【 2008 年度 授業概要】
科   目 応用物理I ( Applied Physics I )
担当教員 松田 忠重 教授
対象学年等 電気工学科・3年・通年・必修・2単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
A2(100%)
授業の概要
と方針
自然科学の基礎である物理学の基本である力学についての講義を行う.微積学を修得した学年なので,運動方程式を基にして力学を解析学的に取り扱う.と共に,身近に起こる力学現象を解析学的に考察しながら,出来るだけ多くの具体的例を演習問題として解く.



1 【A2】  ベクトル,複素数が理解できて使える.
2 【A2】  1次元での簡単な微分方程式を作りそれを解くことができる.
3 【A2】  ニュートンの運動の法則を理解し,これを利用して重力やばねの力による運動を導き出すことができる.
4 【A2】  遠心力などの非慣性空間で生じる力を理解し,これを利用して問題を解くことが出来る.
5 【A2】  運動量保存,角運動量保存,力学的エネルギー保存を理解し,これらを有効に活用することが出来る.
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1 複素数のたし算,かけ算,割り算ができる.ベクトルのたし算,内積,外積の計算が出来る.位置,速度および加速度のベクトルを計算でき図に表示できる.これらを前期中間試験で60%以上正解を合格として評価する.
2 1次元速度,加速度の簡単な微分方程式を作り,それを解くことができることを,前期中間試験で60%以上正解を合格として評価する.
3 ニュートンの運動の法則を用いて微分方程式を立て,重力やばねの力による運動を解析学的に導き出すことができるかどうかを,前期定期試験と後期中間試験で60%以上正解を合格として評価する.
4 遠心力などを利用して問題を解決出来るかどうかを後期定期試験で60%以上正解を合格として評価する.
5 運動量保存,角運動量保存,力学的エネルギー保存を理解し,これらを有効に活用することが出来ることを,後期定期試験で60%以上正解を合格として評価する.
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成績は,試験85% レポート15% として評価する.試験成績は,中間試験と定期試験の平均点とする.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「力学」:小出昭一郎著(装華房)
参考書 基礎演習シリーズ「物理学」:小出昭一郎著(装華房)
「パリティ物理学コース セメスター物理I」:大槻 義彦 著(丸善株式会社)
バークレー物理学コース「物理1」:今井功監訳(丸善株式会社)
バークレー物理学コース「物理2」:今井功監訳(丸善株式会社)
関連科目 応用物理II,電磁気学II,電気機器I,制御工学,電気回路III
履修上の
注意事項
暗記に頼らず,出来る限り定性的および定量的に理解するように努め,疑問があれば積極的に質問するか,またオフィスアワーズ有効に利用する. 関連科目の「数学」の微分,積分および微分方程式の計算が出来ること.また,ベクトルの取り扱いに習熟していること.

【授業計画( 応用物理I )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 ベクトル1
ベクトルとスカラについて.ベクトルによる和,差,内積,外積
2 ベクトル2
時間とともに3次元空間を変化する位置,速度,加速度のベクトルの計算とそのグラフ.重力空間の重力ベクトル,点電荷からの放射状の電界のベクトル,直線上の電流のつくる渦状磁界ベクトル.
3 複素数
複素数による和,差,積,商.極形式における絶対値と偏角.
4 関数1
関数,級数.極限,収束,発散.
5 関数2
関数の微分と積分.関数のテイラー展開(マクローリン展開).特に,三角関数を幾何学でなく展開して解析学的に表していることに関して.また,この展開を用いた近似計算の方法について.
6 位置ベクトルと速度1
位置ベクトル,変位,平均速度,速度ベクトル,について.
7 位置ベクトルと速度2
簡単な微分方程式とその解法について.速度ベクトルから位置ベクトルを求める.定積分,不定積分の復習.演習問題.
8 中間試験
これまでの内容についての試験を行う.
9 中間試験の解答および解説
実施した試験の結果を示し,解答および解説を加え,注意すべき点等を指摘する.
10 ニュートンの運動の第1法則
ニュートンの運動の第1法則すなわち,慣性の法則についての物理的な意味について説明する.慣性抵抗について.
11 ニュートンの運動の第2法則
ニュートンの運動の第2法則すなわち,運動方程式の物理的な意味,方程式の立て方および解法について説明する.慣性抵抗と慣性質量について.
12 ニュートンの運動の第3法則
ニュートンの運動の第3法則すなわち,作用・反作用の法則(相互作用力)についての物理的な意味および身近に生じている現象について説明する.
13 重力空間での落下の問題1
空気摩擦なしの重力空間でのガリレオの落下の実験結果を,ニュートンの運動の第2法則を用いて導く.斜面を摩擦なしに滑って落ちる物体の運動を導く.
14 重力空間での落下の問題2
ある高度(仰角)と速度を初期条件として与えられた弾丸の軌跡(2次曲線)を求める.夏休みレポート課題1出す.
15 重力空間での落下の問題3
空気摩擦ありの重力空間でのガリレオの落下の実験結果を,ニュートンの運動の第2法則を用いて導く.その他,静摩擦,動摩擦,ころがり摩擦などの摩擦の力について.夏休みレポート課題2,3出す.
16 振り子の振動
振り子の振動を振れ角が小さいとして,運動方程式を単振動の2階微分方程式に近似して解く.初期値をいろいろ変えて解く.
17 ばねの運動
ばねの運動方程式は振れ角が小さい振り子の運動方程式と同じ.摩擦がある場合,車のサスペンションの振動の方程式になる.巻き線抵抗を持つコイルとコンデンサの共振回路の電流の方程式と同じ.いくつか代表的な場合の解を求める.
18 慣性空間,非慣性空間
加速している電車内やエレベータ内で受ける力.円軌道を走るとき受ける遠心力.
19 万有引力,遠心力
万有引力と遠心力から人工衛星や月などの円運動を導く.
20 運動量保存1
外力が無い場合,慣性の法則が成り立つ.運動量について.外力が無く作用反作用がある場合,運動量が保存される.衝突,分裂など具体例で説明する.
21 運動量保存2
衝突について.衝突,ロケットなど,演習問題で説明する.
22 角運動量保存
回転力について.角運動量について.回転力が無い場合,角運動量が保存される.ケプラー第2法則:面積速度一定,フィギアスケータの回転などで説明.演習問題.
23 中間試験
これまでの内容についての試験を行う.
24 中間試験の解答および解説
実施した試験の結果を示し,解答および解説を加え,注意すべき点等を指摘する.
25 力と位置エネルギー
力のベクトルと位置エネルギーについて.等ポテンシャル曲線と力のベクトルについて.引力や重力による斜面での力と位置エネルギーなどの具体例.
26 位置エネルギーと力学的仕事
位置エネルギーと力学的仕事について.保存力,非保存力について.
27 力学的エネルギー保存1
運動方程式から,運動エネルギーと位置エネルギーの和が不変になる.それを力学的エネルギー保存と呼ぶ.簡単な重力空間での力学的エネルギーを求める.またそれは時間にたいして不変になる.
28 力学的エネルギー保存2
重力空間で垂直面内で回転する運動の力学的エネルギー.初速度によって地球脱出するロケット.バネの振動における力学的エネルギー.演習問題.
29 力学的エネルギー保存3
摩擦によるエネルギー損失がある場合.簡単な重力空間での空気摩擦がある場合の力学的エネルギー.
30 力学的エネルギー保存4
動摩擦がある場合:車がブレーキでどのように制動されるか.制動距離は初速度の2乗に比例する.ころがり摩擦がある場合:具体的数値を用いて,バッテリーカーが何キロ走行できるか.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.