2016 年度無機化学II シラバス

【 2016 年度授業概要】
科　　　目			無機化学II ( Inorganic Chemistry II )
担当教員			(前期)安田佳祐講師，(後期)宮下芳太郎教授
対象学年等			応用化学科・3年・通年・必修・2単位 ( 学修単位I )
学習・教育目標			A4-C2(100%)
授業の概要と方針			2年生で学習しなかった典型元素および遷移元素の各論を学ぶとともに，金属錯体の構造と物性との関係を学ぶ．また，放射化学や生物無機化学について学習する．
到達目標		1	【A4-C2】 p-，d-およびf-ブロック元素の単体および化合物の名称や製法を理解し，種々の物質との反応を化学反応式で示せる．
		2	【A4-C2】 p-，d-およびf-ブロック元素の単体および化合物の性質を電子配置と関連づけて説明できる．
		3	【A4-C2】酸化数について理解し，酸化還元反応式をつくることができる．
		4	【A4-C2】原子核反応の基礎と応用について理解し，説明できる．
		5	【A4-C2】分子の対称性や結晶系について理解し，説明できる．
		6	【A4-C2】金属錯体の命名法，異性現象，電子構造および反応性について理解し，説明できる．
		7	【A4-C2】生体内における金属元素の役割や金属を含む生体分子の機能について理解し，説明できる．
		8
		9
		10
評価方法と基準	到達目標毎	1	p-，d-およびf-ブロック元素の単体および化合物の名称や製法を理解し，種々の物質との反応を化学反応式で示せるかを，前期中間・定期試験，小テストおよびレポートで評価する．
		2	p-，d-およびf-ブロック元素の単体および化合物の性質を電子配置と関連づけて説明できるかを，前期中間・定期試験，小テストおよびレポートで評価する．
		3	酸化数について理解し，酸化還元反応式をつくることができるかを，前期中間・定期試験，小テストで評価する．
		4	原子核反応の基礎と応用について理解し，説明できるかを，後期中間試験，小テストおよびレポートで評価する．
		5	分子の対称性や結晶系について理解し，説明できるかを，後期中間試験，小テストおよびレポートで評価する．
		6	金属錯体の命名法，異性現象，電子構造および反応性について理解し，説明できるかを，後期中間・定期試験，小テストおよびレポートで評価する．
		7	生体内における金属元素の役割や金属を含む生体分子の機能について理解し，説明できるかを，後期定期試験，小テストおよびレポートで評価する．
		8
		9
		10
	総合評価		成績は，試験80%　レポート10%　小テスト10%　として評価する．前期成績は到達目標1～3について，後期成績は到達目標4～7について評価する．総合成績は前期成績と後期成績の平均点とする．100点満点で60点以上を合格とする．
テキスト			「無機化学基礎から学ぶ元素の世界」：長尾宏隆・大山大共著（裳華房）「改訂版視覚でとらえるフォトサイエンス化学図録」：数研出版編集部編「化合物命名法－IUPAC勧告に準拠－」：日本化学会命名法専門委員会編（東京化学同人）
参考書			「演習形式で学ぶ　やさしい無機化学」：前野昌弘著（裳華房）「基礎無機化学」：下井守著（東京化学同人）「はじめて学ぶ大学の無機化学」：三吉克彦著（化学同人）「化学演習シリーズ7－無機化学演習　大学院入試問題を中心に」：中沢浩編著（東京化学同人）「元素はどうしてできたのか」：櫻井博儀著（PHP研究所）
関連科目			無機化学I（C2），分析化学I（C2），応用化学実験I（C2），分析化学II（C3），応用物理I（C3）
履修上の注意事項			上記の関連科目を十分学習し，理解しておくことが望ましい．

【授業計画（無機化学II ）】
週	上段：テーマ／下段：内容（目標、準備など）
1	13族元素(1)
1	ホウ素族元素（B，Al，Ga，In，Tl）の一般的性質やタリウムなどの高周期元素に見られる不活性電子対効果を説明する．さらに，ホウ素の電子配置に依存した欠電子結合についても説明する．
2	13族元素(2)
2	ホウ素化合物やアルミニウム化合物の性質や反応について説明する．さらに，工業的に重要なテルミット法，バイヤー法およびホール-エルー法についても説明する．
3	14族元素(1)
3	原子番号の増加とともに非金属から金属へと明確な変化がある炭素族元素（C，Si，Ge，Sn，Pb）について，電子構造の特徴と化学結合との関係を説明する．また，炭素とスズの同素体についても説明する．
4	14族元素(2)
4	炭素の主な化合物（一酸化炭素と二酸化炭素）の製法と性質・用途を説明する．また，ケイ素化合物の種類や性質などについても説明する．
5	15族元素
5	窒素酸化物，王水の性質および反応について説明する．また，代表的な窒素化合物であるアンモニアの実験室的および工業的製法について説明する．さらに，リンの同素体およびヒ素の化合物の性質についても説明する．
6	16族元素
6	硫黄の同素体について説明する．また，硫黄酸化物や硫化水素などの硫黄の化合物の種類や性質についても説明する．さらに，セレンの化合物の性質についても説明する．
7	17族元素
7	ハロゲン元素（F，Cl，Br，I，At）の一般的性質を説明した後，ハロゲン元素の単体の製法について酸化還元反応と関連づけて説明する．また，ハロゲン元素を含むオキソ酸やハロゲン化水素の製法や性質についても説明する．
8	中間試験
8	第1週から第7週までの内容で中間試験を行う．
9	中間試験の解答，18族元素
9	中間試験の解答を行う．貴ガス（He，Ne，Ar，Kr，Xe，Rn）の一般的性質をその電子配置から説明した後，貴ガス原子をとりこんだクラスレート化合物について述べる．
10	d-ブロック元素の性質
10	d-ブロック元素の原子半径，密度，および融点に関する周期性，酸化数，磁性について述べる．
11	4族元素，5族元素
11	チタン族元素（Ti，Zr，Hf）の一般的性質を説明した後，光触媒や圧電素子に用いられるチタン化合物の反応や性質について述べる．また，バナジウム族元素（V，Nb，Ta）の一般的性質を説明した後，ポリ酸を作りやすいバナジウム化合物の反応や性質についても述べる．
12	6族元素，7族元素
12	クロム族元素（Cr，Mo，W），およびマンガン族元素（Mn，Tc，Re）の一般的性質を説明した後，クロムやマンガン化合物の反応や性質，酸化数による色の変化，酸化還元反応式について述べる．
13	8族元素，9族元素，10族元素
13	鉄族元素（Fe，Co，Ni）の一般的性質を説明した後，鉄族元素の化合物の反応や性質について述べる．また，白金族元素（Ru，Rh，Pd，Os，Ir，Pt）の一般的性質や用途についても説明する．
14	11族元素，12族元素
14	銅族元素（Cu，Ag，Au）の一般的性質を説明した後，銅の電解精錬について述べるとともに，簡単な計算方法を説明する．亜鉛族元素（Zn，Cd，Hg）とそれらのもつ電子構造の特徴を説明した後，この族の元素の化学的性質の共通点と相違点についても説明する．
15	3族元素（希土類元素）
15	ランタノイド・ランタニド・希土類元素の違いを説明した後，希土類元素の一般的性質を述べる．また，原子番号の増加に伴い半径が減少するランタノイド収縮についても説明する．これまで学習した内容に関して総合的な演習を行う．
16	定期試験の解答，アクチノイドと超重元素
16	定期試験の解答を行う．アクチノイドの特徴や原子核反応による超重元素の合成について述べる．
17	放射壊変，放射化学の応用
17	放射壊変速度に関する基本的事項（壊変定数，半減期）を説明する．年代測定法や原子炉における制御方法について述べる．
18	分子の対称性
18	物体にある対称操作を施す場合，操作前と操作後で区別できないとき，その物体は対称性をもつ．対称軸の周りの回転や鏡面による反射をはじめとした分子に施される対称操作と対称要素について説明する．
19	対称性の応用と結晶系
19	分子軌道や分子振動，さらに，原子や分子が規則的に並ぶ結晶構造について，対称性の考え方を適用する．
20	金属錯体の概要
20	分子やイオン（配位子）が非共有電子対をもつ原子部分で金属イオンに配位結合した物質を錯体と呼ぶ．錯体の概要についてHSAB則と関連づけて説明する．
21	金属錯体の命名法
21	2005年のIUPAC勧告で改訂された金属錯体の命名法について説明するするとともに，種々の配位子を紹介する．
22	金属錯体の構造と異性
22	金属錯体特有の構造異性体および立体異性体（幾何異性体，鏡像異性体）について説明する．
23	中間試験
23	第16週から第22週までの内容で中間試験を行う．
24	中間試験の解答，結晶場理論の概要
24	中間試験の解答を行う．八面体型金属錯体について，結晶場理論の概要を述べる．
25	結晶場理論，分光化学系列
25	八面体型，平面四角形型，四面体型金属錯体の結晶場分裂について説明するとともに，配位子を結晶場分裂の大きさの順に並べた分光化学系列について述べる．
26	金属錯体の色と磁性，配位子場理論
26	金属錯体の特徴である色と磁性について，それらの要因を電子配置と関連づけて説明する．配位子場理論については簡潔に触れる．
27	金属錯体の反応
27	金属錯体の安定度や配位子置換反応について説明する．キレート効果やトランス効果について触れる．
28	有機金属化合物
28	金属錯体のうち，金属－炭素結合をもつものを特に有機金属化合物と呼んで区別することがある．代表的な有機金属化合物を紹介する．
29	生体内微量金属元素
29	生体内の重要な反応には，金属イオンや金属錯体が関与するものも数多く知られている．生体内における微量金属元素の役割について述べる．
30	生物無機化学
30	金属を含む生体分子の機能について紹介する．これまで学習した内容に関して総合的な演習を行う．
備考	前期，後期ともに中間試験および定期試験を実施する．