【 2013 年度 授業概要】
科   目 応用無機化学I ( Applied Inorganic Chemistry I )
担当教員 根津 豊彦 教授
対象学年等 応用化学科・5年・前期・必修・2単位 ( 学修単位II )
学習・
教育目標
A4-C2(100%)
JABEE
基準1(1)
(d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
応用無機化学は2〜4年で学習した化学知識を活かし,工業的な応用としての無機工業化学について学習する分野である.応用無機化学Iでは無機酸(硫酸・硝酸・塩酸・リン酸),海塩,ソーダと塩素,水素・アンモニアの工業的な製造法と用途およびその合成理論などについて学習する.また化学肥料(複合肥料)の分野についても工業的製法や農業への寄与についての概要を習得する.あわせて無機工業化学製造技術の進歩は環境調和と密接に関連してきたことについて学習する.



1 【A4-C2】 化学工業で不可欠な基礎部門に当たる分野の概要が理解できる.
2 【A4-C2】 無機酸(硫酸・硝酸・塩酸・リン酸)およびアンモニアの製造原理,製造技術の歴史,工業的価値,等を理解できる.
3 【A4-C2】 海水からの製塩,ソーダ工業,化学肥料等の製造原理,製造技術の歴史,工業的価値等が理解できる.
4 【A4-C2】 無機化学製品製造に関する,製造プロセス,装置材料,環境対策,等について理解できる.
5 【A4-C2】 製造技術に関しての化学反応,転化率,反応率等の計算などを理解できる.
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1 化学工業の基礎部分での分野が理解できているか,また,その分野ごとの概要が理解できているか,中間試験およびレポートの内容で評価する.
2 無機酸やアンモニアの製造法の原理や製造技術の特徴が理解できているか中間試験・定期試験およびレポートで評価する.
3 最近の海水からの製塩方法と淡水化法,電解ソーダや炭酸ソーダの製造法と原理,化学肥料の製造原理や工業的価値が理解でき,説明できるかを定期試験とレポート内容で評価する.
4 無機化学製品製造法において,製造プロセス,装置の特徴,環境対策など理解できているか中間試験・定期試験とレポート内容で評価する.
5 関係する化学反応,原料の転化率,反応率などの計算が理解できているか,中間試験・定期試験およびレポート内容で評価する.
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成績は,試験85% レポート15% として評価する.なお試験成績は中間試験と定期試験の平均とする.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「無機工業化学ー第2版」 : 塩川二朗編 (化学同人)
参考書 「無機工業化学 第4版」:安藤淳平,佐治 孝共著(東京化学同人)
「無機工業化学」:太田健一郎,仁科辰夫 他共著(朝倉書店)
「新しい工業化学」:足立吟也,岩倉千秋,馬場章夫 編(化学同人)
関連科目 無機化学I,無機化学II,物理化学Iおよび化学工学関連科目
履修上の
注意事項
上記の関連科目を充分理解しておくことが望ましい.

【授業計画( 応用無機化学I )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 工業化学総論(化学工業の特徴,資源とエネルギー,課題)について
化学工業の定義について解説する.次に,無機化学工業に属する工業の種類を説明する.特に,狭い意味の無機化学工業のうち無機酸やソーダ,アンモニア,肥料などを題材として解説する.化学工業の特徴は,装置産業であることや資源・エネルギーと関係深く,地球環境との課題を抱えてきた歴史も解説する.
2 硫酸工業(1):硫酸製造の歴史と用途,接触式製造法の理論
硫酸製造技術の発達の歴史を概説する.また硫酸の用途について概説する.次に接触式硫酸製造法について製造理論をとりあげて解説する.
3 硫酸工業(2):接触式製造法の理論,原料,装置・操業
引き続き接触式製造理論について化学平衡,物質収支の面から解説する.この反応で使用する触媒,設備の特徴や操業について概説する,また,原料に関して解説する.
4 硝酸工業(1):製造法の概要,アンモニア酸化法の理論
硝酸製造法の技術的発展と用途について解説する.次いでアンモニア酸化法による製造法の基礎理論について解説する.
5 硝酸工業(2):アンモニア酸化法の理論,反応装置,環境問題
引き続きアンモニア酸化法による製造法の基礎理論について解説する.反応装置の特徴と環境への影響を解説する.
6 塩酸工業:製造法の概要,製造理論,反応装置
主な用途について概説する.塩素と水素からの塩酸製造法(合成塩酸)について概要を解説する.塩素爆鳴気反応であること,その反応装置の特徴を解説する.また近年副生塩酸の生産量が急増していることについて説明する.
7 リン酸工業:製造法の概要,湿式リン酸製造法の理論,各種製造法の特徴,反応装置
主な用途について概説する.リン鉱石からのリン酸製造法は湿式法と乾式法があるが,湿式法をとりあげて基礎理論も解説する.リン酸の製造法では,石膏の製造が深く関係することも説明する.湿式法の各種製造法の特徴と装置について説明する.
8 中間試験
1週から7週目の範囲で試験を行う.
9 中間試験解答,アンモニア工業製造法の概要,合成理論
まず中間試験の解答を行なう.次にアンモニア合成技術の歴史的変遷を解説する.また,主な用途や工程の概要を説明する.温度や圧力の関係を主に化学平衡の観点から基礎理論を解説する.
10 アンモニア工業(2):合成理論,合成ガスの製造,合成装置と条件
引き続き温度や圧力の関係を主に化学平衡の観点ら基礎理論を解説する.また合成ガスの製造について説明する.次に合成装置の特徴や合成条件について解説する.
11 海水からの製塩(1):我が国における製塩の概要
まず,塩の輸入の実情,用途について概説する.次にわが国における製塩法の概要について説明する.海水成分とにがり工業について概説する.
12 海水からの製塩(2):海水からの製塩と海水の淡水化
イオン交換膜電気透析法の中で採かん行程とせんごう工程について説明する.次に淡水化の技術について概説する.
13 電解ソーダ法:
電解ソーダ法については歴史的に隔膜法,水銀法,イオン交換膜法があるがその概要について説明する.電気分解の基礎理論について解説する.
14 アンモニアソーダ法と塩安ソーダ法
食塩から炭酸ナトリウムを工業的製造するソルベー法(アンモニアソーダ法)およびその後発展的に生まれた塩安ソーダ法について特徴等を含めた概要と基礎理論を説明する.
15 化学肥料の概要
化学的方法で製造される肥料(主に窒素,リン酸,カリ肥料)の種類とその働きを解説する.また,現在使用されている肥料の複合化や高成分化に関してその概要を解説する.


本科目の修得には,30 時間の授業の受講と 60 時間の自己学習が必要である. 前期中間試験および前期定期試験を実施する.