【 2013 年度 授業概要】
科   目 分析化学II ( Analytical Chemistry II )
担当教員 根津 豊彦 教授
対象学年等 応用化学科・3年・通年・必修・2単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
A4-C2(100%)
授業の概要
と方針
前期においては,応用化学実験Iで学習した容量分析について,キレート滴定,酸化還元滴定を中心に基礎理論を学ぶ.後期では機器分析法について概説する.機器分析では分光光度法(紫外,可視,赤外),原子吸光光度法,クロマトグラフィー,質量分析法,X線回折法,核磁気共鳴法についての基本原理と測定方法の基礎について講述する.機器分析についてはDVDによる学習を積極的に取り入れる.



1 【A4-C2】 キレート滴定の基礎理論について理解し説明できる.各種滴定法の応用について理解し説明できる.これらに関する種々の計算問題が解ける.
2 【A4-C2】 酸化還元滴定の基礎理論について理解し説明できる.これらに関する種々の計算問題が解ける.
3 【A4-C2】 紫外・可視分光光度の原理,分光光度計の構成,各種吸光光度分析法への応用について理解し説明できる.絶対検量線を用いた定量計算ができる.
4 【A4-C2】 クロマトグラフ法の原理,装置(GC・HPLC)の特徴,分析対象の概要を理解し説明できる.内標準法について理解できる.これらに関する種々の計算問題が解ける.
5 【A4-C2】 原子吸光光度法の原理,装置の構成,分析対象について理解し説明できる.標準添加法について理解でき理解できる.これらに関する種々の計算問題が解ける.
6 【A4-C2】 赤外吸収スペクトル分析法の特徴(原理,分析対象等),装置の構成について理解し説明できる.IRスペクトルから簡単な構造をした物質の同定ができる.
7 【A4-C2】 X線回折法,核磁気共鳴分析,質量分析法の原理,装置,分析対象について理解し説明できる.これら手法を用いた物質同定法について理解できる.
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1 錯体に関する溶液反応の基礎事項と応用例を説明できるか,直接・逆滴定について説明できるか.これらに関する計算問題が解けるか,前期中間試験,レポートで評価する.
2 溶液中での酸化還元反応の基礎事項と応用例を説明できるか,これらに関する計算問題が解けるか,前期中間・定期試験,レポートで評価する.
3 紫外・可視分光光度分析法の原理,特徴(分析への応用,測定対象等),分光光度計の構成について説明できるか.絶対検量線による定量計算問題が解けるかを前期定期試験,レポートで評価する.
4 クロマトグラフ法の特徴(原理,分析対象等),装置の種類,構成について理解し説明できるか.分離条件,内標準法に関する種々の計算問題が解けるかについて,後期中間試験,レポートで評価する.
5 原子吸光光度法の特徴(原理,分析対象等),装置の構成について理解し説明できるか.標準添加法に関する種々の計算問題が解けるかについて,後期中間試験,レポートで評価する.
6 赤外吸収スペクトル分析法の特徴(原理,分析対象等),装置の構成について理解し説明できるか.IRスペクトルから簡単な構造をした物質の同定ができるかについて後期中間試験,レポートで評価する.
7 X線回折法,核磁気共鳴分析,質量分析法の原理,装置,分析対象について理解し説明できるか,測定結果から簡単な物質や構造の同定ができるかについて後期定期試験,レポートで評価する.
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成績は,試験90% レポート10% として評価する.試験成績は,前期・後期の中間試験および定期試験計4回の平均点に0.9を乗じたものとする.レポート点は,出題したレポート平均点(100点満点)の平均点に0.1を乗じたものとする.この合計を総合評価とする.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「基礎分析化学」 :今泉他 共著(化学同人)
「入門機器分析」: 庄野利之・脇田久伸 共著(三共出版)
参考書 「新版 基礎分析化学演習」: 菅原正雄著(三共出版)
「入門機器分析化学演習」: 庄野利之・脇田久伸 編著(三共出版)
関連科目 「分析化学I」 「応用化学実験I(容量分析)」
履修上の
注意事項
分析化学I,応用化学実験I(容量分析)の理解が必要.

【授業計画( 分析化学II )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 金属錯体
金属−配位子の組み合わせでできる化合物を金属錯体あるいは単に錯体と呼ぶ.ルイス酸・塩基の定義とHSAB則について学習する.
2 金属錯体平衡1
錯体の生成反応式から錯体の生成定数,逐次生成定数,副反応について学習する.演習をあわせて実施する.
3 金属錯体平衡2
錯体の生成反応式から錯体の生成定数,逐次生成定数,副反応について学習する.演習をあわせて実施する.
4 キレート滴定と代表的な滴定法
キレート錯体,キレート試薬の構造式について説明し,直接滴定,逆滴定滴定について学習する.演習をあわせて実施する
5 酸化還元電位とネルンスト式
標準酸化還元電位とネルンスト式について説明し,電極電位と活量との関係について学習する.演習をあわせて実施する.
6 酸化還元反応の平衡定数
酸化還元電位と平衡定数との関係式を導き,代表的な酸化還元反応とその平衡定数について学習する.
7 演習問題
出題した演習問題をについての解説を行う.
8 中間試験
1週目から7週目までの内容を出題する.
9 中間試験解答・標準酸化還元電位
中間試験の解答を行う.標準酸化還元電位について説明する.
10 電池の起電力,電位に及ぼすpHの影響
標準酸化還元電位および活量から種々の電池の起電力について説明する.またpHの電位に及ぼす影響について説明する.演習をあわせて実施する.
11 酸化還元滴定の指示薬,代表的な酸化還元滴定
酸化還元滴定に用いる指示薬の選定方法について解説する.また,過マンガン酸カリウム滴定,ニクロム酸カリウム滴定,ヨウ素滴定について学習し,演習を行う.
12 演習問題
出題した演習問題についての解説を行う.
13 吸光光度分析 (原理)
吸光光度法は試料物質の基底状態から励起状態への電子遷移に基づく,光(可視光・紫外光)を吸収する現象を利用する定性・定量分析である事を解説する.またランバート−ベールの法則について学習する.
14 吸光光度分析 (原理・装置)
混合物の吸光度は,一定の条件を満たせば,混合物の定量,反応速度の測定にも利用できることを説明する.また光度滴定法および紫外・可視分光光度計の基本構造について学習する.
15 吸光光度分析 (測定法)
吸光光度分析は,多分野で利用されている.代表的な測定事例にを紹介すると共に,絶対検量線法による定量方法について学習する.定量計算について演習を行う.
16 前期定期試験の解答.クロマトグラフィー (分類,基礎)
前期定期試験について解答する.クロマトグラフィーは移動相が気体のガスクロマトグラフィーと,移動相が液体の液体クロマトグラフィーに大別される.クロマトグラフィ−による分離方法の種類と分離の基礎理論について学習する.
17 クロマトグラフィー (定性,定量)
クロマトグラフィーでは,一定条件下において各成分が固有の保持値を持つことを利用して定性分析を行う.定量分析はピーク面積などの測定から濃度を算出する.また定量精度を向上させるため内標準法が用られる.これらについて解説するとともに分離能および定量計算について演習を行う.
18 クロマトグラフィー (装置)
ガスクロマトグラフおよび液体クロマトグラフ装置の構造について,試料注入部,移動相,分離カラム,検出器を中心に学習する.
19 原子吸光光度法 (原理,装置)
原子吸光光度法の原理および装置の構造について,ホローカソードランプ,原子化部,モノクロメータ,検出器を中心に学習する.
20 原子吸光分析 (測定法)
原子吸光分析法では試料を溶液化して測定する.一般的な前処理方法と原子吸光法における干渉および定量精度を向上させるために用いられる標準添加法について学習する.また標準添加法による定量計算について演習を行う.
21 赤外吸収スペクトル分析 (原理)
赤外吸収スペクトル法は,試料に赤外線をあて,双極子モーメントが変化する分子骨格の振動,回転に対応するエネルギーの吸収を測定する方法であることを学習する.
22 赤外吸収スペクトル分析 (装置・測定法)
波長分散型赤外分光光度計の構造について,モノクロメーター,検出器を中心に学習する.また現在主に用いられているFT−IRについて概説すると共にその利点について学習する.また本法を用いた有機化合物推定方法の初歩について演習を交えて解説する.
23 中間試験
16週目から22週目までを出題する.
24 中間試験解答.X線分析 (原理)
中間試験の解答を行う.X線回折法は,試料中の原子から散乱されるX線の回折角や強度は物質の構造に特有であり,その回折角から定性分析,強度から定量分析ができる事を学習する.
25 X線分析 (原理,回折装置)
X線回折装置の構造について,封入式X線管,ゴニオメータ,検出器を中心に学習する.
26 X線分析 (測定法)
X線回折法について物質の同定方法,結晶の構造を決定する手段について学習する.
27 質量分析 (原理,装置)
質量分析法の原理について解説する.試料のイオン化方法およびそれによって生成する分子イオン,フラグメントイオンについて学習する.また同位体イオンについて学習する.
28 質量分析 (スペクトルの解析,測定法)
質量分析計は,有機化合物では分子量の決定や同定に利用されることを解説し,既知試料のマスクロマトグラムから分子構造の推定方法について演習を交えて解説する.
29 核磁気共鳴分析 (原理,装置)
共鳴吸収位置(化学シフト)の相違によりいろいろな化合物の定性が可能で,プロトンNMRでは共鳴吸収の強さから化合物構造解析において水素比率推定手段に用いられることを学習する.簡単な既知化合物の出力結果から同定手法の解析法について演習を交えて解説する.
30 核磁気共鳴分析 (測定法)
核磁気共鳴分光法の原理について概説する.また試料作製法と,作製に使用する溶媒の働きについて学習する.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.本講義においては,宿題を課しレポート点として評価する.