【 2008 年度 授業概要】
科   目 プロセス設計 ( Process Design )
担当教員 世古 洋康 非常勤講師
対象学年等 応用化学科・5年・通年・必修・2単位 ( 学修単位III )
学習・
教育目標
A4-4(100%)
JABEE
基準1(1)
(d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
化学プロセスの工業化手順を習得する.手順として,(1)実験データを解析して物質および熱収支式を導く,(2)これら収支式に基づきシミュレーションによって最適操作を見出す,(3)そこから得られる最適操作や利益・リスクを設計段階で予測(経済性評価)し生産設備の建設可否の判定法を学ぶ.(4)建設された設備の運転管理(制御,安全・環境対策など)法を習得する.



1 【A4-4】  プロセス内にあるユニット(装置),特に反応器内の物質および熱収支式の立て方と解析法の習得.
2 【A4-4】  実験室から工業化に至った2つの実プロセスを例に,ユニットのモデル化と合成を行い,スケールアップの実際を習得する.
3 【A4-4】  製品の製造原価の内訳と建設費の推算法を習得し,生産設備建設の可否を判定できるようにする.
4 【A4-4】  建設されたプロセスの運転法(制御,安全,環境問題など)の概要を理解する.
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1 前期中間試験でプロセス合成法が理解できているかを評価する.
2 課題および前期定期試験でユニット内のモデル化(物質収支および熱収支)の理解度を評価する.
3 課題,演習と後期中間試験において,経済性評価を含めた建設可否の意思決定の手順を説明出来ているかを調査する.
4 あなたが工場建設のProjectリーダーとなったとき,何をするか.後期定期試験でそれぞれの考えを記述させ,その到達度を評価する.
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成績は,試験70% 課題、演習30% として評価する.なお,試験成績は,中間試験と定期試験の平均点とする.100点満点で60点以上 を合格とする.
テキスト 「プロセス設計」 : 編集 世古洋康
参考書 プロセス設計学入門:東稔・世古・平田共著 (裳華房)
化学反応工学:東稔・浅井著,(朝倉書店)
Chemical Reaction Engineering: O. Levenspiel,(John Wiley & Sons 1999)
関連科目 化学工学,反応工学
履修上の
注意事項
モデル化では数式(行列,微分方程式など)が多く出てくる.数式はコンピュータが解いてくれると割り切り,モデル化の手法を学んで欲しい. また,Excelで微分方程式が解けるようにする.

【授業計画( プロセス設計 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 化学プロセスの歩み
20世紀後半から今日に至るまでの化学工業の変遷を知る.次いで,化学プロセス,化学プラント,生産システムという言葉の意味の違いを解説する.
2 化学プロセスの特徴と設計手順1
化学反応(気相,液相,異相系)および化学反応器の種類を説明する.化学反応によって生じる(吸収される)熱量の推算法を学ぶ.
3 化学プロセスの特徴と設計手順2
化学プロセスの多様性(回分法と連続法の選択基準,気相法と液相法の選択基準)について,ガソリン製造および酢酸ビニル製造プロセスの変遷を通して選択基準を解説する. また, プロセスの設計の手順を学ぶ.
4 化学プロセスの特徴と設計手順3
フローシートの作成法の基礎を学ぶ. 特許の重要性と検索法について解説する. 行列計算(復習の意味を含め)の課題を与える.
5 プロセス設計の基礎1
連続系および回分系の物質収支と熱収支の導き方(モデル化)を学ぶ.
6 プロセス設計の基礎2
連続系での反応器,分離器,分流器,混合器,交換器などの行列表示法を解説し,プロセス合成(多くのプロセスをつないだ状態)法を例題を使って学ぶ. プロセス合成の課題を与える.
7 プロセス設計の基礎3,Excelで物質・熱収支を解こう1
課題の解説. 微分方程式をルンゲクッタ法(逐次計算)で解くアルゴリズムを理解する.汎用プログラム(Excelのマクロ使用)の利用法を説明する.
8 中間試験
1回目から7回目までの試験.
9 中間試験の解答.Excelで物質・熱収支を解こう2
幾つかの例題で,ルンゲクッタ法の計算法を学んだ後,回分反応モデルを解く課題を提出する.
10 Excelで物質・熱収支を解こう3
シミュレーションによって,回分反応の特性を理解する.計算結果から回分操作の最適条件を導く.
11 最適化法1
最適化のための目的関数設定法を解説し,モデル化で得た数式のパラメータ値の算出法など,プロセス設計によく利用される手法(図解法,ニュートン法,シンプレックス法)を学ぶ.シンプレックス法の課題を与える.
12 最適化法2
課題の解説. 動的計画法について解説する.
13 回分反応の解析1
実験データから反応速度定数の算出を行いアレニウス式に整理する.実プラントのデータを使用.課題を与える.
14 回分反応の解析2
学生による課題の発表.回分反応の結果に基づき,スケールアップで連続撹拌槽型反応器への移行の手順を説明する.データ解析ではルンゲクッタ法を利用する.
15 回分反応の解析3
連続槽型反応器と回分反応器の違いの解説と,連続槽型反応器の温度制御法を学ぶ.
16 連続プロセスの解析1
気相接触酸化反応の開発において,実験装置の組立て,データの採取,データの解析法について解説する.
17 連続プロセスの解析2
データ解析から,パラメータ(速度定数,伝熱係数,発熱量)の推算を行なう.課題として,ルンゲクッタ法でのシミュレーションの課題を与える.
18 連続プロセスの解析3
課題の発表. 非定常状態(スタートアップ,シャットダウンなど)解析について触れる. 生産プラント設計のための,プロセス合成法を解説する.
19 連続プロセスの解析4
プロセス合成で得られた方程式の意味を解説し,シミュレーションによって最適操作を見出す意味を学ぶ.
20 プロセスの経済性評価1
工場で生産される製品の原価構成を説明する.
21 プロセスの経済性評価2
夏休み課題の解説.生産量と原価の関係および設備投資の採算性を評価する手順を説明する.
22 プロセスの経済性評価3
工場建設費の推算法を例題を通して学ぶ.工場管理システムの変遷について学ぶ.
23 中間試験
16回目から22回目までの試験.
24 中間試験の解答.化学プロセスの計算機制御1
近年の化学プロセスの計装システムおよびP&ID図面の解説を行なう.
25 化学プロセスの計算機制御2
課題の発表.あいまい制御の一例として「エキスパートシステム」を学び,計算機制御の基本構造を学ぶ.
26 化学プロセスの計算機制御3
課題の発表.あいまい制御の一例として「ファジー制御」を学ぶ.さらに,計算機制御の基本構造を学ぶ.
27 化学プロセスの運転管理1
工場の運用・管理に必要な事項と,現在の運転管理システムの課題について説明する.
28 化学プロセスの運転管理2
安全対策,危機管理に触れ,安全対策で注目されているHAZOPを解説し, 課題として精留塔のP&ID図面でHAZOPのガイドワードの適用を行なう.
29 化学プロセスの運転管理3と次世代プロセスの展望と対応
課題の発表(グループで).環境・健康対策,エネルギー対策の現状を学ぶ.
30 プレゼンテーション
5分間のプレゼンテーション.各自発表.テーマは,1)これからの製造業について,2)化学技術者・研究者の夢など.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.