【 2008 年度 授業概要】
科   目 物理化学I ( Physical Chemistry I )
担当教員 渡辺 昭敬 准教授
対象学年等 応用化学科・4年・通年・必修・2単位 ( 学修単位III )
学習・
教育目標
A4-3(100%)
JABEE
基準1(1)
(d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
3年生の応用物理で学習した知識を基に,相平衡,化学平衡,電気化学,化学反応速度論,原子・分子構造論を講義し,化学の基礎理論である物理化学全般にわたる基礎知識を理解させる.また,現代化学のことを考えて基本原理からの取り扱いを強調する.



1 【A4-3】  純物質の相平衡について理解し,その知識を元に,混合物の熱力学的記述を理解する.
2 【A4-3】  化学平衡について熱力学的観点から原理を理解する.またその応用として種々の平衡(プロトン移動,塩,溶解度)について理解する
3 【A4-3】  反応速度論について学ぶ.特に,速度論の考え方,反応速度の温度依存性,速度式の種々の表し方およびその解釈法について学ぶ.
4 【A4-3】  電池の全反応と半反応を理解する.
5 【A4-3】  原子および分子の構造を,応用物理IIで学ぶ量子力学の知識を基に理解する.
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1 各状態(固−液−気体)間の相図を理解しているか,熱力学と対応して理解しているかを前期中間試験およびレポートで評価する
2 ギブズエネルギーと平衡の関連,ファントホッフの式および,酸・塩基平衡を理解しているかどうか前期中間試験およびレポートで評価する.
3 速度定数の概念,反応方程式とその積分解,アレニウスの速度式について理解しているかどうか前期定期試験およびレポートで評価する.
4 化学電池およびその電極反応,電極反応の平衡論並びにpHの変化を理解しているか後期中間試験およびレポートで評価する.
5 原子構造とスペクトルの関係,原子の電子構造,並びに今世紀道による分子構造の組み立て,分子軌道と分子の特性を理解しているかどうか後期中間および定期試験およびレポートで評価する.
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成績は,試験90% レポート10% として評価する.試験成績は年4回の平均とする.総合100点とし60点以上を合格とする.
テキスト 「物理化学要論」:P. W. Atkins著/千原秀明・稲葉章 訳(東京化学同人)
参考書 「アトキンス物理化学 第6版(上・下)」:P. W. Atkins(東京化学同人)
「物理化学 -分子論的アプローチ-(上・下)」:D. A. McQuarrie, J. D. Simon(東京化学同人)
「化学反応はいかに進むか:反応の速度と機構」:E. L. キング(化学同人)
「初等量子化学 第2版」:大岩正芳(東京化学同人)
関連科目 1〜3年までの物理学・数学,3年生の応用物理,4年生の応用物理・応用数学
履修上の
注意事項
物理化学は,物理の視点から化学の基本原理を考察する教科であるので,当然,物理学とその基礎となる数学に精通していることが望ましい.1〜3年までの物理学や数学のみならず,同時進行で学習する応用物理や応用数学の内容も必要となってくる.さらに,3年生の応用物理で学んだ熱力学も,反応速度論を中心に必要となる.これらの科目を復習したり,良く学習しておくことが望ましい.

【授業計画( 物理化学I )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 純物質の相平衡(相転移の熱力学)
相変化とギブスエネルギーとの関係を学習する.
2 純物質の相平衡
代表的な物質の相図を学習する.
3 混合物の性質(熱力学的記述)
非電解質溶液の混合物の性質を学習する.モル濃度,質量モル濃度,モル分率を用いて,ラウールの法則,ヘンリーの法則を学習する.
4 混合物の性質(束一的性質,混合物の相図)
沸点上昇,凝固点降下,浸透圧など存在する溶質粒子の数に依存するだけの束一的性質について学習する.
5 化学平衡の原理
化学平衡を反応ギブスエネルギーを用いて説明することによって熱力学的な裏づけを学習する.また,平衡組成の計算を行う. 平衡の移動に対する触媒の存在,温度の効果,圧縮の効果を学習する.
6 化学平衡の応用(プロトン移動平衡)
酸と塩基に関するブレンステッド-ロウリ−の理論で,酸はプロトン供与体で,塩基はプロトン受容体である.プロトン化率を用いて弱酸,弱塩基の化学平衡に関する計算を行う.
7 化学平衡の応用(塩の水溶液,溶解度平衡)
酸−塩基滴定に関するヘンダーソン−ハッセルバルクの式から酸,塩基の濃度とpHとの関係式が導かれる.緩衝作用,溶解度定数,共通イオン効果について学習する.
8 中間試験
中間試験
9 中間試験解答
中間試験の解答を黒板を用いて解説し,注意点を指摘する.
10 反応速度論:概要
化学反応速度論の基本的事項について解説する.反応速度の概念,反応速度式とその解,実験的手法などについて解説する.
11 反応速度式の温度依存性
アレニウスの関係式について解説する.反応速度定数と温度の間にアレニウスの関係式があること,アレニウスの関係式が反応の活性化エネルギーと頻度因子といった要素で決まることを講義する.
12 活性化エネルギーと頻度因子
活性化エネルギーが反応を起こすために乗り越えなければならないポテンシャル障壁であり,頻度因子が分子の衝突や立体因子に関わる量であること,濃度の積が衝突頻度と比例すること等を解説し,活性化エネルギー・頻度因子と反応速度定数が結びつくことを講義する.また,活性錯体理論や触媒作用についても触れる.
13 速度式の解釈:素反応と反応機構
素反応(単分子・二分子反応)を定義し,通常の反応が複合反応であることを示し,反応機構とその反応速度式について解説する.逐次反応や定常状態近似,律速段階等の考え方を用いて,複合反応の反応速度がどのようにして組み立てられるかを示す.
14 連鎖反応:連鎖反応の構造,爆発
連鎖反応について,反応速度式をどのように計算したらよいか,いくつかの例を示しながら講義する.
15 光化学反応
量子収率等の光化学に関わる基本的考え方を示し,光化学過程を含む複雑な反応の反応機構および反応速度式について解説する.
16 電気化学(イオンの移動,半反応と電極)
電解質溶液中におけるイオンの電気伝導率,イオン移動度はイオンの大きさにも依存する.しかし,水素イオン及び水酸イオンはグロッタスの機構により他のイオンに比べて非常に早く移動することが説明できる.電池反応は半電池反応から成り立っている.
17 電気化学(電池反応,電極電位)
種々の電池の電池反応とその半反応を学ぶ.
18 電気化学(標準電位,熱力学関数の決定)
標準電位は標準水素電極の電位を基準に表されている.標準電池電位と標準反応ギブスエネルギーとの関係から反応式が分かれば電池の電圧が計算できる.
19 演習
16〜18週の内容について演習をする.
20 原子構造:水素型原子のスペクトル
水素原子のスペクトルを基に,水素型原子の構造を学ぶ
21 量子数と原子軌道のエネルギー・形
主量子数,方位量子数,磁気量子数の組み合わせと,水素型原子の電子の軌道の種類や特徴について解説する.
22 スペクトル遷移と選択率
水素型原子の中の電子遷移の選択率について解説する.
23 中間試験
中間試験
24 中間試験の解答
中間試験の解答を黒板を用いて解説し,注意点を指摘する.
25 多電子原子の構造
水素型原子の構造の知識を基に,多電子原子の構造について理解する.構成原理を基に,オービタルの考え方を学ぶ
26 多電子原子の構造と周期律
原子の電子構造より,原子の性質に周期的な特徴がでることを示し,周期表を原子の電子構造より議論する.また,周期的性質のみならず,周期表上での原子半径やイオン化エネルギー,電気陰性度などの特徴の変遷も,原子の電子構造より説明できることを解説する.
27 化学結合:基本概念
化学結合の基本概念を解説する.また化学結合を考える際に用いられる,原子価結合法と分子軌道法の基本概念を解説する
28 原子価結合法
原子価結合法の基本的事項を学ぶ.SP混成などの混成軌道および,共鳴の概念を学ぶ.
29 分子軌道法:基本概念
分子軌道法の概念を学ぶ.オービタルの概念(結合性,反結合性など)を理解する
30 分子軌道法:分子の構造
分子軌道法を基にして,二原子分子および多原子分子の構造について学ぶ.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.