【 2015 年度 授業概要】
科   目 環境化学 ( Environmental Chemistry )
担当教員 熊谷 哲 非常勤講師
対象学年等 応用化学科・5年・前期・選択・2単位 ( 学修単位II )
学習・
教育目標
A4-C2(50%) D1(50%)
JABEE
基準1(1)
(b),(d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
工業技術の進歩は我々の生活に多大な貢献をもたらしてきたが,一方では地球を構成している物質系のバランスを崩す結果ともなった.その影響は地域的のみならず地球規模へと拡大している.また合成化学物質や非意図的に生成した化学物質による生態や健康に対する影響も重大な問題となっている.本講義では,これら環境問題についての実態とそれらのもたらす影響について正しく理解することにより,原因と対策について考察する.また環境保全に対する技術者の任務を考える.



1 【D1】 過去に発生した公害問題を学びそのもたらした影響について理解する.
2 【A4-C2】 わが国における大気環境中の汚染物質濃度の現状と発生要因・対策について理解する.
3 【A4-C2】 地球規模で環境影響を及ぼす代表的な汚染物質の汚染メカニズムについて理解する.
4 【A4-C2】 合成化学物質,非意図的生成化学物質による健康影響について理解する.
5 【A4-C2】 わが国における水環境中の汚染物質濃度の現状と発生要因,対策について理解する.環境基準,排水基準について理解する.
6 【D1】 環境に対する技術者の任務を考える.
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1 過去に発生した公害問題とそのもたらした影響についての理解度を,中間試験およびレポートで評価する.
2 わが国における大気中の汚染物質濃度の現状と環境基準値達成率,汚染物質の発生要因とその対策方法についての理解度をレポートおよび中間試験で評価する.
3 二酸化炭素等の地球温暖化物質による大気の温暖化機構,オゾン層破壊の機構,酸性降下物の生成機構等についての理解度を中間試験で評価する.
4 合成化学物質として毒性が懸念されている有機ハロゲン化合物等の排出実態,非意図的生成物質であるダイオキシン類の発生対策及び健康影響についての理解度を定期試験で評価する.
5 わが国における水質環境中の汚染物質濃度の現状と発生要因,対策について.公共用水域水質にかかる環境基準.排水基準についての理解度をレポート及び定期試験で評価する.
6 技術者としてまた環境の中の一員として,環境保全に対する自分たちの役割について考え,まとめることができるかを,レポート,定期試験により評価する.
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成績は,試験80% レポート20% として評価する.試験成績は中間試験と定期試験の平均点に0.8を乗じたものとする.レポート点は,出題したレポート点(20点満点)とする.両者の合計点を総合評価とし,100点満点で60点以上を合格点とする.
テキスト 「基礎から実践までの環境化学」 西川治光・高原康光・大場和生・小川信明共著 三共出版
「プリント」
参考書 環境省,気象庁等のWeb資料を参考とする.
関連科目 分析化学I・II,無機化学I・II,有機化学I・II,応用無機化学I,応用有機化学I
履修上の
注意事項
分析化学I・II,無機化学I・IIをしっかりと履修しておくことが望ましい.現在起きている環境問題に関するメディア情報に対して常に関心を持つと共に過去に起きた様々な環境問題についても自分自身で調べながら,受講すること.

【授業計画( 環境化学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 概要
環境化学の全般的な概要について説明する.人間と環境との関わりについて述べる.
2 わが国における環境問題の歴史(大気汚染,水質汚染)と法体系
我が国で発生した公害事件について知る.公害事件の発生原因,そのもたらした影響について学ぶ.
3 水質汚濁の環境化学1(環境基準と排出基準)
人の健康の保護と生活環境の保全にかかる環境基準が定められていることを学ぶ.また事業所からの排出基準値について説明する.DO,COD測定法について演習を交えて説明する.化学実験室における化学物質管理について学ぶ.
4 水質汚濁の環境化学2(河川・湖沼・海域の汚染)
水質汚濁の発生源と,河川(地下水),海域(閉鎖性海域)の汚染や富栄養化について学ぶ.
5 大気環境(大気汚染物質,日本の大気汚染の現状)
大気汚染物質として問題となる化学物質,大気環境基準,日本における大気汚染物質濃度の現状と推移について発生原因を理解することにより今後の大気環境保全のあり方について学ぶ.大気汚染物質の排出基準について解説する.
6 大気環境(光化学オキシダント,浮遊粒子状物質,越境汚染)
光化学オキシダントの生成メカニズムについて学習する.また浮遊粒子状物質や酸性降下物は越境汚染が問題となっている.これらの現況と影響について学ぶ.
7 酸性雨の化学(酸性雨,酸性霧の現状)と悪臭
酸性雨の定義を知り,日本における酸性雨の現状を知る.雨の中に溶存するイオンの種類について学ぶ.悪臭のウェーバー・フェフィナーの法則を学びと悪臭公害について知る.
8 中間試験
1〜7回までの範囲で中間試験を実施する.
9 中間試験の解説.微量汚染物質の化学(生活環境中の毒性化学物質,ダイオキシン類,PCB)
中間試験の解説を行う.生活環境中での様々な毒性化学物質について説明する.廃棄物焼却処理に伴うダイオキシン類の発生機構,排出抑制対策,毒性,環境中の存在状況について学習する.
10 地球環境の化学(地球温暖化とIPCCの取り組み)
二酸化炭素等の地球温暖化ガスによる「温暖化」のメカニズムとエコロジー効果についてIPCC第5次報告を基に学ぶ.二酸化炭素以外の地球温暖化ガスの環境濃度推移について学習する.
11 地球規模での汚染(オゾン層の破壊とハロゲン化物との関係)
地球の対流圏,成層圏の役割およびオゾン層破壊による紫外線の影響と障害について学習する.
12 廃棄物とリサイクル(一般廃棄物と産業廃棄物)
焼却・埋め立て処分場の問題一般廃棄物,産業廃棄物の処理方法及びそれらの資源を有効利用する方法について学ぶ..
13 エネルギー(日本のエネルギーと再生可能エネルギー・新エネルギー)
世界及び日本のエネルギー事情を説明し,太陽光発電等の再生可能エネルギーを説明する.またメタンハイドレートやシェールオイル・シェールガスについても利用を考える.
14 環境放射能と浄化技術
放射能と放射性物質について学び,放射線の人体影響や環境中に存在する放射性物質と放射線について簡単な実験を行うことで体験的に学習する.化学物質で汚染された環境を修復する技術について学び,新しい処理技術についても紹介する.
15 環境問題を考える,総括とワークショップ
エコロジーの未来と展望を検討し我々の任務を考える.本講義の総括をワークショップ形式で行う.


本科目の修得には,30 時間の授業の受講と 60 時間の自己学習が必要である. 前期中間試験および前期定期試験を実施する.本講義ではレポートを課す.