【 2016 年度 授業概要】
科   目 環境化学 ( Environmental Chemistry )
担当教員 根津 豊彦 教授
対象学年等 応用化学科・5年・前期・選択・2単位 ( 学修単位II )
学習・教育
目標
A4-C2(50%), D1(50%)
授業の概要
と方針
工業技術の進歩は我々に多大な貢献をもたらしてきた一方で,地球を構成している物質系のバランスを崩す結果ともなった.その影響は地域的のみならず地球規模へと拡大している.また合成や非意図的に生成した化学物質の環境に対する影響も問題となっている.本講義では,これら環境問題の実態とその影響について正しく理解することにより,原因と対策について考察する.また環境保全に対する技術者の任務を考える.



1 【D1】 過去に発生した公害問題を学びそのもたらした影響について理解し説明できる.
2 【A4-C2】 わが国における水環境中の汚染物質濃度の現状と水質汚濁発生要因,対策について理解する,環境基準,排水基準について理解し説明できる.
3 【A4-C2】 わが国における大気環境中汚染物質濃度の現状と発生要因,対策について理解し説明できる.
4 【A4-C2】 大気環境基準,排出基準について理解する.汚染物質排出規制値および排出量が算出できる.
5 【A4-C2】 光化学スモッグ・粒子状物質の生成要因と実態について理解し説明できる.広域移流拡散により環境影響を及ぼすこれら汚染物質の影響について理解し説明できる.
6 【A4-C2】 地球規模で環境影響を及ぼす地球温暖化物質の排出抑制とエコロジー社会の重要性に関して理解し説明できる.排出抑制による地球温暖化対策効果について理解し説明できる.
7 【A4-C2】 地球規模で環境影響を及ぼすオゾン層破壊物質のメカニズムと対策について理解し説明できる.酸性降下物の生成要因と影響について理解し説明できる.
8 【A4-C2】 合成化学物質の環境影響について理解し説明できる.非意図的生成化学物質であるダイオキシン類の発生要因,濃度表示方法,曝露量の現状と排出対策効果について理解し説明できる.
9 【D1】 環境保全に取り組むために我々技術者が取り組むべき任務について考え,まとめることができる.
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1 過去に発生した四大公害問題の原因とそのもたらした影響についての理解度を,中間試験およびレポートで評価する.
2 わが国における水環境中の汚染物質濃度の現状と発生要因,対策についての理解.環境基準,排水基準についての理解度を中間試験およびレポートで評価する.
3 わが国における大気環境中汚染物質濃度の現状と環境基準値とを比較し達成状況の変遷について説明できるか.汚染物質の発生要因,対策とその効果についての理解度を中間試験およびレポートで評価する.
4 大気汚染物質排出基準について理解する.大気汚染防止法で定められている総量規制基準値制定の背景と汚染物質排出規制値および排出量が算出できるかを中間試験およびレポートで評価する.
5 光化学スモッグと粒子状物質の生成機構および広域移流拡散により環境影響を及ぼすこれら汚染物質のわが国への飛来影響と健康影響についての理解度を中間試験およびレポートで評価する.
6 地球規模で環境影響を及ぼす地球温暖化物質の排出抑制とエコロジー社会の重要性.排出抑制による地球温暖化対策効果に関するIPCC報告概要についての理解度を定期試験およびレポートで評価する.
7 オゾン層破壊のメカニズムと対策効果および紫外線の生態影響についての理解.酸性降下物の生成要因と影響,イオンバランスと降水pHの関係について理解し,計算できるかを定期試験およびレポートで評価する.
8 合成化学物質の環境影響についての理解および.非意図的生成化学物質であるダイオキシン類の発生要因,濃度表示方法,曝露量の現状と排出対策効果についての理解度を定期試験およびレポートで評価する.
9 技術者としてまた環境の中の一員として,環境保全に対する自分たちの役割について考え,まとめることができるかをレポートおよび定期試験で評価する.
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成績は,試験80% レポート20% として評価する.試験成績は中間試験と定期試験計2回の平均点に0.8を乗じたものとする.レポート点は,出題したレポート平均点(100点満点)に0.2を乗じたものとする.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「環境科学」:金原粲 監修(実教出版)     
「プリント」
参考書 環境省,気象庁等のWebなどを参考とする  
「基礎から実践までの環境化学」:西川治光,高原康光 他共著(三共出版)
「環境化学」:坂田昌弘,磯部友彦,梶井克純 他共著(講談社) 
「平成27年度版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」:環境省
関連科目 分析化学I・II,無機化学I・II,有機化学I・II,応用無機化学II,応用有機化学I,応用化学実験I・II
履修上の
注意事項
分析化学I・II,無機化学I・II,有機化学I,II,応用有機化学I,応用化学実験I・IIをしっかり履修しておくことが望ましい.現在起きている環境問題に関するメディア情報に対して常に関心を持つと共に過去に起きた様々な環境問題についても自分自身で調べながら受講すること.

【授業計画( 環境化学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 概要・わが国における環境問題の歴史1(大気汚染・水質汚染)
環境化学の全般的な概要について説明する.人間と環境との関わり合いについて述べる.わが国で発生した公害問題について知る.公害事件の発生原因,そのもたらした影響について学ぶ.
2 わが国における環境問題の歴史2(大気汚染・水質汚染)
わが国で発生した公害問題(四大公害病)について文献等で調べた内容を各自発表すると共に解説を加える.公害事件の発生原因,そのもたらした影響について学ぶ.水俣病に関するドキュメント映像を用い,公害問題の及ぼした影響について考えをまとめる.
3 水質汚濁の環境化学1(環境基準と排出基準)
人の健康と生活環境の保全にかかる環境基準が定められていることを学ぶ.また事業所からの排出基準について説明する.水質の生活環境に関わる代表的な指標であるDO,COD測定法について演習を交えて説明する.化学実験室における化学物質管理について学ぶ.
4 水質汚濁の環境化学2(河川・湖沼・海域の汚染)
水質汚濁の発生源と,河川(湖沼),海域(閉鎖性海域)の汚染や富栄養化について学ぶ.わが国における公共用水域水質の現状と対策,淡水の活用について講義する.
5 水質汚濁の環境化学3(地下水の汚染防止・水質汚濁に関する演習)
地下水は貴重な淡水資源であること.近年電子機器産業の著しい発展に伴う有機ハロゲン等による地下水汚染の危険性とその影響について学ぶ.工場・事業場から排出される汚染物質量が水質汚染に及ぼす影響について演習を交えながら学習する.
6 大気環境1(大気汚染物質・日本の大気汚染の現状)
大気汚染物質として問題となる典型的化学物質について述べる.大気環境基準が定められていることについて学ぶ.日本における大気汚染物質濃度の現状と大気環境基準値との対比と発生原因を理解することにより今後の大気保全のあり方について学ぶ.大気汚染物質の排出基準について演習を交えながら解説する.
7 大気環境2(光化学スモッグ・浮遊粒子状物質-SPM・微小粒子状物質-PM2.5・越境汚染)
光化学オキシダントの生成メカニズムについて解説する.近年PM2.5に代表される微小粒子状物質,浮遊粒子状物質,酸性降下物などの越境汚染が問題となっている,この影響およびわが国での生成要因について講義する.汚染質濃度の実態とその健康影響について解説する.
8 中間試験
1〜7回までの範囲で中間試験を実施する.
9 中間試験の解説・酸性雨の化学1
中間試験の解説を行う.酸性雨の定義について解説する.日本における酸性雨の現状を知る.北米,北欧などで顕在化している酸性雨(酸性降下物)の被害と環境影響について学ぶ.
10 酸性雨の化学2
降水中に溶存するイオンの種類について学ぶ.イオンバランスとpHの関連について演習を交えながら講義する.
11 地球環境の化学1(地球温暖化とIPCCの取り組み)
二酸化炭素等の地球温暖化ガスによる「温暖化」のメカニズムとエコロジー効果についてIPCC第5・4次報告書を元に解説する.二酸化炭素以外の地球温暖化ガスの影響について解説すると共に環境濃度推移について説明する.
12 地球環境の化学2(地球温暖化)
地球温暖化の影響について世界に各地で啓蒙活動を実施しその功績に対してノーベル賞を授与されたアル・ゴア元アメリカ合衆国副大統領の作製したビデオ教材を用いより理解を深める.
13 地球規模での汚染(オゾン層の破壊と紫外線による悪影響)
地球成層圏でのオゾン層の役割およびオゾン層破壊による紫外線の影響と障害について説明する.
14 有害大気汚染物質とダイオキシン問題1
わが国において毒性や排出量を考慮して改善策を講ずべき化学物質リストが掲げられている.中でも特に緊急性を有する優先取組物質について解説する.また非意図的生成化学物質であり,非常に毒性の強いダイオキシン類について濃度表記方法について説明する.発生要因と対策およびその効果について解説する.
15 ダイオキシン問題2・環境問題を考える総括とワークショップ
ダイオキシン類対策効果と曝露量の推定について講義する.エコロジーの未来と環境問題を克服していくための展望を検討し,我々技術者の任務を考える.本講義の総括をワークショップ形式で行う.


本科目の修得には,30 時間の授業の受講と 60 時間の自己学習が必要である. 前期中間試験および前期定期試験を実施する.本講義ではレポートを課す.