【 2018 年度 授業概要】
科   目 物理化学I ( Physical Chemistry I )
担当教員 渡辺 昭敬 教授
対象学年等 応用化学科・3年・通年・必修・2単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
A4-C3(100%)
授業の概要
と方針
化学の基礎となる物理化学より,物質の状態や化学変化に関わる熱力学と,その応用として平衡論について講義する.熱力学では,物理量と単位,気体の状態方程式,熱力学(第一,第二,第三法則)とその化学への応用(化学熱力学)について解説する.平衡論については相平衡,化学平衡の分野でその基礎と応用について理解させる.さらに電気化学,化学反応論についてもその基礎的事項を学ぶ.



1 【A4-C3】 気体の状態方程式および気体分子運動論について理解する.
2 【A4-C3】 熱力学の各種法則を理解し,反応におけるエンタルピーおよびエントロピー変化を理解する.
3 【A4-C3】 ギブズエネルギーの考え方をもとに,純物質および混合物の相平衡の熱力学的記述を理解する.
4 【A4-C3】 化学平衡について熱力学的観点からの原理を理解する.またその応用として種々の平衡(相平衡,プロトン移動,塩,溶解度)について理解する.
5 【A4-C3】 電池の全反応と半反応を理解する.
6 【A4-C3】 反応速度論について理解する.特に,速度論の考え方,反応速度の温度依存性,速度式の種々の表し方を理解する.
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1 気体の状態方程式(完全気体と実在気体の違い)と気体分子運動論を理解しているかをレポート並びに前期中間試験で評価する.
2 エンタルピー,エントロピー,ギブズエネルギーについて理解し,反応における各量の変化が求められるかをレポート並びに前期中間,前期定期試験で評価する.
3 各状態(固−液−気体)間の相図を理解しているか,純物質および混合物の相変化を熱力学と対応して理解しているかを前期定期試験ならびに後期中間試験で評価する.
4 ギブズエネルギーと化学平衡の関連,ファントホッフの式など平衡の圧力,温度依存性を理解しているか後期中間試験およびレポートで評価する.
5 化学電池およびその電極反応,電極反応の平衡論および溶液中のイオンの挙動を理解しているか後期定期試験およびレポートで評価する.
6 速度定数の概念,反応方程式とその積分解,アレニウスの速度式について理解しているか後期定期試験およびレポートで評価する.
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成績は,試験90% レポート10% として評価する.各期の中間・定期試験の平均を試験成績とする.前・後期とも試験成績90%,レポート10%で評価し,総合成績は各期の学業成績の平均で算出する.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「物理化学要論」P. W. Atkins著・千原 秀昭・稲葉 章 訳 (東京化学同人)
参考書 「アトキンス物理化学 第10版(上・下)」:P. W. Atkins(東京化学同人)
「アトキンス物理化学要論問題の解き方(第6版/英語版)」:C. A. Trapp, M. P. Cady,Jr. (東京化学同人)
「たのしい物理化学1化学熱力学・反応速度論」:加納 健司,山本 雅博(講談社)
「バーロー物理化学 第6版(上・下)」:G. M. Barrow (東京化学同人)
「ムーア物理化学 第4版(上・下)」:W. J. Moore (東京化学同人)
関連科目 一般科目の数学・物理学・化学・C3化学工学
履修上の
注意事項
物理化学は,物理の視点から化学の基本原理を考察する教科であるので,当然,物理学とその基礎となる数学に精通していることが望ましい.1〜3年までの物理学や数学のみならず,同時進行で学習する化学工学の内容も必要となってくる.

【授業計画( 物理化学I )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 物理化学はどんな学問か(物理化学量とSI単位 数値計算方法 )
物理化学の学習意義について説明する.また,各物理量の定義について学び,SI単位系とそれ以外の系との変換や実際の数値を伴った単位換算について学習する.
2 気体の状態方程式を解く(完全気体)
完全気体の性質について理解し,また状態方程式についての理解を深める. ドルトンの分圧の法則,モル分率についても学ぶ.
3 気体分子運動論 その1
気体分子運動論の考え方からも,完全気体の状態方程式が導き出せることを学び,統計的手法の考え方を学ぶ.
4 気体分子運動論 その2
平均自由行程並びに衝突頻度について学ぶ.
5 気体の状態方程式を解く(実在気体)
完全気体と実在気体の違いについて理解する.また,ビリアル方程式とvan der Waals式について理解する.
6 熱力学 その1
熱力学の考え方を学ぶ.第一法則を主体とし,仕事と熱の関係,比熱,内部エネルギ−について学ぶ.
7 熱力学 その2
エンタルピー,熱化学方程式について学ぶ.
8 中間試験
1〜7週の内容に関する試験を行う.
9 中間試験解答・熱力学 その3
中間試験の解答を黒板を用いて説明し,注意点を指摘する.熱力学第二,第三法則を学び,そこから得られるギブズエネルギーの考え方について学ぶ.
10 純物質の相平衡(相転移の熱力学)
相変化とギブズエネルギーとの関係を学習する.
11 純物質の相平衡(相律,相図)
相境界,相図について理解する.また,代表的な物質の相図を学習する.
12 混合物の性質(熱力学的記述)
非電解質溶液の混合物の性質を学習する.モル濃度,質量モル濃度,モル分率を用いて,ラウールの法則,ヘンリーの法則を学習し,例題を解いて理解する.
13 混合物の性質(束一的性質)
沸点上昇,凝固点降下,浸透圧など存在する溶質粒子の数に依存するだけの束一的性質について学習する.
14 混合物の性質(混合物の相図)
種々の混合物の相図について理解する.
15 定期試験解答・相平衡と熱力学
後期定期試験の解答を黒板を用いて解説し,注意点を指摘する.混合物の相平衡について,ギブズエネルギーの関係を含めて2週にわたり学習する.
16 相平衡と熱力学
混合物の相平衡について,ギブズエネルギーとの関係を含めて2週にわたり学習する.
17 化学平衡の原理
化学平衡を反応ギブスエネルギーを用いて説明することによって熱力学的な裏づけを2週にわたり学習する.
18 化学平衡の原理
化学平衡を反応ギブスエネルギーを用いて説明することによって熱力学的な裏づけを2週にわたり学習する.
19 化学平衡の移動とその熱力学的考察
平衡の移動に対する触媒の存在,温度の効果,圧縮の効果を学習する.併せてそれらと熱力学との関係についても学習する.
20 化学平衡の応用(プロトン移動平衡)
酸と塩基に関するブレンステッド-ロウリ−の理論で,酸はプロトン供与体で,塩基はプロトン受容体であることを理解し,プロトン化率を用いて弱酸,弱塩基の化学平衡に関する計算を行う.
21 化学平衡の応用(塩の水溶液,溶解度平衡)
酸−塩基滴定に関するヘンダーソン-ハッセルバルクの式から酸,塩基の濃度とpHとの関係式が導かれることを理解し,緩衝作用,溶解度定数,共通イオン効果について学習する.
22 電気化学(イオンの移動)
電解質溶液中におけるイオンの電気伝導率,イオン移動度など,水溶液中のイオンの移動と電荷の移動について学習する.
23 中間試験
16〜21週の内容について試験を行う.
24 中間試験解答・電気化学(半反応と電極,電池反応,電極電位)
中間試験の解答を黒板を用いて説明し,注意点を指摘する.種々の電池の電池反応とその半反応を学習する
25 電気化学(標準電位)
標準電位は標準水素電極の電位を基準に表されている.ネルンストの式について学習し,標準電位の考え方を学習する.
26 電気化学(熱力学関数の決定)
標準電極電位と標準反応ギブスエネルギーとの関係から反応式から電池の電圧が計算できることを学習する.
27 反応速度論:概要
化学反応速度論の基本的事項について解説する.反応速度の概念,反応速度式とその解,実験的手法などについて学習する.
28 反応速度式
反応速度式の微分形,積分形について学習する
29 反応速度式の温度依存性
アレニウスの関係式について解説する.反応速度定数と温度の間にアレニウスの関係式があること,アレニウスの関係式が反応の活性化エネルギーと頻度因子といった要素で決まることを学習する.
30 定期試験解答・演習
後期定期試験の解答を黒板を用いて解説し,注意点を指摘する.あわせて講義全体にわたって必要に応じた演習を実施する.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.