2013 年度世界史シラバス

【 2013 年度授業概要】
科　　　目			世界史 ( World History )
担当教員			町田吉隆教授
対象学年等			全学科・5年・通年・選択・2単位 ( 学修単位I )
学習・教育目標			C3(80%) D2(20%)
JABEE 基準1(1)			(a),(b)
授業の概要と方針			「人種的偏見とは何か」という問題について考える．対象とする地域はカリブ海周辺地域とカナダおよびアメリカ合州国南部とし，大航海時代から現代までを視野に入れて，テーマごとに通時的に扱う．したがって通史ではない．社会的・経済的・政治的・文化的に「アメリカ」世界が多様であることを理解することを目的とする．
到達目標		1	【C3】カリブ海周辺地域とカナダ，アメリカ合州国南部の歴史的環境を理解することができる．
		2	【C3】「アメリカ」世界の多様性を理解することができる．
		3	【C3】奴隷制度，近代世界システム，資本主義，文化変容などの概念装置を用いて，人種的偏見の歴史的形成過程を理解することができる．
		4	【D2】日本以外の世界の他地域について，その歴史的環境を理解した上で，当該地域における民族紛争，人種対立，異文化理解について具体的に問題点を説明することができる．
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評価方法と基準	到達目標毎	1	カリブ海周辺地域とカナダ，アメリカ合州国南部の歴史的環境について理解できているかどうかを，プリントと定期試験で評価する．
		2	「アメリカ」世界の多様性について理解できているかどうかを，プリントと定期試験で評価する．
		3	人種的偏見の歴史的形成過程を理解できているかどうかを，プリントと定期試験で評価する．
		4	受講者が選んだ世界の特定地域について，歴史的環境を理解した上で，当該地域における民族・人種問題，異文化理解について，正確にかつわかりやすく説明できるかどうかを，レポートで評価する．
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	総合評価		成績は，試験80%　レポート10%　プリント10%　として評価する．到達目標1，2，3については授業中に作業するプリントおよび前期・後期の定期試験の平均点で評価する．到達目標4についてはレポート（具体的な作成手順は指示する）で評価する．これらを総合して100点満点で60点以上を合格とする．
テキスト			ノートおよびプリント講義
参考書			E.ウィリアムズ『コロンブスからカストロまで』（岩波書店）新保満『人種的偏見』（岩波新書）ジェームス・M・バーダマン「黒人差別とアメリカ公民権運動―名もなき人々の戦いの記録 (集英社新書)
関連科目			歴史（1年生），歴史（2年生），日本史（5年生）
履修上の注意事項			その他の参考文献，視聴覚資料については授業中に紹介する．

【授業計画（世界史）】
回	上段：テーマ／下段：内容（目標、準備など）
1	導入
1	「アメリカ」世界の自然環境，歴史的環境について概観する．
2	大航海時代と近代世界システムの成立(1)
2	15世紀から16世紀におけるヨーロッパ世界の経済的・社会的・文化的な状況について学習する．
3	大航海時代と近代世界システムの成立(2)
3	コロンブスの「アメリカ」世界到達が与えた経済的・社会的・文化的な影響について学ぶ．
4	奴隷と砂糖(1)
4	奴隷と砂糖という世界商品を通じて，大西洋貿易の実態を学習する．
5	奴隷と砂糖(2)
5	近代世界システムに組み込まれた「奴隷制」を資本主義発達過程の一現象として学習する．
6	大西洋革命(1)
6	アメリカ独立革命を近代世界システムの観点から，経済的な側面に比重を置いて学習する．
7	大西洋革命(2)
7	ハイチ革命について理解し，市民革命としての大西洋革命の意味を考える．
8	アメリカ合州国の形成(1)
8	アメリカ合州国における民主主義政治の発展を，フェデラリストと州権主義の関係から考察し，その政治的なしくみを理解する．
9	アメリカ合州国の形成(2)
9	アメリカ合州国の領土的発展を，スペインやカナダ自治領などとの国際関係と先住民との関係から考察し，それがアメリカ人の歴史意識にどのように影響しているかを理解する．
10	南北戦争(1)
10	19世紀半ばのアメリカ合州国の経済的な状況を概観し，南北間の対立の過程を理解する．
11	南北戦争(2)
11	南北戦争の過程を概観し，それが19世紀後半のアメリカ合州国にもたらした影響を，主として社会的な側面から理解する．
12	「帝国」としてのアメリカ合州国(1)
12	19世紀後半のアメリカ合州国の歴史を概観し，世界最大の工業国へと発展する過程で生じた諸問題を，主として社会的な側面から理解する．
13	「帝国」としてのアメリカ合州国(2)
13	1920年代から40年代のアメリカ社会の様相を，音楽，映画などの資料を用いて，主として社会的な側面から理解する．
14	アメリカの時代(1)
14	二つの世界大戦を通じて超大国となった20世紀前半のアメリカ合州国の歴史を概観し，その社会に生じた変化について理解する．
15	アメリカの時代(2)
15	1950年代のアメリカ合州国について，主として社会的な側面から考察し，前期に学んだ知見を通して，「アメリカ的な生活様式」を支える歴史意識について理解する．
16	人種と民族(1)
16	人種とは何か．民族とは何か．いくつかの定義を紹介し，その定義を具体的に検証する．
17	人種と民族(2)
17	人種的偏見とは何か．そのタイプを理解し，歴史的な具体例について学ぶ．
18	人種間対立(1)
18	視聴覚教材を用いて，人種間の対立の実相を知る．
19	人種間対立(2)
19	人種間の摩擦，対立の背景となる社会的要因について考える．
20	鏡としてのカナダ(1)
20	カナダの歴史を概観し，アメリカ合州国との歴史との比較を通じて，地域主義，分離主義が国民国家としてのカナダを揺るがしている問題を考える．
21	鏡としてのカナダ(2)
21	視聴覚教材を用いて，地域主義，民主主義と人種的偏見が複雑に連関していることを学ぶ．
22	公民権運動とは何だったのか(1)
22	1950年代に「南部」から起こった公民権運動について概観し，その歴史的な意味について理解する．
23	公民権運動とは何だったのか(2)
23	視聴覚教材を用いて，公民権運動が闘った人種的偏見の構造について考える．
24	公民権運動とは何だったのか(3)
24	1960年代以降の公民権運動の発展と変容について学び，アメリカ合州国社会が現在も持つ課題について理解する．
25	人種的偏見とは何か(1)
25	カナダにおける日系カナダ人の事例を歴史的に概観し．人種的偏見の形成と変容について，具体的に理解する．
26	人種的偏見とは何か(2)
26	第二次世界大戦時における日本人とアメリカ人の人種的偏見について具体事例を取り上げ，その構造を理解する．
27	キング牧師とマルコムX(1)
27	M.L.キングとマルコムX，二人の足跡をたどり，両者の思想を比較して考察することを通じて，人種的偏見を克服する方法について考える．
28	キング牧師とマルコムX(2)
28	両者の思想的遍歴，その考え方の変容を手掛かりに，現在のアメリカ合州国社会の抱える課題について理解する．
29	ラス・カサスの思想(1)
29	大航海時代に生きたラス・カサスの思想的遍歴を通じて，人種的偏見の世界史的な意味について理解する．
30	ラス・カサスの思想(2)
30	一年間の講義を通じて得られた知見に基づき，人類の課題としての人種的偏見克服について考える．
備考	前期定期試験および後期定期試験を実施する．