【 2010 年度 授業概要】
科   目 電気磁気学II ( Electromagnetics II )
担当教員 一瀬 昌嗣 准教授
対象学年等 電子工学科・4年・通年・必修・2単位 ( 学修単位III )
学習・
教育目標
A4-D1(100%)
JABEE
基準1(1)
(d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
電磁気学は,物質中の電子の運動によって生じるさまざまな現象を記述する学問であり,洗練された体系をもっている.この講義では,3年で学んだ静電界にまつわる諸法則に引き続き,電子の運動としての電流と,それに伴って生じる磁界,電界と磁界の対応,そしてそれらを統合するマクスウェル方程式までを理解できるよう,教科書に沿って進めていく.講義・問題演習を通じて,電磁気学の体系がもつ美しさを感じてもらいたい.



1 【A4-D1】 静電界の知識を用いて,定常電流に関する問題を解くことが出来る.
2 【A4-D1】 静磁界についての基本法則を用いて,磁界に関する問題を解くことが出来る.
3 【A4-D1】 静磁界と静電界のベクトル・スカラーポテンシャル表記についてイメージを持って理解し,またベクトルについての計算が出来る.
4 【A4-D1】 磁性体と磁界の関係を理解し,磁界についての物理現象を説明することが出来る.
5 【A4-D1】 様々な特徴を持つ回路について理解し,これらについての問題を解くことが出来る.
6 【A4-D1】 マクスウェル方程式に表された物理をイメージを持って理解できている.また電磁波について理解している.
7 【A4-D1】 特殊相対性理論の成り立ち,ローレンツ変換について理解する.
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1 オーム,キルヒホッフの法則を理解しているか,前期中間試験,レポートから評価する.
2 アンペール,ビオ・サバールの法則を理解してそれらを使うことができているか,前期定期試験,レポートから評価する.
3 ベクトルで電界・磁界を解釈できているか,またベクトル表記が正しく行えているか,前期定期試験,レポートから評価する.
4 磁性体中の磁界の変化,磁性体の種類,磁束密度と磁界の違いが理解できているか,また電磁誘導の物理的理解ができているか,後期中間試験,レポートから評価する.
5 直流回路と交流回路におけるインダクタンスが理解できているか,後期中間・定期試験,レポートから評価する.
6 マクスウェル方程式が書け,各式の物理的意味を理解できているか,また電界・磁界・電磁波(光)の関係が理解できているか,後期定期試験,レポートから評価する.
7 光速度不変の原理,ローレンツ変換を理解できているか,後期定期試験,レポートから評価する.
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成績は,試験70% レポート30% として評価する.試験は4回の平均点とする(70点満点).総合評価は100点満点とし60点以上を合格とする.
テキスト 「電気学会大学講座 電気磁気学」: 山田直平,桂井 誠(電気学会)
参考書 「電磁気学の考え方」:砂川 重信 (岩波書店)
「やくにたつ電磁気学」:平井 紀光 (ムイスリ出版)
「理論電磁気学」:砂川 重信 (紀伊國屋書店)
「電気学会大学講座 電気磁気学問題演習詳解」:桂井 誠,山田 直平 (電気学会)
1・2番目は易しく,3番目は広範囲にわたり詳細に記述されている.4番目は教科書の章末問題の解説.
関連科目 数学I,数学II,物理,電気磁気学I,応用数学
履修上の
注意事項
本授業に対する予習・復習を心がけ,必ず自分で教科書を熟読して論理の展開を追いかけること.電磁気学の書籍やインターネット上のコンテンツは膨大にあるので,授業でふれた内容について自分なりに調べて理解を深めること.レポート課題には,必ず自力で取り組むこと.

【授業計画( 電気磁気学II )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 定常電流とその保存則
電流の定義,時間的に変化しない電流(定常電流)からどのような式が導かれるのか理解することを目標とする.
2 オームの法則
電流・電圧・抵抗の間に成り立つ関係,電荷の移動に必要な仕事(率)の関係からジュール熱,電力の考え方が導かれること等の理解を目標とする.また電池につなげた導線に電流が流れる原因,それによるオームの法則の変更点の理解を目標とする.
3 キルヒホッフの法則
複雑な回路内の電流,電圧,抵抗の求め方を理解し,それらを用いて各値が求められることを目標とする.
4 定常電流の空間的分布
有限の広がりをもつ導体内部における電流分布と,電子の運動で考えた場合のオームの法則について理解することを目標とする.
5 定常電流の場と静電界
上で学んだ2通りの方法で,コンデンサ間に導体をつめた場合の静電容量と電気抵抗の間に成り立つ関係式を考察する.
6 ベクトル積・回転
今後の授業の準備として,ベクトルの外積と回転についての数学的知識を学ぶ.
7 問題演習
第1〜6週の間に学んだ事の理解度の確認として演習を行う.
8 中間試験
静電界の知識はもちろんのこと,オームの法則,キルヒホッフの法則を用いて様々な計算ができること.
9 電流と磁界
電流から磁界を発見するに至った経緯を説明し,電流同士にはたらく力(アンペール力),電流は電荷をもった粒子であることから導かれた力(ローレンツ力)について理解することを目標とする.磁界と磁束密度の違いを理解する.
10 ビオ・サバールの法則
定常電流の作る磁界からビオ・サバールの法則を説明し,ビオ・サバールの法則を用いて様々な問題が解けることを目標とする.またこの法則により,磁束密度の発散について法則が導かれることを解説する.
11 アンペールの法則
閉じた磁力線と電流の間に成り立つ関係式(積分型のアンペールの法則)を説明し,積分型のアンペールの法則を用いて様々な問題が解けることを目標とする.また,磁束密度の発散と積分型のアンペールの法則から磁束密度の回転について法則が導かれることを解説する.
12 ベクトルポテンシャル
ベクトルポテンシャル,スカラーポテンシャルを用いた電界と磁束密度の表し方について解説する.
13 磁気双極子モーメント
物質の磁化・磁化電流について解説する.また電界が電気双極子モーメントで表すことが出来ることからヒントを得て,磁束密度が磁気双極子モーメントから導かれることを解説する.磁気双極子の考え方について理解することを目標とする.
14 磁性体中の静磁界の基本法則
磁性体中の磁化率によって磁界の大きさが導かれることを解説する.
15 問題演習
第9〜14週の間に学んだ事の理解度の確認として演習を行う.
16 強磁性体の磁化
強磁性体はスピンが揃うことで磁化することを解説する.電流から磁界ができることの類推として,磁化電流を導入して磁化を説明する.
17 静磁界と静電界
また静電界で導かれた関係が静磁界では成り立つかどうかの考察を行う.電磁気学におけるE-H対応とE-B対応の違いを把握し,静電界の法則との異同を理解することを目標とする.
18 強磁性体の性質と静磁界
強磁性体についての『磁気遮蔽』,『ヒステリシス損』,『磁位』,『消磁力』などの諸性質について解説する.
19 磁気回路
電気回路からの類推に基づき,『静磁界のエネルギー』,磁気回路における『キルヒホッフの法則』,起電力に対して『起磁力』についての理解を目標とする.
20 インダクタンス1
自己インダクタンス,相互インダクタンスを理解し,コイルに蓄えられるエネルギーを計算できるようになることを目標とする.
21 インダクタンス2
自己インダクタンス,相互インダクタンス間の関係を理解し,無端ソレノイド,無限長ソレノイド,有限長ソレノイド,長岡係数,インダクタンスの直列接続を理解することを目標とする.
22 問題演習
第16〜21週の間に学んだことの理解度の確認として演習を行う.
23 中間試験
磁界に対する知識をしっかりつけ,インダクタンスと回路に関する問題について様々な計算ができること.
24 電磁誘導
ファラデーの電磁誘導の法則・レンツの法則を解説する.
25 電流回路の方程式
回路内を流れる電流の変化に伴い生じる起電力,またそれによる磁界のエネルギー,導体と起電力の関係,発電機と電動電気の原理,電磁誘導,インダクタンスに関する回路について解説した後,それらの問題が解けることを目標とする.
26 マクスウェル方程式
今までの物理的な基本法則を4つの式(マクスウェル方程式)にまとめられることを解説する.
27 電磁波
マクスウェル方程式を解いた結果,光の速度で進む波が導かれ,それが電磁波に対応することを解説する.
28 特殊相対性理論1
相対性理論は,電磁気学のマクスウェル方程式が出発点であったことを解説する.マイケルソン-モーレーの実験から,19世紀に信じられていた「エーテル」の速度が求められなかったことを解説する.
29 特殊相対性理論2
マイケルソン-モーレーの実験を説明するために,ローレンツ-フィッツジェラルドの収縮仮説が有効であることを示し,ローレンツ変換がそれを導く体系であることを解説する.マクスウェル方程式が,ローレンツ変換に対して共変であることを解説する.
30 問題演習
第24〜29週の間に学んだ事の理解度の確認として演習を行う.


本科目の修得には,60 時間の授業の受講と 30 時間の自己学習が必要である. 前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.