【 2012 年度 授業概要】
科   目 哲学 ( Philosophy )
担当教員 手代木 陽 教授
対象学年等 全学科・5年・通年・選択・2単位 ( 学修単位I )
学習・
教育目標
C3(80%) D2(20%)
JABEE
基準1(1)
(a),(b)
授業の概要
と方針
哲学の根本問題は「人間とは何か」である.科学技術の進歩は現代を生きる人間のあり方を大きく変えつつある.まず科学技術についての楽観論,悲観論を取り上げ,その根拠を考察する.そして限定論の立場から科学技術の進歩が現代社会に投げかけている問題を哲学的に考察する.



1 【C3】 科学技術の諸問題の根本には「人間とは何か」という哲学的問題があることを理解し,それについて自分の意見を矛盾なく展開できる.
2 【D2】 科学技術の諸問題に関する西洋の哲学・倫理思想を理解し,それに対する自分の意見を矛盾なく展開できる.
3  
4  
5  
6  
7  
8  
9  
10  












1 科学技術の諸問題の根本には「人間とは何か」という哲学的問題があることを理解し,それについて自分の意見を矛盾なく展開できるか,定期試験,レポートで評価する.
2 科学技術の諸問題に関する西洋の哲学・倫理思想を理解し,それに対する自分の意見を矛盾なく展開できるか,定期試験,レポートで評価する.
3  
4  
5  
6  
7  
8  
9  
10  




成績は,試験50% レポート50% として評価する.毎回授業の最後に提出する小レポートの評価を重視する.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト ノート講義
参考書 なし
関連科目 倫理
履修上の
注意事項
なし

【授業計画( 哲学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 哲学とは?
哲学と科学のアプローチの相違を解説し,「私とは何か」という問題について考えてみる.
2 人間とは?
哲学の根本問題が「人間とは何か」という問題に集約されることを説明し,ヒトと類人猿の相違点についてビデオ教材を視聴して考える.
3 技術とは?
科学技術の問題が「人間とは何か」という哲学的問題と不可分であることを説明し,ハンス・ヨナスの科学技術についての5つの主張を取り上げ,科学技術の楽観論,悲観論,限定論のいずれに賛成するかを考える.
4 プラトンとアリストテレスの技術論
プラトンとアリストテレスの技術についての考え方の相違点を各々の哲学的立場から解説する.
5 科学技術の楽観論(1)
F.ベーコンの「知は力なり」という言葉に代表される楽観的な技術論とその問題点について解説する.
6 科学技術の楽観論(2)
今日の科学技術の基礎にある近代科学の自然観の特徴を解説し,その問題点を考える.
7 科学技術の楽観論(3)
人間にとって「進歩」とは何か,「進歩」観の歴史を振り返り,果たして科学技術は進歩したと言えるのかを考える.
8 科学技術の悲観論(1)
スウィフトの『ガリヴァー旅行記』に見出される人間へのイロニー(皮肉)を通して科学技術批判を試みる.
9 科学技術の悲観論(2)
レイチェル・カーソンの『沈黙の春』を取り上げ,環境破壊への彼女の警告について考える.
10 科学技術の悲観論(3)
チャップリンの『モダンタイムス』を視聴し,彼の機械文明批判について考える.
11 人間の生命と技術(1)
医療技術の進歩がもたらした生命倫理の歴史を概説する.
12 人間の生命と技術(2)
延命技術の進歩によって生じた尊厳死と積極的安楽死の問題を取り上げ,患者の自己決定権と医者の義務の関係について考える.
13 人間の生命と技術(3)
尊厳死についてのビデオを視聴し,その是非について考える.
14 人間の生命と技術(4)
脳死は「人の死」と言えるかという問題を,脳死臨調答申の中の「死の定義」を取り上げて考える.
15 人間の生命と技術(5)
「サバイバル・ロッタリー」という架空の制度を通して,臓器移植の「最大多数の最大生存」という原理の問題点を考える.
16 人間の生命と技術(6)
人工妊娠中絶をめぐる保守派,リベラル派,中間派の立場の相違を解説し,いずれに賛成するか考える.
17 人間の生命と技術(7)
体外受精や代理母といった生殖医療技術が他人に危害を及ぼす可能性について考える.
18 人間の生命と技術(8)
受精卵診断やヒトクローン胚による再生医療の可能性を解説し,遺伝子技術と人間の尊厳の問題を考える.
19 人間の生命と技術(9)
再生医療と,白血病の治療のために遺伝子を選んで新たな子供を出産する「救世主兄弟」のビデオを視聴して,その倫理的問題について考える.
20 人間と環境と技術(1)
地球温暖化問題を通して,地球の有限性と市場社会システムの問題について概説する.
21 人間と環境と技術(2)
環境問題が市場社会の原理的欠陥に起因することを「共有地の悲劇」や「囚人のジレンマ」のモデルで解説する.
22 人間と環境と技術(3)
地球益の優先が強権的なエコファシズムに陥る危険性を「救命艇の倫理」のモデルを通して解説し,京都議定書の意義と限界について考える.
23 人間と環境と技術(4)
「移入種問題」について「動物解放論」と「生態系主義」の立場からその排除の是非を考える.
24 人間と環境と技術(5)
現代人は未来世代のために環境を守る義務があるという「世代間倫理」の理論的可能性について解説する.
25 人間と環境と技術(6)
「原発解体」のビデオを視聴し,核廃棄物の問題を通して世代間倫理の問題を考える.
26 人間と機械と情報(1)
人工知能(AI)開発の基礎には「人間の知識とは何か」という哲学的問題があることを解説し,AI主義と反AI主義のいずれに賛成するか考える.
27 人間と機械と情報(2)
ロボット開発の基礎には「心身問題」という哲学的問題があることを解説し,ロボットにも人間のような心を認めることができるか考える.
28 人間と機械と情報(3)
ロボット技術の軍事転用についてビデオを視聴し,将来この技術の開発をどこまで認めるか考える.
29 人間と機械と情報(4)
インターネットが目指す「情報の共有」は知的財産権やプライバシー権と両立するか考える.
30 まとめ
これまでの講義を受講して,改めて科学技術の楽観論,悲観論,限定論を検討する.ディベートを行い,最後に各自の意見を発表する.


前期定期試験および後期定期試験を実施する.