【 2011 年度 授業概要】
科   目 応用化学実験I ( Laboratory Work I in Applied Chemistry )
担当教員 松井 哲治 教授,根津 豊彦 教授,宮下 芳太郎 准教授
対象学年等 応用化学科・2年・通年・必修・4単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
A4-C2(60%) B1(10%) B2(10%) C4(10%) D1(10%)
授業の概要
と方針
前期15週は分析化学で学習した容量分析の内容のうち,特に日常生活で馴染みのある試料を取りあげ,実験を通じて化学に興味を持たせるとともに基礎的分析技術を習得させる.後期15週は無機化学で学習した化学物質を合成し,それらの性質を調べることで無機化学実験に必要な基礎的技法を習得させる.また分析化学で学んだ分離や精製の原理や手法を実験を通して再確認する.



1 【A4-C2】 容量分析で使用する化学用体積計の使用技術を習得し応用できる.
2 【A4-C2】 中和滴定,酸化還元滴定,キレート滴定,沈殿滴定の理論を理解し応用できる.
3 【A4-C2】 分析化学実験や無機化学実験に必要な基本的操作を習熟する.
4 【A4-C2】 無機化学反応における当量関係を学習し理解する.
5 【A4-C2】 目的とする最終生成物を収率よく合成できる.もし失敗してもその原因が把握でき,失敗を今後の実験に生かすことができる.
6 【B1】 定量分析によって得られたデータの誤差要因について考察することができる.無機合成実験については,生成反応や収率を変動させる要因について考察することができる.
7 【B2】 実験結果を説明することができる.
8 【C4】 グループで協力して実験を行うことができる.
9 【D1】 実験廃液,廃棄物の分別や処理が的確にできる.
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1 容量分析に使用する体積計の使用方法を適正に理解し技術習得できているか,前期実験技術,前期定期試験および前期実験レポートで評価する.
2 定量に利用される化学反応とその基礎理論が理解でき,実試料に応用できているかを前期実験レポートで評価する.またテキストの章末問題が正しく理解できているかを前期実験レポートや前期定期試験で評価する.
3 分析化学実験や無機化学実験に必要な基本的操作を習熟しているかについて前・後期実験技術および前・後期定期試験によって評価する.
4 化学反応における当量関係を知り,量的な扱いについて理解できているか,後期実験レポートおよび後期定期試験で評価する.
5 目的とする最終生成物を収率よく得られたかどうか,失敗してもその原因が把握できているかを後期実験レポートで評価する.
6 容量分析における誤差や合成時の収率を変動させる要因について考察できているかについて前・後期実験レポートで評価する.
7 実験結果について説明できるかを前・後期実験レポートで評価する.
8 グループ内での行動や実験に対する姿勢を前・後期実験技術で評価する.
9 実験廃液,廃棄物の分別や処理が的確にできているかを前・後期実験技術で評価する.
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成績は,試験20% レポート65% 実験技術15% として評価する.前期(容量分析),後期(無機合成)の平均を学年評価とする.なお,未提出のレポートがある場合は上記の評価方法は適用しない.提出が遅れた場合にはその日数に比例して減点する.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 前期:「定量分析(第二版)」 : 浅田誠一他共著 (技報堂出版KK)
後期:プリント
参考書 「第7版 実験を安全に行うために」 化学同人編集部編(化学同人)
「第3版 続 実験を安全に行うために」 化学同人編集部編(化学同人)
関連科目 化学(C1),無機化学I(C2),分析化学I(C2)
履修上の
注意事項
分析化学I(C2),無機化学I(C2)を十分学習し,理解を深めることが望ましい.

【授業計画( 応用化学実験I )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 年間計画・応用化学実験Iの内容・レポートの書き方・評価の仕方等の説明
一年間の授業計画の概要.前期には分析化学(容量分析)を,後期には無機化合物の合成実験を実施することを説明.特に前期における実験を進める上での留意すべき点,実験態度,レポートの書き方などを中心としたガイダンス.
2 「実験を安全に進めるために」,容量分析化学実験(「容量分析」)教育ビデオによる学習ならびに準備作業
各自の使用器具配布と点検,その他用具の点検,実験を安全にすすめるためと容量分析の仕方について教育ビデオによる学習.
3 化学用体積計の使用方法の説明(ビュレット,ピペット,メスフラスコなど),ガラス細工
分銅の点検.ビュレット台の組み立てとビュレットの配布.ホールピペット・ビュレット・メスフラスコの洗浄.試料ビンの洗浄と乾燥.簡単なガラス細工(駒込ピペットの作製).
4 化学用体積計(ピペット)の校正
ホールピペットの補正.デシケータの点検(乾燥剤の入替).ビュレットの検査(一滴の容積測定).ラベルの書き方.中和反応の応用:一次標準液・炭酸ナトリウムの0.1mol/L,500mL調製準備.
5 炭酸ナトリウム標準液・塩酸標準液の調製と標定
中和反応:中和反応の概略の説明.二次標準液である0.1mol/L 塩酸溶液の調製と0.1mol/L 炭酸ナトリウム一次標準液による標定.
6 水酸化ナトリウム標準液の調製と標定,食酢中の酢酸の定量
中和反応の応用(中和滴定):0.1mol/L 水酸化ナトリウム溶液の調製と0.1mol/L 塩酸二次標準液による標定.これを使用した,食酢中の酢酸を定量.
7 水酸化ナトリウム・炭酸ナトリウム混合物の定量(ワーダー法)
中和反応の応用(中和滴定):二次標準液である0.1mol/L 塩酸溶液による水酸化ナトリウム・炭酸ナトリウム混合溶液中のそれぞれの成分濃度分析.
8 過マンガン酸カリウム標準液の調製と標定
酸化還元反応の応用(酸化還元滴定):酸化剤として過マンガン酸カリウム溶液を調製し,一次標準液であるシュウ酸ナトリウム標準液で標定する.(ファクターの決定)
9 オキシドール中の過酸化水素の定量
酸化還元反応の応用(酸化還元滴定):先の過マンガン酸カリウム溶液を用いて,オキシドール中に含まれる過酸化水素を定量する.
10 ニクロム酸カリウム標準液・チオ硫酸ナトリウム標準液の調製と標定
酸化還元反応の応用(酸化還元滴定):一次標準液ニクロム酸カリウム標準液を調製し,還元剤であるチオ硫酸ナトリウム標準液を標定する.
11 漂白剤(ハイターやブリーチ)中の有効塩素の定量
酸化還元反応の応用(酸化還元滴定):第10週で調製した還元試薬であるチオ硫酸ナトリウム標準液でハイターやブリーチ中の有効塩素を定量する.
12 水中のカルシウム,マグネシウムの定量
キレート反応の応用(キレート滴定):キレート試薬であるEDTAを用いて,水中に含まれるカルシウムとマグネシウムを定量する.
13 塩化ナトリウム標準液・硝酸銀標準液の調製と標定
沈殿滴定:0.01mol/L 硝酸銀溶液を調製する.その後,一次標準液として0.01mol/L 塩化ナトリウム溶液を調製し,これを用いて硝酸銀溶液を標定する.
14 醤油中の塩化ナトリウムの定量(モール法),前期の実験全般についての復習,実験の後片付け
沈殿滴定の応用:モール法を用いて,色々な種類の醤油中に含まれる塩化ナトリウムを定する.
15 後片付け
配布器具の洗浄と返却,実験台周りの清掃.
16 無機化学実験のガイダンス 基本操作の解説
応用化学実験1の後半分「無機化学実験」のテーマと概要の説明.溶解・沈殿・ろ過・洗浄・結晶化などの基本操作(理論と方法)の説明.
17 基本操作の解説 班分け 器具の配布
前週に引続いて基本操作の説明 班分け 無機化学実験に用いる個人持ち器具の配布.
18 テーマ1:硫酸銅に関連した実験 実験1 硫酸銅の製造
銅片を濃硝酸で溶解し,これに炭酸ナトリウムを反応させることによって塩基性炭酸銅を造る.これを濃硫酸で溶解して硫酸銅とする.濃縮後,硫酸銅五水和物として結晶化させる.得られた硫酸銅五水和物の結晶を観察すると共に定性反応も行う.
19 テーマ1 :硫酸銅に関連した実験 実験2 硫酸銅から複塩と錯塩の製造
硫酸銅と硫酸アンモニウムを反応させて複塩(硫酸銅(II)アンモニウム六水和物)を造り,保温溶液中から大きな結晶に成長させる.また硫酸銅とアンモニア水を反応させて複塩(テトラアンミン銅(II)硫酸塩一水和物)を造り,エタノール溶液から沈殿させる.
20 テーマ1 :硫酸銅に関連した実験 実験3 亜鉛粉末と硫酸銅から酸化亜鉛の製造
硫酸銅溶液に亜鉛粉末を添加してイオン化傾向の差によって銅を回収し,溶解した亜鉛は硫酸亜鉛七水和物として回収する.次に炭酸ナトリウムと反応させて塩基性炭酸亜鉛とし,これを熱分解して酸化亜鉛とする.酸化亜鉛の定性反応も行う.
21 テーマ1の完成
テーマ1の硫酸銅に関連した3種類の実験を完成させる.内容は上記の通り.
22 テーマ2:ミョウバンに関連した実験 実験4 硫酸鉄(III)アンモニウム十二水和物の製造(1)
鉄粉を硫酸で溶解して硫酸鉄(II)とし,さらに硝酸で酸化して硫酸鉄(III)とする.得られた硫酸鉄(III)を硫酸アンモニウムと反応させて硫酸鉄(III)アンモニウム十二水和物を造り,その後大きな八面体結晶に成長させる.鉄アンモニウムミョウバンの定性反応も行う.
23 テーマ2 :ミョウバンに関連した実験 実験4 硫酸鉄(III)アンモニウム十二水和物の製造(2)
同上 前回の続き
24 テーマ2 :ミョウバンに関連した実験  実験5 トリス(オキサラト)鉄(III)酸カリウムの製造
実験4の完成(3)と平行して実験5を開始する.即ち,鉄アンモニウムミョウバンを水酸化ナトリウムと反応させて水酸化鉄(III)とし,これに新たに調製したシュウ酸水素カリウムを反応させることによってトリス(オキサラト)鉄(III)酸カリウム三水和物を造る.
25 テーマ2:ミョウバンに関連した実験 実験5'トリス(オキサラト)鉄(III)酸カリウムによる青写真
トリス(オキサラト)鉄(III)酸カリウムとヘキサシアニド鉄(III)酸カリウムまたはヘキサシアニド鉄(II)酸カリウムを用いた青写真(白線法と青線法)を試みる.
26 テーマ3:カルシウム化合物に関連した実験 実験6 炭酸カルシウムの製造(1)
大理石を塩酸で溶解後,不純物を除去して塩化カルシウム六水和物を得る.この無水物に炭酸カリウムを反応させて(沈降)炭酸カルシウムを造る.炭酸カルシウムの定性反応も行う.
27 テーマ3 :カルシウム化合物に関連した実験 実験6 炭酸カルシウムの製造(2)
前週の続きを行い本実験を完了させる.
28 テーマ3 :カルシウム化合物に関連した実験 実験7 硫酸カルシウム半水和物(焼石膏)の製造(1)
塩化カルシウムと硫酸ナトリウムから硫酸カルシウム二水和物を得る.これを硝酸存在下で加熱処理することにより,硫酸カルシウム半水和物(焼石膏)にかえる.
29 テーマ3 :カルシウム化合物に関連した実験 実験7 硫酸カルシウム半水和物(焼石膏)の製造(2)
前週の続きを行い本実験を完了させる.
30 後片付け
前週の続きを行い本実験を完了させる.配布器具の洗浄と返却,実験台周りの清掃.


前期定期試験および後期定期試験を実施する.