【 2012 年度 授業概要】
科   目 材料化学 ( Material Chemistry )
担当教員 松本 久司 非常勤講師
対象学年等 応用化学科・5年・通年・必修・2単位 ( 学修単位III )
学習・
教育目標
A2(100%)
JABEE
基準1(1)
(c),(d)1
授業の概要
と方針
機能性材料に関する最新の話題を適宜とりあげながら,化学結合,結晶構造,電気的特性など無機材料の基礎的性質を中心に学習する.次にセラミックス,ガラスなど種々の材料の合成法や性質,応用例を紹介して無機材料に対する理解を深める.



1 【A2】 化学結合の種類とそれらの強さを理解し,説明できる.
2 【A2】 化学結合の違いによる固体材料の電気的・物理的・化学的特性の違いを理解し,説明できる.
3 【A2】 無機材料の結晶構造の種類と代表的な化学物質を理解し,説明できる.
4 【A2】 化学物質の物理的・化学的性質の差を利用した高純度化法や単結晶の作製法を理解し,説明できる.
5 【A2】 セラミックス,ガラスの構造,物性と用途を理解し,説明できる.
6 【A2】 固体の電気的・磁気的性質を利用したデバイスとそれらの作動原理を理解し,説明できる.
7  
8  
9  
10  












1 共有結合,イオン結合,金属結合,水素結合など種々の結合の強さと材料の化学的・物理的特性を理解し,説明できるかを試験成績で評価する.
2 イオン結合性の固体の結晶構造の分類法と表記方法,また陽イオン・陰イオンの半径比によって配位数がどのように異なるかを理解でき,説明できるかを試験成績と関連するレポートで評価する.
3 イオン結晶の代表的な結晶構造について,また共有結晶,イオン結晶,金属結晶を持つ化合物の種類とそれらの性質を理解でき,説明できるかを試験成績と関連するレポートで評価する.
4 物質の高純度化法の種類と原理,単結晶の作製法と応用について理解し,説明できるかを試験成績と関連するレポートでで評価する.
5 伝統的セラミックス,ファインセラミックス,ガラスの構造的特徴と物性,および応用デバイスの作動原理を理解でき,説明できるかを試験成績と関連するレポートで評価する.
6 半導体,コンデンサー,磁石など固体の電気的・磁気的性質を利用したデバイスの作動原理と用いられている材料の物性を理解でき,説明できるかを試験成績と関連するレポートで評価する.
7  
8  
9  
10  




成績は,試験90% レポート10% として評価する.前期と後期の平均で総合評価とする.なお,試験成績は前期,後期とも中間試験と定期試験を平均する.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「現代無機材料科学」 : 足立吟也・南 努 編著 (化学同人)
プリント
参考書 「無機材料化学」 : 荒川剛ら著 (三共出版)
「固体化学の基礎と無機材料」 : 足立吟也ら著 (丸善)
関連科目 物理化学I(C4),物理化学II(C5),無機化学I(C2),無機化学II(C3)
履修上の
注意事項
上記の関連科目と量子化学の基礎的事項を理解していることが望ましい.

【授業計画( 材料化学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 履修ガイダンスー材料化学とは?ー
身の回りでは様々な「材料」が用いられているが,「材料」にはどのようなものがあるか.また,その働き,合成法に着目して,材料を構成する物質の化学的性質との関連を解説する.
2 種々の化学結合について
イオン結合,共有結合,金属結合,水素結合の強さとその量子論的な起源を学び,それぞれの結合を有する化学物質を紹介し,それらの一般的な性質を解説する.
3 原子価結合法と分子軌道法
共有結合の方向性がそれらの構成するオービタルによって決定されることを解説する.オービタルの混成の概念を導入して様々な分子の形を推定できるように解説する.
4 分子の極性とその他の化学結合
異分子間の結合では分子内で電荷の偏り生じ,これが分子の極性を生むことを解説する.また,配位結合,水素結合,分子間力の強さと代表的な化合物を紹介・解説する.
5 金属,半導体,絶縁体
化学結合の概念を固体材料へ適用することで固体の電子構造を理解させる.それらの電子構造と電気伝導などの物性の関係を解説する.
6 無機固体の結晶構造
結晶の構造は空間格子を用いて表す.空間格子には14種類あり,単位格子の軸と角度とに関する制限から立方晶,正方晶,斜方晶などに分類される.ミラー指数などこれらの表記方法,決定方法について解説する.
7 イオン結晶の性質(1)
イオン結晶の構造のうち岩塩型構造,塩化セシウム型構造,閃亜鉛鉱型構造,ウルツ鉱型構造,蛍石型構造,ルチル型構造をとりあげて,特徴と機能について解説する.
8 中間試験
第1週から第7週までの内容で中間試験を実施する.
9 中間試験の解答,イオン結晶の性質(2)
中間試験の解答を行う.イオン結晶の構造のうち岩塩型構造,塩化セシウム型構造,閃亜鉛鉱型構造,ウルツ鉱型構造,蛍石型構造,ルチル型構造をとりあげて,特徴と機能について解説する.
10 共有結晶
ダイヤモンドや黒鉛を例として,共有結晶の構造と機械的・電気的性質を解説する.
11 金属結晶・分子結晶
金属結晶および分子結晶の特徴と機械的・電気的・その他の物理的諸性質を化学結合の特徴と電子状態から解説する.
12 固体の電気伝導性
物質中の電気伝導の分類とそのメカニズムを解説する.応用例を紹介・解説する.
13 イオン伝導体とその応用
イオン伝導性を示す物質の構造と発現のメカニズムを解説する.また,その応用例として酸素センサーをとりあげてその動作原理を解説する.
14 導電性炭素材料とその応用
炭素材料や有機材料など電気導電性材料を組み合わせて形成されるリチウム電池を紹介・解説する.
15 導電性高分子材料とその応用
電気伝導性を示す高分子材料をとりあげ,燃料電池への応用を紹介・解説する.
16 代表的なセラミックスの構造と物性
代表的なセラミックスの構造と物性およびセラミックスの開発史を解説する.その中で,陶磁器の誕生をあげて,その作製法や特徴を紹介・解説する.
17 耐火物の製法
産業上重要な耐火物の具体例をとりあげて,その製法,評価法を紹介・解説する.
18 ガラスの製法
代表的なガラスの構造と特徴,実際の応用例ならびに板ガラスの製法について紹介・解説する.
19 特殊ガラス,光ファイバーの製法
種々の機能を持たせた特殊なガラス材料やガラス複合材料をとりあげ,作製法,性質,応用などを紹介・解説する.
20 材料の高純度化
蒸留法,イオン交換法など物性の差を利用して物質を高純度化する原理や製法を紹介・解説する.
21 単結晶の作製と応用
固体全体にわたって結晶の向きが一定であるため,その固体の基本物性を充分に発揮することができる単結晶の作製法と応用例を紹介・解説する.
22 超微粒子の作製と応用
超微粒子は粒子サイズが小さいため単位重量あたりの表面積が非常に大きくなる.その作製法と応用例(触媒材料など)を紹介・解説する.
23 中間試験
第16週から第22週までの内容で中間試験を実施する.
24 中間試験の解答,非晶質固体と格子欠陥
中間試験の解答を行う.また,構成要素が周期的配置を持たない固体の代表例をあげ,その製法や用途について解説する.また,周期的配列中の構造上の乱れである格子欠陥の種類と制御法について解説する.
25 半導体とその応用(1)
半導体材料,特に不純物半導体をとりあげ,エネルギーバンド構造からその物性を理解させる.また,応用例としてダイオードと太陽電池を紹介・解説する.
26 半導体とその応用(2)
半導体材料,特に不純物半導体をとりあげ,エネルギーバンド構造からその物性を理解させる.また,応用例としてダイオードと太陽電池を紹介・解説する.
27 超伝導体とその応用
超伝導性を示す物質の構造と発現のメカニズムを解説する.また,その応用例としてリニアモーターカーを紹介・解説する.
28 固体の誘電性,磁性(1)
固体物質の示す磁性と誘電性について解説する.また,実際の応用例を紹介・解説する.
29 固体の誘電性,磁性(2)
固体物質の示す磁性と誘電性について解説する.また,実際の応用例を紹介・解説する.
30 固体の誘電性,磁性(3)
固体物質の示す磁性と誘電性について解説する.また,実際の応用例を紹介・解説する.


本科目の修得には,60 時間の授業の受講と 30 時間の自己学習が必要である. 前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.