【 2008 年度 授業概要】
科   目 電気数学 ( Electrical Mathematics )
担当教員 藪 忠司 非常勤講師
対象学年等 電子工学科・3年・通年・必修・2単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
A1(100%)
授業の概要
と方針
理工学系の基礎としての線形代数と複素関数論の基礎,ラプラス変換の基礎を学ぶ. 学ぶ内容が幅広く,また4年で学ぶ応用数学のベースともなるため,こまめに演習を実施して,具体的な問題を解き,理解を深めてもらうようにしたい. なお,下記の2册のテキストだけではカバーできない内容があるので,その点についてはプリントで補うこととする.



1 【A1】  線形空間と線形写像に関わる基本的な事項が理解できる.
2 【A1】  クラメルの公式や消去法を使って,簡単な連立一次方程式を解くことができる.
3 【A1】  行列の固有値,固有ベクトルを計算し,標準化,対角化を行うことができる.
4 【A1】  行列や行列式の計算ができる.
5 【A1】  複素数の加減乗除の計算ができ,複素数を複素平面上の点として表現できる.
6 【A1】  複素関数の連続性や,正則関数の定義とその性質を理解するとともに,コーシーリーマンの方程式を使って,正則性の判定ができる.
7 【A1】  正則関数の基本的な性質を理解するとともに,簡単な場合についてその写像(等角写像)を描かせることができる.
8 【A1】  ラプラス変換により,常微分方程式が代数演算で解けることを理解し,工学におけるラプラス変換の重要性を認識する.
9 【A1】  基本的な関数のラプラス変換を定義式から求めることができる.
10 【A1】  たたみこみ(合成積)がラプラス変換で簡単に求められることを理解する.












1 線形部分空間かどうかの判定,一次独立・一次従属性の判定,具体的な線形写像の計算ができるか等を前期中間試験およびレポート・ショートテストで評価する.
2 具体的な問題に対して連立方程式が解けるか,行列の階数が求められるかどうかを前期中間試験・定期試験で評価する.
3 具体的な行列に対して,固有値や固有ベクトルを求めるとともに,その標準化,対角化を行うことができるかどうかを,前期定期試験およびレポート・ショートテストによって評価する.
4 行列,行列式の意味や基本的な性質が正しく理解できているかどうかを,前期中間試験・定期試験およびレポート・ショートテストによって評価する.
5 複素数についての基本演算ができるかどうか,複素平面の意味が理解できているかどうかを,後期中間試験およびレポート・ショートテストによって評価する.
6 具体的な複素関数に対して,コーシーリーマンの関係式を正しく適用し,正則かどうかの判定ができるかどうかを後期中間試験およびレポート・ショートテストによって評価する.
7 指数関数や三角関数などの代表的な正則関数に対して,基本的な演算,微分計算を実行でき,写像を描かせることができるかどうかを,後期中間試験およびレポート・ショートテストによって評価する.
8 ラプラス変換を使って具体的な常微分方程式の問題が解けるかどうかを後期定期試験およびレポート・ショートテストで評価する.
9 ラプラス変換の定義式が正しく理解されており,それを用いて変換式を導出できるかどうかを,後期定期試験およびレポート・ショートテストによって評価する.
10 たたみこみの定義が正しく理解できているかどうか,またラプラス変換と逆変換を適用してたたみこみの計算を実行できるかどうかを,後期定期試験およびレポート・ショートテストによって評価する.




試験70% レポート15% ショートテスト15% ,100点満点で60点以上を合格とする.なお試験成績は中間試験と定期試験の平均点とする.
テキスト 「高専の数学II」:田代編(森北出版)
「改訂応用数学」:田河生長他著(大日本図書)
プリント
参考書 「新編 高専の数学II問題集)」:田代編(森北出版)
「やさしく学べる線形代数」:石村園子著(共立出版)
「新訂応用数学問題集」:(大日本図書)
関連科目 D2「数学II」,D4「応用数学」,D4「数値解析」,D4「電子計測」,D5「通信工学」,D5「制御工学II」
履修上の
注意事項
内容が多岐にわたっており,進捗ペースも速いと思われるので,予習・復習を行い,その都度授業内容を理解するように努力すること.

【授業計画( 電気数学 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 行列の復習
2年で学んだ「行列の基本的性質」,「一次変換」,「逆行列」等についての復習を行う.
2 線形空間
線形空間の定義と,線形空間において成り立つ諸法則について説明するとともに,線形空間の例を紹介する.
3 線形写像
線形写像の定義と,線形写像の例,線形写像の像と核について解説する.
4 行列式の性質
行列式の定義と基本的性質について解説する.
5 演習
これまでに学習した内容について,演習を行い理解度を確認する.
6 行列式の展開
余因子を使って行列式を展開する手順と具体的事例について示す.
7 連立方程式と行列式
行列式を使って連立一次方程式を解くクラメルの公式,およびその他の基本的な連立一次方程式の解法(掃き出し法,ガウスの消去法など)について解説する.
8 中間試験
1〜7回までの内容について試験する.
9 前期中間試験の解答と復習
試験問題の解答を行うとともに,正解率の低かった問題について復習を行う.
10 行列の階数
行列の階数(ランク)の定義,階数の求め方,階数と連立一次方程式との解とのかかわり等について解説する.
11 固有値と固有ベクトル
行列の固有値や固有ベクトルは工学問題とつながりの深い重要な量である.ここでは,固有値と固有ベクトルを求める一般的な手順と,具体的な計算例を示す.
12 行列の対角化
与えられた行列の固有値と固有ベクトルを用いて行列を対角化する手順を解説する.
13 2次形式
対称行列に対する「2次形式」の定義と,2次形式が正値となるための条件について解説する.
14 標準形
2次形式の標準形について解説する.
15 複素数の性質
複素数の基本的な諸性質を解説し,それを使った演算を行わせる.
16 試験の解答と復習
試験問題の解答を行うとともに,正解率の低かった問題について復習を行う.
17 複素数の極形式表示,オイラーの公式
・複素数を絶対値と偏角を用いて表す極形式表示について説明し,それとオイラーの公式との関係を示す.・極形式表示を使うと,複素数の積と商,累乗と累乗根の計算が簡単に求められることを説明する.
18 複素関数とその微分
複素関数を定義し,その極限,連続性,微分という一連の流れを示す. 複素関数の微分法は表面的には実数の場合と同じであることを理解させる.
19 正則関数の基本
正則関数の意味を示し,複素関数が正則関数であるための必要十分条件を与えるコーシーリーマンの関係式を導く.また,与えられた関数が正則であるかどうかをコーシーリーマンの関係式を使って判定する.
20 指数関数と三角関数,対数関数
基本的な複素関数である指数関数と三角関数,対数関数を定義し,それらの正則性を確かめるとともに,基本的な性質について解説する.
21 調和関数と等角写像
・正則関数の実部と虚部が調和関数であること,調和関数が満足するラプラスの方程式は工学分野における重要な方程式であることを説明する. ・複素変数 z からその関数 w = f(z) を求めることは一種の写像であり,等角写像という性質を持つことを理解させる.
22 ラプラス変換の定義
実数関数 f (t) から複素数sの関数 F(s)への変換であるラブラス変換について定義式と簡単な変換例を示す.
23 中間試験
16〜22回までの内容について試験する.
24 試験の解答,ラプラス変換の基本的性質(1)
ラプラス変換の基本的性質(線形性,相似性,移動法則)について解説する.
25 ラプラス変換の基本的性質(2)
ラプラス変換における微分積分法則について解説するとともに,基本的な関数の変換例を示す.
26 「たたみこみ」およびそのラプラス変換
たたみこみ(合成積)の定義と,そのラプラス変換の考え方,結果について示す.
27 演習
ラプラス変換についてこれまでに学習した内容について演習を行い,理解度を確認する.
28 逆ラプラス変換の定義
F(s)からf(t)への変換である逆ラプラス変換の考え方とその基本的性質について解説する.
29 部分分数分解法
F(s)を部分分数に分解することによって,逆ラプラス変換を求める手順を説明し,演習によって,その手順を理解させる.
30 常微分方程式への応用
ラプラス変換を用いると,常微分方程式が極めて容易に解けることを示し,演習を通じてそれを理解させる.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.