【 2008 年度 授業概要】
科   目 応用物理 ( Applied Physics )
担当教員 (前期)豊島 史郎 非常勤講師 (後期)芝田 道 非常勤講師
対象学年等 都市工学科・4年・通年・必修・2単位 ( 学修単位III )
学習・
教育目標
A2(100%)
JABEE
基準1(1)
(c),(d)1
授業の概要
と方針
「力学」問題に,「振動」,「波の伝搬」,「熱」分野も加えた幅広い内容を,微積分やベクトル解析といった手段を使って解く.対象分野が広いのでやや概論的になるが,できるだけ具体的問題を取り上げて理解度を上げることを試みる.また,自然現象のうち,電気磁気的現象を理解する上で重要な基礎的概念を修得し,それを現実の問題に応用する能力を養う.



1 【A2】  運動量保存則の意味を理解し,簡単な系にこの法則を適用して解くことができる.
2 【A2】  基本的な剛体形状に対して慣性モーメントを求めるとともに,回転の運動方程式を立て,それを解くことができる.
3 【A2】  減衰振動,強制振動系に対する微分方程式を立てて,それを解き,その系の振動特性を具体的に説明することができる.
4 【A2】  弦の振動,棒中の縦波の伝搬の方程式(波動方程式)を求める手順を理解し,振動形を仮定して,その解を求めることができる.
5 【A2】  熱の移動,分子の運動,物質の相について理解し,具体的な問題を解くことができる.また,熱力学の第1・第2法則の意味を理解できる.
6 【A2】  電荷間に働くクーロン力,近接作用としての電界,電位などの関係を理解する.
7 【A2】  電流や電気抵抗の概念とその取り扱い方を理解する.
8 【A2】  磁界における磁荷に働く力,すなわち磁気のクーロンの法則について理解する.
9 【A2】  ファラデーの法則や諸定理の応用ができるようになる.
10 【A2】  電磁波の特性とそのエネルギーについて解説する.












1 運動量保存則を適用し,解を求められるかどうかを演習問題のレポートおよび定期試験によって評価する.
2 基本的な剛体形状に対して慣性モーメントを求めるとともに,回転の運動方程式を立て,それを解くことができるかを演習問題のレポートと定期試験によって評価する.
3 減衰振動,強制振動系に対する微分方程式を立てて,それを解き,その系の振動特性を具体的に説明することができるかどうかを,演習問題のレポートおよび定期試験によって評価する.
4 弦の振動,棒中の縦波の伝搬の方程式(波動方程式)を求める手順を理解し,振動形を仮定して,その解を求めることができるか,を演習問題のレポートおよび定期試験によって評価する.
5 熱の移動や分子の運動に関する具体的な問題を解くことができるか,また,熱力学の第1・第2法則の意味が理解できているか,を演習問題のレポートと定期試験によって評価する.
6 電荷間に働くクーロン力,近接作用としての電界,電位などの関係を理解しているか中間試験で評価する.
7 電流や電気抵抗の概念とその取り扱い方を理解しているか演習問題のレポートと中間試験で評価する.
8 磁気のクーロンの法則について理解しているか中間試験で評価する.
9 ファラデーの法則や諸定理の応用ができるか定期試験で評価する.
10 電磁波の特性とそのエネルギーについて理解しているか定期試験で評価する.




成績は,試験80% レポート20% として評価する.100点満点とし60点以上を合格とする.試験成績は中間試験,定期試験の平均点とする.
テキスト 「高専の応用物理」:小暮陽三編集(森北出版)
参考書 「理工系の標準力学」:大場一郎・中村純(培風館)
「理工基礎 力学入門」:青野修・大野宏毅著(サイエンス社)
「電気磁気学」:石井良博著(コロナ社)
「100問演習電磁気学」:今崎正秀著(共立出版)
関連科目 物理
履修上の
注意事項
関連科目は1年および2年の物理である.本教科は1,2年の物理の内容を踏まえ,その応用および1,2年で触れなかった範囲を講義する.相互に関連の少ない幅広い分野の内容を学ぶことになる.授業に対する理解もその都度完結するよう,予習・復習に努めてほしい.

【授業計画( 応用物理 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 力学の基本に関する復習
これまでに学んだ「運動の法則」,「仕事とエネルギー」につき,具体例を使いながら復習する.
2 二体問題
最初にニュートンの運動の法則の復習を行ったあと,2つの質点が互いに力を及ぼし合う系に対する解がニュートンの運動の法則を使って解けることを示す.
3 運動量保存則
外力の和がゼロである場合,質点系における全運動量(質量と速度の積和)が時間とともに変化しないことを,運動方程式と作用・反作用の法則から導き,それを具体的事例に適用する.
4 力のモーメントと回転の運動方程式
位置ベクトルと力の外積として力のモーメントを定義し,質点系における運動方程式と力のモーメントとを組み合わせることによって,回転の運動方程式が得られることを示す.
5 軸周りの剛体の回転に対する運動方程式
剛体の力学を質点系の力学の拡張であると位置づけ,上に記した質点系の運動方程式を用いて,剛体の運動方程式を導く.
6 回転の運動エネルギー
回転している剛体が有する運動エネルギーが角速度と慣性モーメントを使って表されることを説明する. 慣性モーメントは剛体固有の量であり,これを各種形状について計算する手順を示す.
7 弾性体の変形と弾性定数
実在する固体は力を受けると変形する. 引張試験を例にとって,力と変形の関係を定性的に示すとともに,弾性体の性質を特徴づける弾性定数(ヤング率,ポアソン比,体積弾性率等)の意味と,それらの相互関係について解説する.
8 中間試験
これまでに学んだ範囲について出題する.
9 試験結果の解答,速度に比例した抵抗力を受ける減衰振動
授業の前半に試験結果の解答を説明する.2階の定数係数線形微分方程式の解について復習したあと,1自由度の振動系に速度に比例した減衰項が加わった場合の解を求める手順を示す.
10 減衰振動(続)
減衰の大きさによって減衰振動が変化するようすを解説する. また,いくつかの具体的な減衰振動モデルを設定して解を求め,その結果について解説する.
11 強制振動と共振
減衰振動に周期的な外力が加わった場合の振動解を導出し,振幅が外力の角振動数によって大きく依存して変化することを式および図によって示す.特に振幅が最大になって振動する(共振)現象は重要であるので,この場合の条件や振動の状態について詳しく説明する.
12 弦を伝わる波動(弦の振動)
張力で張られた弦を横にはじいたときの弦の振動の方程式(波動方程式)を力の釣り合いとニュートンの運動の法則から導き,それが偏微分方程式となることを示す.また,解の基本的な性質について解説する.
13 細い棒を伝わる縦波
細い棒の縦方向の振動の方程式が,応力とひずみの関係式とニュートンの運動の法則から導かれ,前回と同様な波動方程式が得られることを示す.時間が許せば,流体中を伝わる縦波の場合についても解を示す.
14 温度と熱,熱力学の第1・第2法則
温度と熱についての基本的な事項をまとめて示した後,熱の移動(対流,伝導,放射)について概要を解説する. また,熱力学系でのエネルギ保存則である「熱力学の第1法則」と,現象が進行する方向を示す「熱力学の第2法則」についての概要を,今回と次回にわたって説明する.
15 熱力学の第1・第2法則(続)
前回の続きを行う.
16 静的な電気1(電荷と力)
静電場における電荷と電荷に働く力,すなわちクーロンの法則について解説する.
17 静的な電気2(ガウスの法則)
電界とは何かを解説し,ガウスの法則を論ずる.
18 静的な電気3(電気容量,誘電体)
電気容量と誘電体について解説し,更にその計算方法について言及する.
19 静的な磁気1(磁荷と力)
磁界における磁荷に働く力,すなわち磁気のクーロンの法則について解説.
20 静的な磁気2(磁性体)
いろいろな磁性体の特性について解説する.
21 電流と磁界1(電流)
オームの法則とキルヒホッフの法則について解説する.
22 電流と磁界2(超伝導)
よく知られた現象である超伝導について解説する.
23 中間試験
後期のこれまでに学んだ範囲について出題する.
24 中間試験解答,電流と磁界3(電流磁界の計算法)
中間試験の解答を解説する.荷電粒子に対するビオ−サバールの法則,アンペールの法則,ローレンツ力について解説する.
25 変動する電磁界1(電磁誘導)
コイルの電磁誘導について解説する.
26 変動する電磁界2(インダクタンス)
インダクタンスについて解説する.
27 変動する電磁界3(コイルと磁界)
コイルと磁界のエネルギーについて解説する.
28 電磁波1(変位電流)
拡張されたアンペールの法則について解説する.
29 電磁波2(電磁方程式)
マクスウェルの電磁方程式について解説する.
30 電磁波3(電磁波)
電磁波の特性とそのエネルギーについて解説する.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.