【 2010 年度 授業概要】
科   目 世界史 ( World History )
担当教員 町田 吉隆 教授
対象学年等 全学科・5年・通年・選択・2単位 ( 学修単位I )
学習・
教育目標
C3(80%) D2(20%)
JABEE
基準1(1)
(a),(b)
授業の概要
と方針
「人種的偏見とは何か」という歴史的課題について,アメリカ合州国,カリブ海周辺地域,カナダを含む「アメリカ」世界を対象として考える.時間的には16世紀から20世紀までを含む.社会経済,文化,政治などの視点から「アメリカ」世界が多様であることを理解することが目的である.



1 【C3】 カリブ海周辺地域とカナダ,アメリカ合州国の歴史的環境を理解することができる.
2 【C3】 「アメリカ」世界の多様性を社会経済,文化,歴史の視点から説明することができる.
3 【C3】 大西洋奴隷貿易,近代世界システム,資本主義,文化変容などの概念装置を用いて,人種的偏見の歴史的形成過程を理解することができる.
4 【D2】 日本以外の世界の他地域について,その歴史的環境を理解した上で,当該地域における人種対立,民族紛争,宗教間の紛争,異文化理解について,具体的に問題点を説明することができる.
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1 カリブ海周辺地域とカナダ,アメリカ合州国の歴史的環境について理解できているかどうかを,定期試験で評価する.
2 「アメリカ」世界の多様性を社会経済,文化,歴史の視点から説明することができるかどうかを,定期試験で評価する.
3 人種的偏見の歴史的形成過程を理解できているかどうかを,定期試験で評価する.
4 受講者自らが選んだ特定地域の歴史的環境を理解した上で,当該地域における人種対立,民族紛争,宗教間の紛争,異文化理解に関する問題点を,正確にわかりやすく説明できるかどうかを,レポートで評価する.
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成績は,試験80% レポート20% として評価する.到達目標1,2,3については前期・後期の定期試験の平均点で評価する.到達目標4についてはレポートで評価する.レポートの具体的な作成手順については,授業の中で説明する.これらを総合して100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト ノート
参考書 『コロンブスからカストロまで』:E.ウィリアムズ(岩波書店)
『カヌーとビーヴァーの帝国』:木村和男(山川出版社)
『黒人差別とアメリカ公民権運動』:ジェームズ.M.バーダマン(集英社)
関連科目 歴史(1年生),歴史(2年生),日本史(5年生)
履修上の
注意事項
参考文献,視聴覚資料については授業中に紹介する.

【授業計画( 世界史 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 導入
「アメリカ」世界の自然環境および15世紀以前の歴史的環境について概観する.
2 大航海時代(1)
15世紀から16世紀におけるヨーロッパ世界の経済的・社会的・文化的な状況を学習する.
3 大航海時代(2)
コロンブスの「アメリカ」世界到達が与えた経済的・社会的・文化的な影響について学ぶ.
4 植民地の形成と近代奴隷制(1)
16世紀から17世紀における「アメリカ」世界における植民地形成を類型的に学習する.
5 植民地の形成と近代奴隷制(2)
植民地における労働力としての奴隷制導入をめぐる議論と「アメリカ」世界の植民地の実態について学ぶ.
6 砂糖と奴隷(1)
砂糖と奴隷という「世界商品」を通して,大西洋貿易の実態について学ぶ.
7 砂糖と奴隷(2)
17世紀から18世紀の「世界商品」をめぐるヨーロッパ各国の争いと重商主義の成立について学ぶ.
8 大西洋革命(1)
アメリカ独立革命とフランス革命,イギリス産業革命が大西洋貿易と関連して生じたことを学習する.
9 大西洋革命(2)
ハイチ革命について学び,大西洋革命の市民革命としての意味を考える.
10 ふたつの自由(1)
近代世界システムの半辺境としての19世紀前半の合州国南部,カリブ海域,カナダの実態について学ぶ.
11 ふたつの自由(2)
自由貿易制度と奴隷制からの自由という視点から南北戦争について学ぶ.
12 アメリカの世紀(1)
19世紀後半から20世紀の初めにかけてのアメリカ合州国の経済的発展とその社会の変容について学ぶ.
13 アメリカの世紀(2)
19世紀後半から20世紀の初めにかけてのカナダ自治領の成立とラテンアメリカ,カリブ海地域のアメリカ合州国への経済的従属の実態について学ぶ.
14 近代世界システムから見た「アメリカ」世界(1)
16世紀から20世紀までの歴史を通して,現在の「アメリカ」世界が経済的・社会的・文化的に形成されたことを理解する.
15 近代世界システムから見た「アメリカ」世界(2)
16世紀から20世紀までの歴史を通して,「近代」がもたらした人種間対立とそれを超える普遍的論理について理解する.
16 定期試験の解説と後期の導入
前期定期試験の結果について解説する.人種とは何か,民族とは何か,いくつかの定義を紹介し,その定義を具体的に検証する.
17 人種的偏見(1)
人種的偏見のタイプについて理解し,その具体例について,自らの偏見について学ぶ.
18 人種的偏見(2)
歴史的な人種的偏見の形成について,第2次世界大戦におけるアメリカ合州国と日本における例を学習する.
19 人種という幻想(1)
植民地における支配する側と支配される側の人種的葛藤について学ぶ.
20 人種という幻想(2)
植民地という歴史的環境において形成された人種的偏見の例を,19世紀のアメリカ合州国先住民に関する例から学ぶ.
21 マルチニーク島の歴史と文化(1)
フランス海外領マルチニーク島を例として,プランテーション経済が資本主義経済の一形態であることを学ぶ.
22 マルチニーク島の歴史と文化(2)
フランス海外領マルチニーク島を例として,「近代化」が住民に与えた影響について学ぶ.
23 ブラック・ミュージック(1)
「アメリカ」世界における異なる文化の接触が生んだ新しい文化として,大衆音楽を例に,その具体的な形成過程を学ぶ.
24 ブラック・ミュージック(2)
大衆音楽が商業化される過程で生じた人種的偏見と人種融合の実例を学ぶ.
25 公民権運動(1)
1950年代のアメリカ合州国における公民権運動発生の原因と運動の過程について学ぶ.
26 公民権運動(2)
1960年代のアメリカ合州国における公民権運動発生の原因と運動の過程について学ぶ.
27 地域主義と分離主義(1)
人種間の葛藤が近代国民国家の存在を揺るがしている問題を,カナダを例として考える.
28 地域主義と分離主義(2)
人種間の葛藤が近代国民国家の理念を揺るがしている問題を,アメリカ合州国を例として考える.
29 人種的偏見とは何か(1)
「アメリカ」世界における人種問題,民族紛争を克服しようとした先人の言説を紹介し,その課題について考える.
30 人種的偏見とは何か(2)
「アメリカ」世界における人種問題,民族紛争を克服しようとする試みを,21世紀における自らの課題として理解する.


前期定期試験および後期定期試験を実施する.