【 2016 年度 授業概要】
科   目 システム制御工学 ( Systems Control Engineering )
担当教員 笠井 正三郎 教授
対象学年等 電気電子工学専攻・1年・後期・選択・2単位
学習・教育
目標
A3(30%), A4-AE3(70%)
授業の概要
と方針
制御対象のモデル化,線形システム理論を基礎とし,ロバスト制御などの設計理論を学ぶ.また,シミュレーションソフトとしてMATLABかScilabを用いて,実際にシミュレーションを行い,制御設計の手法を習得する.



1 【A4-AE3】 動的線形システムを状態方程式・出力方程式の形で表現し,その構造的性質(可制御性,可観測性など)を解析できる.
2 【A4-AE3】 簡単な集中定数系の物理システムについてモデル化ができ,状態方程式,出力方程式の形に整理できる.
3 【A4-AE3】 ロバスト制御について,現代制御との違いを説明できる.
4 【A4-AE3】 代表的なロバスト制御であるH∞制御についてその特徴および構成を説明できる.
5 【A3】 シミュレーションソフト(MATLAB,Scilab等)により,モデルを表現し,可制御性・安定性などを評価し,システムの応答特性をシミュレーションできる.
6 【A3】 MATLABかScilabにより,H∞制御のコントローラを設計し,その効果をシミュレーションにより確認できる.
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1 簡単な線形システムを状態方程式・出力方程式の形で表現し,システムの性質を評価できるか,レポートにて評価する.
2 簡単なシステムを例として,制御モデルを導出できるか,レポートおよび定期試験にて評価する.
3 不確かさがある制御対象に対して,不確かさを考慮したモデルを表現できるか,定期試験にて評価する.
4 簡単な線形システムに対してH∞制御問題を構成出来るか,レポートおよび定期試験にて評価する.
5 簡単なシステムを例として制御モデルをMATLABかScilabで記述し,可制御性・安定性などを評価し,応答特性をシミュレーションできるか,レポートにて評価する.
6 簡単なシステムを例として,H∞制御のコントローラの設計およびその効果をMATLABかScilabによりシミュレーションで確認できるか,レポートおよび定期試験にて評価する.
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成績は,試験70% レポート30% として評価する.総合評価は100点満点とし,60点以上で合格とする.
テキスト 「線形ロバスト制御」:劉康志著(コロナ社)
参考書 「システム制御理論入門」:小郷寛・美多勉共著(実教出版)
「例題で学ぶ 現代制御の基礎」:鈴木隆・板宮敬悦共著(森北出版)
「MATLABによる制御系設計」:野波健蔵編著(東京電機大学出版局)
「ロバスト最適制御」:劉康志・羅正華共著(コロナ社)
関連科目 電子工学科から進んできた学生:制御工学I,制御工学II,ソフトウェア工学.電気工学科から進んできた学生:制御工学
履修上の
注意事項
システム制御工学では,制御工学の基礎的な知識と実際に制御設計を行うために簡単なコンピュータシミュレーションの知識を前提としている.

【授業計画( システム制御工学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 フィードバック制御とロバスト制御
フィードバック制御では,安定,正確,俊敏に制御を行うために制御対象の特性を知り,適切なフィードバックを行わなければならない.そのためにも正確なモデルが必要となるが,必ずしも正確なモデルが得られるとは限らない.モデルに不確かさがあっても安定性,制御性能を保証することを考えるのがロバスト制御である.
2 数学的な準備
制御性能,モデル化誤差などを評価するには,真値からのずれ量を定量的に評価する必要がある.大きさを測る尺度としてベクトルなどの大きさの概念を一般化したノルムがある(関数に対しても拡張されている).ここでは,ノルムの概念および具体的な計算方法について学び,数学的な基礎を身につける.
3 線形システムの表現と構造的性質
線形システムを対象とし,状態方程式,出力方程式によって表現する.これらの方程式より,線形システムの構造的性質(可制御性,可観測性,極,零点など)の分析方法を知る.
4 システムの安定性
制御するということを考えるうえで,まず前提となることが,「安定」である.ここでは,安定性についての定義を行い,線形システムが安定であるための条件および安定化法について講義する.
5 モデルの不確かさの表現
実際の制御対象では,特性のばらつきとか,モデルの複雑さなどにより,正確なモデルが得られないことが多い.これらを不確かさとして,陽の形でモデルに組み込むことを考える.
6 小ゲイン定理とロバスト安定
不確かさを含む制御対象に対して,安定な制御器を構成する上で,その安定性を保証する定理が小ゲイン定理である.この定理について説明し,不確かさがあるシステムでの安定性(ロバスト安定性)を保証する条件を導く.
7 一般化フィードバック構成と状態観測器(オブザーバ)を用いたフィードバック制御器
制御系を設計するときは,まず閉ループ系の内部安定性を確保することが必要となる.ここでは,一般化したフィードバック制御系の基本構成を紹介するとともに,全ての状態を観測することが出来ない場合には,状態観測器(オブザーバ)を用いて状態量を推定し,その推定量でフィードバック制御系を構成することができる.
8 安定化制御器のパラメータ化
従来の制御設計では,適当な条件の下で安定化できる制御器を求めていた.ここでは,制御対象に対して安定化可能な全ての制御器をパラメータを用いて陽に表現することを考える(点から集合への飛躍).全ての制御器が表現できれば,その中から最適なものを選ぶことが可能となってくる.
9 シミュレーションソフト(MATLAB,Scilab等)によるシミュレーション
制御系の設計を行うには,CADツールが不可欠である.制御系のCADツールとしてよく使われるものにMATLAB,Scilabなどがある.ここでは,状態方程式の記述から制御系設計,過渡応答特性を求めるまでの一連の流れを中心に,MATLABかScilabの使い方を実際に演習を行いながら説明する.
10 H2ノルムとH2制御問題
制御設計ではいろいろな仕様があり,それらを定量的に評価して制御器を設計する.重要な仕様の一つに過渡応答がある.信号のH2ノルムは過渡応答のよさを表す尺度にきわめて適しているといわれている.ここでは,H2ノルムおよび制御系の伝達関数をH2ノルムで評価する制御器設計法について述べる.
11 H∞制御1:制御問題とH∞ノルム
ロバスト制御条件の多くはH∞ノルムに関する不等式で与えられる.その関係とH∞ノルム不等式を満足する制御器の設計法が必要となってくる.ここでは,制御問題とH∞ノルムの関係について説明する.
12 H∞制御2:H∞制御問題
H∞制御問題を定義し,その解法について述べる.解法については,2つのRiccati方程式を解く方法とLMI(線形行列不等式)解法の2つの方法が有名であるが,ここでは2つのRiccati方程式を解く方法について,使い方を主として説明する.
13 H∞制御3:H∞制御の具体例
ロバスト制御の1つにH∞制御があり,この制御方法について考え方の概要と,使い方(解法)を例題中心に説明する.
14 MATLABかScilabを用いたロバスト制御のモデル化と制御器の設計
MATLABかScilabを用いて第13週に説明した例題を実行し,コントローラの特性,制御器を実装したときの応答特性を求め,使い方を習得する.
15 演習(MATLABかScilabによる制御器の設計とシミュレーション)
簡単なH∞制御の課題をMATLABかScilabを用いて解く.


本科目の修得には,30 時間の授業の受講と 60 時間の自己学習が必要である. 後期定期試験を実施する.