環境保全に対する技術者の任務を考える.



1 【D1】 過去に発生した公害問題を学び,そのもたらした影響について理解する.
2 【A4-C2】 わが国における水環境中の汚染物質濃度の現状について理解する.水質汚濁の発生要因,対策法について理解する.
3 【A4-C2】 わが国における大気環境中の汚染物質濃度の現状について,また汚染物質の発生原因,対策法とその効果について理解する.
4 【A4-C2】 水質・大気環境基準,排出基準について理解する.汚染物質排出規制値の考え方について理解する.
5 【A4-C2】 光化学スモッグ・二次生成粒子状物質の生成要因と実態について理解する.広域移流拡散により環境影響を及ぼすこれら汚染物質の影響について理解する.
6 【A4-C2】 地球規模で環境影響を及ぼす地球温暖化物質の排出抑制とエコロジー社会の重要性に関して理解する.排出抑制による地球温暖化対策と期待される効果について理解する.
7 【A4-C2】 地球規模で環境影響を及ぼすオゾン層破壊物質による破壊メカニズムと対策について理解する.酸性降下物の生成要因と影響について理解する.
8 【A4-C2】 大量生産された有害化学物質の環境・健康影響について理解する.非意図的生成化学物質であるDXN類の発生要因,曝露量の現状と排出対策効果について理解する.
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1 過去に発生した四大公害事件の原因とそのもたらした影響について理解し説明できるかを中間試験およびレポートで評価する.
2 わが国における水環境中の汚染物質濃度の現状について,また水質汚濁発生要因,対策法について理解し説明できるかを中間試験およびレポートで評価する.
3 わが国における大気環境中汚染物質濃度の現状と環境基準達成状況の変遷,汚染物質の排出原因と対策効果について理解し説明できるかを中間試験およびレポートで評価する.
4 水質・大気環境基準について,また排水および大気汚染物質排出規制基準設定の考え方について理解し説明できるかを中間試験およびレポートで評価する.
5 光化学スモッグと二次生成粒子状物質の生成機構と実態について,また広域移流拡散による汚染物質の飛来影響と健康影響について理解し説明できるかを中間試験およびレポートで評価する.
6 地球規模で環境影響を及ぼす地球温暖化物質排出抑制とエコロジー社会の重要性について,また排出抑制対策により期待される効果について理解し説明できるかを定期試験およびレポートで評価する.
7 オゾン層破壊のメカニズムと紫外線の生態影響について,また酸性降下物の生成要因と影響,降水成分とpHの関係について理解し説明できるかを定期試験およびレポートで評価する.
8 大量生産された有害化学物質の環境・健康影響について,また非意図的生成物質であるDXN類の発生要因,曝露量と対策効果について理解し説明できるかを定期試験およびレポートで評価する.
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成績は,試験80% レポート20% として評価する.なお試験成績は中間試験と定期試験の平均点とする.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「環境工学」:山崎慎一 著(実教出版)     
参考書 「環境科学 改訂版」:金原粲 監修(実教出版)  
「基礎から実践までの環境化学」:西川治光,高原康光 他共著(三共出版)
「環境化学」:坂田昌弘,磯部友彦,梶井克純 他共著(講談社) 
「新環境と生命 改訂版」:及川紀久雄 編著(三共出版)
「令和2年度版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」:環境省
関連科目 分析化学I・II,無機化学I・II・III,安全管理学,応用化学実験I・II・III
履修上の
注意事項
分析化学I・II,無機化学I・II・III,安全管理学,応用化学実験I・II・IIIを十分学習し,理解しておくことが望ましい.また現在起きている環境問題に関するメディア情報に対して常に関心を持つこと.

【授業計画( 環境化学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 概要・わが国における環境問題の歴史(1)(大気汚染・水質汚濁)
環境化学の全般的な概要について説明する.人間と環境との関わり合いについて述べる.わが国で発生した公害問題について知る.公害事件の発生原因,そのもたらした影響と対策の歴史について解説する.
2 わが国における環境問題の歴史(2)(大気汚染・水質汚濁)
わが国で発生した公害事件(四大公害病)について文献等で調べた内容を各自発表する.発表に対して解説を加える.公害事件の発生原因,そのもたらした影響について学ぶ.公害対策法について説明する.
3 水質汚濁の環境化学(1)(環境基準と排出基準)
人の健康と生活環境の保全にかかる環境基準について解説する.また事業所からの排出基準について説明する.水質の生活環境に関わる代表的な指標であるDO,COD測定法について演習を交えて説明する.
4 水質汚濁の環境化学(2)(河川・湖沼・海域の汚染)
水質汚濁物質の発生源と,河川(湖沼),海域(閉鎖性海域)の汚染や富栄養化について説明する.わが国における公共用水域水質の現状と浄化対策,淡水の活用について解説する.
5 水質汚濁の環境化学(3)(地下水の汚染防止・水質汚濁に関する演習)
地下水は貴重な淡水資源であること,近年電子機器産業の著しい発展に伴う有機ハロゲン物質等による地下水汚染の危険性とその影響について解説する.
6 大気環境(1)(大気汚染物質・日本の大気汚染現況)
大気汚染物質として問題となる典型的化学物質について概要を説明する.大気環境基準について解説する.日本における大気汚染物質濃度の現状と大気環境基準値とを対比し,汚染要因を理解することにより今後の大気保全対策のあり方について解説する.
7 大気環境(2)(光化学スモッグ・浮遊粒子状物質-SPM・微小粒子状物質-PM2.5・越境汚染)
光化学オキシダントの生成メカニズムについて説明する.近年PM2.5に代表される微小粒子状物質,浮遊粒子状物質,酸性降下物などが問題となっている.越境汚染およびわが国における汚染質の排出・生成要因について解説する.汚染質濃度の実態とその健康影響について解説する.
8 中間試験
1回目〜7回目までの範囲で中間試験を実施する.
9 中間試験の解説・湿性降下物(酸性雨)の化学(1)
中間試験の解説を行う.酸性雨について説明する.日本における酸性雨の現状を知る.北米,北欧などで顕在化している酸性雨(酸性降下物)による被害と環境影響について解説する.
10 湿性降下物(酸性雨)の化学(2)
降水中に溶存するイオンの種類について学ぶ.イオンバランスとpHの関連について演習を交えながら解説する.
11 地球環境の化学(1)(地球温暖化)
二酸化炭素等の地球温暖化ガスによる「温暖化」のメカニズムとエコロジー効果について解説する.二酸化炭素以外の地球温暖化ガスの影響について説明すると共に環境濃度の推移について講述する.
12 地球環境の化学(2)(地球温暖化)
地球温暖化ガスの影響について,対策シナリオと想定される気象変動に対する影響予測について,シミュレーションモデルをもとに解説する.
13 地球規模での汚染(オゾン層の破壊と紫外線による影響)
地球成層圏でのオゾン層の役割およびオゾン層破壊による紫外線の影響と障害について解説する.オゾン層破壊物質対策効果について説明する.
14 有害大気汚染物質とダイオキシン問題
わが国において毒性や排出量を考慮して指定された有害大気汚染物質リストの中で,特に緊急性を有する優先取組物質について解説する.また非意図的生成化学物質であり,毒性の強いダイオキシン類について概要を説明する.発生要因と対策および対策効果について解説する.
15 定期試験の解説・まとめ
定期試験の解説・化学物質の環境影響についてまとめる.環境問題を克服していくための技術者の任務について考える.


本科目の修得には,30 時間の授業の受講と 60 時間の自己学習が必要である. 後期中間試験および後期定期試験を実施する.