【 2009 年度 授業概要】
科   目 システム制御工学 ( Systems Control Engineering )
担当教員 笠井 正三郎 教授
対象学年等 電気電子工学専攻・1年・後期・選択・2単位
学習・
教育目標
A3(30%) A4-AE3(70%)
JABEE
基準1(1)
(c),(d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
制御対象のモデル化,線形システム理論を基礎とし,最適制御,ロバスト制御などの設計理論を学ぶ.また,制御系CADとしてMATLABを用いて,実際にシミュレーションを行い,制御設計の手法を習得する.



1 【A4-AE3】  スタティックシステムとダイナミカルシステムの違いを説明できる.
2 【A4-AE3】  簡単な集中定数系の物理システムについてモデル化ができ,状態方程式,出力方程式の形に整理できる.
3 【A4-AE3】  システムの可制御性,可観測性を判別することができる.
4 【A4-AE3】  システムの安定性について説明することおよび,具体的に判別することができる.
5 【A4-AE3】  最適制御・ロバスト制御について,その特徴を説明できる.
6 【A3】  MATLABにより,モデルを表現し,可制御性,安定性などを評価し,システムの応答特性をシミュレーションできる.
7 【A3】  MATLABにより,フィードバック制御のコントローラを設計し,その効果をシミュレーションにより確認できる.
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1 定期試験にて評価する.
2 簡単なシステムを例として,制御モデルを導出できるか,レポートおよび定期試験にて評価する.
3 簡単な状態方程式,出力方程式で表現されたシステムに対して,可制御性・可観測性を評価できるか,定期試験にて評価する.
4 簡単な線形システムに対して安定判別が出来るか,定期試験にて評価する.
5 定期試験にて評価する.
6 簡単なシステムを例として,レポートおよび定期試験にて評価する.
7 レポートおよび定期試験にて評価する.
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成績は,試験70% レポート30% として評価する.総合評価は100点満点とし,60点以上で合格とする.
テキスト 「線形制御理論入門」:志水清孝・大森浩充共著(培風館)
参考書 「システム制御理論入門」:小郷寛・美多勉共著(実教出版)
「ロバスト線形制御」:劉康志著(コロナ社)
「MATLABによる制御系設計」:野波健蔵編著(東京電機大学出版局)
関連科目 電子工学科から進んできた学生:制御工学I,II,ソフトウェア工学電気工学科から進んできた学生:制御工学I,システム工学
履修上の
注意事項
システム制御工学では,制御工学の基礎的な知識と実際に制御設計を行うために簡単なコンピュータシミュレーションの知識を前提としている.

【授業計画( システム制御工学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 スタティックシステムとダイナミカルシステム
一般的にシステムは,内部にダイナミクスをもつシステム(ダイナミカルシステム)とダイナミクスをもたないシステム(スタティクシステム)に大別される.システム制御で扱うものは内部にダイナミクスを持つシステムであり,いろいろな例を挙げて,ダイナミカルシステムを紹介する.
2 システムの数学モデル(状態空間表現)
システムを表現する方法にはいろいろあるが,本講義では,システムのダイナミクスを記述する変数に対する時間微分方程式(状態方程式)として記述する方法について述べる.一般的には,状態変数の時間的変化は,状態変数と時間の関数で特徴付けられるが,本講義では,線形システムを対象として数学モデルを構築する.
3 可制御(可安定)と可観測(可検出)
システム内部には直接入出力に関係しないダイナミクスが存在する可能性があり,その部分でシステムが不安定になることもある.従って,内部のダイナミクスが入力で変化させることができるか(可制御性),内部のダイナミクスを出力により観測することができるか(可観測性)を知ることが必要であり,その方法を述べる.
4 システムの安定性
制御するということを考えるうえで,まず前提となることが,「安定」である.ここでは,安定性についての定義を行い,線形システムが安定であるための条件について講義する.
5 状態フィードバックによる安定化(極配置法)
可制御なシステムでは,状態変数に適当な係数を掛けたものの和を制御入力とすることにより(状態フィードバック),任意の極配置を実現することができる.このことを示すとともに,希望する極配置を実現するフィードバック係数の求め方を講義する.
6 最適制御
最適制御の概念を理解し,2次形式で表現された評価関数を最小にする最適制御が状態フィードバックにより実現できることを知る.2次のシステムについて実際にフィードバック係数を求め,制御後の応答特性を評価する.
7 状態観測器(オブザーバ)
実際のシステムでは,全ての状態を観測することが出来るかどうかわからないし,全ての状態を観測するためにコストがかかり過ぎたりすることがある.その場合,可観測であれば,直接観測することが出来ない状態量を推定することが可能である.この状態観測器をオブザーバと呼び,その設計方法について説明する.
8 MATLABによるシミュレーション
制御系の設計を行うには,CADツールが不可欠である.制御系のCADツールではMATLABがよく使われており,状態方程式の記述から制御系設計,過渡応答特性を求めるまでの一連の流れを中心に,MATLAB,Simulink の使い方を実際に演習を行いながら説明する.
9 演習(MATLAB,Simulinkによる最適制御の演習)
第2週から第7週までの内容について課題を与え,MATLABを用いて制御系のシミュレーションを行う.
10 ロバスト制御とは
現代制御などではモデルと異なる特性の場合にはその動作が保障されない.実際のシステムでは,正確なモデルが得られなかったり,使用状況で特性が変動する場合がある.そのような場合でも安定に制御できなければ実際には使うことが出来ない.このような変動を考慮した制御がロバスト制御であり,その考え方を説明する.
11 不確かさの分類と数学的表現
システムの変動部分,あるいは誤差のある部分を不確かさとして考え,それをモデルの中に表現する必要がある.不確かさについても幾つかの表現形式があり,それらについて説明する.
12 ロバスト安定とロバスト性能(小ゲイン定理)
ある不確かさが存在する場合でも,安定化できることをロバスト安定,性能を保障することをロバスト性能という.これらを保証するための条件が小ゲイン定理をもとにして得られることを説明する.
13 H∞制御
ロバスト制御の1つにH∞制御があり,この制御方法について考え方の概要と,使い方(解法)を例題中心に説明する.
14 MATLABを用いたロバスト制御のモデル化と制御器の設計
MATLABを用いて第13週に説明した例題を実行し,コントローラの特性,制御器を実装したときの応答特性を求め,使い方を習得する.
15 演習(MATLABによる制御器の設計とシミュレーション)
簡単なH∞制御の課題をMATLABを用いて解く.


後期定期試験を実施する.