【 2013 年度 授業概要】
科   目 材料化学 ( Material Chemistry )
担当教員 (前期)松本 久司 非常勤講師,(後期)根本 忠将 准教授
対象学年等 応用化学科・5年・通年・必修・2単位 ( 学修単位III )
学習・
教育目標
A2(100%)
JABEE
基準1(1)
(c),(d)1
授業の概要
と方針
前期に関しては,無機材料を中心に講義する.化学電池,陶磁器,ガラス,セメントなど種々の材料の合成法や性質,応用例を紹介して無機材料に対する理解を深める.学習内容の理論を深めるため,演習や具体的事例を取り上げて,内容を習得させる.後期に関しては,現在までの日本の化学工業の姿を紹介し,その基礎となる有機工業化学を歴史,製造法および製品の用途について解説する.製造法については,有機化学,高分子化学等の基礎化学をもとに解説し,これら科目の理解度を深める.



1 【A2】 化学結合の違いによる固体材料の電気的・物理的・化学的特性の違いが理解できる.
2 【A2】 無機材料の結晶構造の種類と代表的な化学物質が理解できる.
3 【A2】 化学物質の物理的・化学的性質の差を利用した高純度化法や単結晶の作製法が理解できる.
4 【A2】 セラミックス,ガラスの構造,物性と用途が理解できる.
5 【A2】 多結晶体,薄膜,超微粒子の作製法が理解できる.
6 【A2】 パルプから紙の製造工程の原理,さらには油脂からの各種製品の製造工程および製造原理が理解できる.
7 【A2】 各種ゴム化合物の化学構造と性質が理解できる.
8 【A2】 天然繊維の化学と工業が理解できる.
9 【A2】 化学繊維の性質が理解できる.ビスコースおよびキュプラレーヨン,アセテート,ポリアミド,ナイロン,ポリエステル繊維等の構造が記述でき,製造法および特徴が理解できる.
10 【A2】 高分子の物性が理解できる.重合反応,重合法が理解できる.各種プラスチックの構造が記述でき,特徴が理解できる.プラスチックの成型加工が理解できる.












1 イオン結合性の固体の結晶構造の分類法と表記方法,また陽イオン・陰イオンの半径比によって配位数がどのように異なるか理解でき,説明できるかを前期中間試験で評価する.
2 イオン結晶の代表的な結晶構造について,代表的な化合物の種類とそれらの性質が理解でき,説明できるか前期定期試験で評価する.
3 物質の高純度化法の種類と原理や単結晶の作製法とそれらの利用例について理解し,説明できるか前期試験成績で評価する.
4 伝統的セラミックス,ファインセラミックス,ガラスの構造的特徴と物性,および応用デバイスの作動原理が理解でき,説明できるか前期試験成績で評価する.関連するレポートも評価の対象とする.
5 最近著名である,薄膜や超微粒子の作製方法とその評価法について理解し,説明できるか前期試験成績とレポートで評価する.
6 パルプおよび紙の製造工程の概略および原理について文章を用いて,さらには油脂からの各種製品の製造工程および製造原理文章ならびに図を用いて説明できるか後期中間試験およびレポートで評価する.
7 各種ゴム化合物の化学構造と性質を関連付けながら文章を用いて説明できるか後期中間試験およびレポートで評価する.
8 天然繊維の化学と工業について,文章を用いて説明できるか後期定期試験およびレポートで評価する.
9 代表的な繊維の構造が記述でき,化学繊維の製造法および特徴について,さらに不織布,合成紙,合成皮革の違いについて,文章を用いて説明できるかどうか後期定期試験およびレポートで評価する.
10 高分子の物性を文章を用いて,重合反応をスキームを用いて,各種プラスチックの構造・特徴ならびに成型加工を関連付けながら文章を用いて説明できるか後期定期試験およびレポートで評価する.




成績は,試験90% レポート10% として評価する.試験成績は中間と定期の平均点とし,前期は,試験90%,レポート10%として総合評価する.後期は,試験90%,レポート10%として評価する.前期と後期の平均で総合評価とする.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「現代無機材料科学」:足立 吟也・南 努 編著 (化学同人)
「無機工業化学 第2版」:塩川 二朗 他 編集 (化学同人出版)
「有機工業化学 第6版」:小川 雅弥・阿河 利男・北尾 悌次郎・木下 雅悦 (朝倉書店)
参考書 「無機材料化学」 : 荒川剛ら著 (三共出版)
「固体化学の基礎と無機材料」 : 足立吟也ら著 (丸善)
「化学工業概論」 : 弘岡正明 編著 (丸善)
関連科目 物理化学I(C4),物理化学II(C5),無機化学I(C2),無機化学II(C3),有機化学I(C2),有機化学II(C3),有機合成化学(C4),高分子化学(C4)
履修上の
注意事項
無機化学,物理化学,量子化学の基礎的事項を理解していること,ならびに有機化学,高分子化学の内容を十分理解していることが望ましい.

【授業計画( 材料化学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 履修ガイダンスー材料化学とは?ー
材料とは,物質に異なる形態を付与することで生まれる.身の回りでは様々な「材料」が用いられているが,「材料」にはどのようなものがあるか.また,その働き,合成法に着目して,材料を構成する物質の化学的性質との関連を解説する.
2 無機固体の結晶構造(1)
結晶の構造は空間格子を用いて表す.空間格子には14種類あり,単位格子の軸と角度とに関する制限から立方晶,正方晶,斜方晶などに分類される.ミラー指数などこれらの表記方法,決定方法について解説する.
3 無機固体の結晶構造(2)
結晶の構造は空間格子を用いて表す.空間格子には14種類あり,単位格子の軸と角度とに関する制限から立方晶,正方晶,斜方晶などに分類される.ミラー指数などこれらの表記方法,決定方法について解説する.
4 イオン結晶の性質
イオン結晶の構造のうち岩塩型構造,塩化セシウム型構造,閃亜鉛鉱型構造,ウルツ鉱型構造,蛍石型構造,ルチル型構造を取り上げて,特徴と機能について解説する.
5 イオン伝導体とその応用
イオン伝導性を示す物質の構造と発現のメカニズムを解説する.また,その応用例として酸素センサーを取り上げてその動作原理を解説する.
6 化学電池
化学電池の基本的原理を理解させる.そのうえで,種々の化学電池(一次電池と二次電池)を取り上げて解説する.
7 耐火物およびセメントの製法(1)
産業上重要な耐火物とセメントの具体例をとりあげて,その製法,評価法を紹介・解説する.
8 中間試験
第1週から第7週までの内容で,実施する.
9 中間試験の解答,耐火物およびセメントの製法(2)
中間試験の解答をする.産業上重要な耐火物とセメントの具体例をとりあげて,その製法,評価法を解説する.
10 ガラスの製法
代表的なガラスの構造と特徴,実際の応用例ならびに板ガラスの製法について解説する.
11 特殊ガラス,光ファイバーの製法
種々の機能を持たせた特殊なガラス材料やガラス複合材料をとりあげ,作製法,性質,応用などを解説する.
12 材料の高純度化
蒸留法,溶媒抽出法など物性の差を利用して物質の高純度化する原理や製法を解説する.
13 単結晶の作製と応用
固体全体にわたって結晶の向きが一定であるため,その固体の基本物性を充分に発揮することができる単結晶の作製法と応用例を解説する.
14 多結晶体と薄膜の作製と応用
多結晶体の多くは,焼結法により作製される.その原理と応用例を解説する.また,半導体や超LSIなどは薄膜と重要な関係がある.その作製の原理と応用例を解説する.
15 超微粒子の作製と応用
超微粒子は粒子サイズが小さいため単位重量あたりの表面積が非常に大きくなる.その作製法と応用例(触媒材料など)を解説する.
16 パルプ
木材からパルプを製造する工程および原理について解説する.
17 パルプ工業・紙
パルプ工業に続けて, 製紙工業について概説する.
18 油工業(1)
油脂の詳細について説明する.
19 油工業(2)
油脂から各種製品を製造する工程および原理を概説する.
20 界面活性剤
界面活性剤の製造および働きについて説明する.
21 ゴム工業
天然ゴム,合成ゴムの化学構造と性質について説明する.
22 まとめ
第16−21回の講義の内容について,まとめおよび復習する.
23 中間試験
第16週から第22週までの内容で中間試験を実施する.
24 中間試験の解答,繊維工業
中間試験の解答を行う.天然繊維の工業について解説する.
25 化学繊維(1)
ポリアミド,ナイロン−6,ビニロン,アクリル繊維,ポリエステルの製造法および特徴について解説する.
26 化学繊維(2)
ポリオレフィン繊維,ポリウレタン,炭素繊維,ガラス繊維,不織布,合成皮革の製造法および特徴について解説する.
27 化学繊維(3)
前回の講義に引き続き,ポリオレフィン繊維,ポリウレタン,炭素繊維,ガラス繊維,不織布,合成皮革の製造法および特徴について解説する.
28 プラスチック(1)
プラスチック工業の歴史と現状,高分子の物性について解説する.ラジカル重合,カチオン重合,アニオン重合について高分子化学工業的見地から解説する.
29 プラスチック(2)
塊状重合,溶液重合,乳化重合および懸濁重合について解説し,付加重合系プラスチック,重付加系プラスチック,重縮合系プラスチックについて特徴および製造法を解説する.
30 プラスチック(3)
プラスチックの成型加工について解説し,機能性プラスチックについて構造および機能について解説する.


本科目の修得には,60 時間の授業の受講と 30 時間の自己学習が必要である. 前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.