【 2011 年度 授業概要】
科   目 電気化学 ( Electrochemistry )
担当教員 棚瀬 繁雄 非常勤講師
対象学年等 応用化学専攻・2年・前期・選択・2単位
学習・
教育目標
A4-AC3(100%)
JABEE
基準1(1)
(d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
電池や電気分解を中心に電気化学反応の特徴と電気化学の応用分野を理解するための学習を行う. 電気化学がエネルギー貯蔵, エネルギー変換, 無機合成, 冶金・精錬, 表面処理, 生命科学, 電子工学, 環境化学などと密接な関連を持ち, それぞれの分野で重要な役割を果たしていることを講義する. また, イオン性液体, 固体電解質などの新しい機能材料や湿式太陽電池などの先端技術についても紹介する.



1 【A4-AC3】 イオン導電性, 起電力, 電極電位, 電極反応速度など, 電気化学の基礎が理解できる.
2 【A4-AC3】 複素インピーダンス測定, サイクリックボルタンメトリーなど, 電気化学計測技術が理解できる.
3 【A4-AC3】 電池, 燃料電池の原理, 特徴が理解できる.
4 【A4-AC3】 電気化学の電解工業, 表面処理などへの応用の原理, 効果が理解できる.
5 【A4-AC3】 エネルギー・環境問題と電気化学の接点が理解できる.
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1 中間試験で, 電極電位と自由エネルギー, 電極反応と全反応の関係を問い, 理解度を評価する.
2 中間試験で, 電気化学計測法の原理と用途を問い, 理解度を評価する.
3 定期試験で, 電池, 燃料電池などの反応, エネルギー密度, 出力・寿命特性を問い, 理解度を評価する.
4 定期試験で, 電解工業, 表面処理における反応, 生産性を問い, 理解度を評価する.
5 定期試験で, エネルギー・環境問題への電気化学の貢献に関する理解度を評価する.
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成績は,試験100% として評価する.それぞれの試験を単純平均して100点満点で評価する. 60点以上を合格とする.
テキスト 「電気化学」:渡辺 正・金村 聖志・益田 秀樹・渡辺 正義 共著(丸善)
参考書 「電気化学便覧 第5版」:電気化学会 編(丸善)
「第5版 実験化学講座25 “触媒化学, 電気化学”」:日本化学会 編(丸善)
関連科目 C2無機化学I,C2分析化学I,C3無機化学II,C3分析化学II,C4物理化学I,C5物理化学II,C5エネルギー工学,AC1無機合成化学
履修上の
注意事項
 

【授業計画( 電気化学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 電気化学の歴史と応用分野
1791年のガルバニの「カエルの筋肉に金属片を触れると収縮することがある」現象の発見や1800年のボルタの電池の発明を端緒として誕生した電気化学の発展の過程と応用分野の広がりについて述べる.
2 電気化学系の姿
電気分解を中心として, 電極と電解質の界面の構造, 電気二重層の形成, 電位の分布について述べる. 水素や酸素の発生の経路について述べる. また, 電気量, 電気化学当量, ファラデーの法則について述べる.
3 電解質
導体, 半導体, 絶縁体の導電性について述べ, 電解質中のイオン導電の特徴について述べる. また, 電解質溶液, 溶融塩(イオン性液体), 固体電解質の構造と導電の特徴について述べる.
4 電池の起電力と電極電位
物質の電子の授受のし易さの表し方と標準電極電位の決め方について述べる. 電池の起電力について述べる. また, 電極と電解質の界面に生ずる電位の温度依存性や物質の濃度依存性について述べる.
5 電極反応速度(その1)
電位が決める反応速度(電流)について述べる. また, 電位, 過電圧と電流の関係について述べる.
6 電極反応速度(その2)
物質輸送が決める反応速度(電流)について述べる. また, 電位, 過電圧と電流の関係について述べる.
7 電気化学計測
濃度や温度などの化学量や物理量を電圧, 電流, 抵抗に変化して計測する技術について, 電気化学の観点から述べる.
8 中間試験
第1回から第7回の講義内容を試験範囲として中間試験を行う.
9 中間試験の解答,電池の歴史と一次電池
中間試験の解答を行う. 物質の持つ化学エネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換器としての電池の特徴について述べる. また, ボルタ電池以来現在までに発明, 実用された, 乾電池のような, 使い捨ての1次電池について述べる.
10 二次電池
自動車で使われている鉛蓄電池や携帯電話のリチウム電池を中心として, モバイル機器, 電力貯蔵の分野で実用されている充電して再使用できる二次電池について述べる.
11 燃料電池
電極に活物質(反応物)を連続的に供給し, 反応生成物を連続的に取り除くことで, 安定して電流を取り出すことのできる燃料電池の特長, 研究開発の歴史, 実用化の現状, 将来の展望について述べる.
12 電解工業
食塩電解, 冶金・精錬などの電極と電解質の界面で起きる反応や電解質中を電流が流れることにより起きる化学反応を利用して, 物質を製造加工するための技術について述べる.
13 腐食・防食・表面処理
腐食の機構と防食の原理について述べる. 電解質中のイオンのカソード還元で金属の薄膜を形成する電気メッキや外部電源を使用せず, 溶液中の還元剤による還元反応を利用する無電解メッキについて述べる. また, 電解研磨などの表面加工法についても述べる.
14 光電気化学
電解質溶液の中の酸化チタンなどの半導体電極に光が当たった時の起電力の発生について述べる. また, その原理に基づく湿式太陽電池の構成と実用化の可能性について述べる.
15 エネルギー・環境問題と電気化学
エネルギー変換, エネルギー貯蔵, 排水処理, 排ガス処理, 環境浄化などの生活・地球環境と電気化学の関連について述べる.


本科目の修得には,30 時間の授業の受講と 60 時間の自己学習が必要である. 前期中間試験および前期定期試験を実施する.