【 2008 年度 授業概要】
科   目 無機化学I ( Inorganic Chemistry I )
担当教員 宮下 芳太郎 准教授
対象学年等 応用化学科・2年・通年・必修・2単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
A4-2(100%)
授業の概要
と方針
基礎理論は概要にとどめ,演習問題を多用しながら主として典型元素(1, 2, 11, 13, 18族元素)の各論を学び,身近な元素の性質を理解し,化学変化に興味を持ち,化学反応式が手軽に書けるようにする.



1 【A4-2】  元素記号,元素名を日本語および英語で書ける.無機化合物の基本的な命名法が理解できる.
2 【A4-2】  原子の構造に関する基礎的事項(Bohrの原子模型や量子数など)が理解できる.
3 【A4-2】  各元素の電子配置と周期表の位置関係が理解できる.
4 【A4-2】  原子の物性(原子半径,イオン半径,イオン化エネルギー,電気陰性度など)と周期表の関係が理解できる.
5 【A4-2】  11, 2, 11, 13, 18族元素の単体・化合物の製法や性質を理解するとともに,主な化学的現象を化学反応式で書ける.
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1 元素記号から元素名を日本語および英語で書け,無機化合物の基本的な命名ができるかを,小テストを中心に評価する.
2 原子の構造に関する基礎的事項(Bohrの原子模型や量子数など)が理解できているかを,前期中間試験で評価する.
3 各元素の電子配置と周期表の位置関係が理解できているかを,前期中間試験で評価する.
4 原子の物性(原子半径,イオン半径,イオン化エネルギー,電気陰性度など)と周期表の関係が理解できているかを,小テストや前期定期試験で評価する.
5 1, 2, 11, 13, 18族元素の単体・化合物の製法や性質を理解し,説明できるか,主な化学的現象を化学反応式で書けるかを,小テスト,課題,前後期の中間試験および定期試験で評価する.
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成績は,試験70% レポート15% 小テスト15% として評価する.到達目標1〜5についての試験70%,到達目標5のレポート(課題)15%,授業時間中に実施する演習(小テスト)15%で評価する.100点満点で60点以上を合格とする.
テキスト 「演習形式で学ぶ,やさしい無機化学」 : 前野昌弘著 (裳華房出版)
「化合物命名法(補訂7版)」 日本化学会編集
講義資料(プリント)
参考書 「基礎化学選書ー元素と周期律」 : 井口洋夫著 (裳華房出版)
「基礎化学選書ー無機化学演習」 : 柴田村治著 (裳華房出版)
「化学教科書シリ−ズー無機化学演習」 : 小倉興太郎(丸善出版)
関連科目 本科C1の「化学」
履修上の
注意事項
本科C1の「化学」で基礎導入部が行われているので,本科目では基礎的な項目に重点を置きつつ,より詳細な内容にも触れる.化学全般の基礎科目となるので,しっかりと理解すること.

【授業計画( 無機化学I )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 無機化学ガイダンス,元素の名称
2年から始まる専門教科としての「無機化学」の位置付けやその範囲を知る.元素記号と元素名を覚える.
2 化学式の書き方,無機化合物の命名法(1)
無機化合物の化学式の書き方の基本を理解する.無機化合物の命名法(英語名および日本名)の基礎を理解する.
3 無機化合物の命名法(2),水素の各論(1)
無機化合物の命名法(英語名および日本名)の基礎を理解する.最も簡単な元素である水素の存在,製法,物理的な性質を知る.
4 無機化合物の命名法(3),水素の各論(2),原子の構造
無機化合物の命名法(英語名および日本名)の基礎を理解する.水素の化学的な性質,化学反応性を知る.原子を構成する素粒子を学び,原子の大きさや質量について知る.
5 原子と同位体,Bohrの水素原子模型
同位体の存在と原子番号や質量数などについて理解する.Bohrの水素原子模型の概略を学び,原子半径や軌道をまわる電子のエネルギーに関する知識を得る.
6 原子の構造と電子配置,軌道の形
電子軌道としての殻という概念を理解し,殻へ電子を配置することによって原子を構成する.副殻という概念を導入し,エネルギーの違いによる軌道(s, p, d, f)の存在を知る.
7 4つの量子数と各原子の電子配置
量子数という概念を理解し,各原子の電子配置との関係を知る.
8 中間試験
1週目から7週目までの内容で中間試験を行う.
9 中間試験の解答,各原子の電子配置を規定する法則
中間試験の解答を行う.各原子の電子配置を規定する法則(軌道のエネルギー準位の低い軌道から高い軌道へ,Pauliの排他律,Hundの規則)を理解する.
10 周期表,典型元素,遷移元素
元素の電子配置による分類(典型元素・遷移元素)と周期表上での位置関係を知る.さらに,族の名称についても学ぶ.
11 原子半径,イオン半径
原子やイオンの大きさの指標となる原子半径,イオン半径の周期表上での大小関係を知る.
12 原子半径,イオン半径と周期性
有効核電荷や遮蔽という概念を学び,原子半径・イオン半径の周期表上での大小関係を説明する.
13 イオン化エネルギー・電気陰性度と周期性
電子親和力の概念を学び,電子親和力や金属性(非金属性)と周期性を説明する.
14 電子親和力・金属性と周期性
電子親和力の概念を学び,電子親和力や金属性(非金属性)と周期性を説明する.
15 希ガス元素(He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn)
希ガスの一般的性質をその電子配置から説明し,それぞれの希ガスに見られる特性,化合物や用途などについても学ぶ.
16 電子親和力と周期性,Born-Haberサイクル
イオン化エネルギーとの違いを解説する.元素の分類で金属性,非金属性ならびに半金属と元素の周期律との関係を解説,理解させる.Born-Haberサイクルの意味と簡単な計算方法を解説する.
17 原子とイオンの大きさ(原子・イオン半径)
同じ周期において原子番号が大きくなると原子の大きさは減少するが,同族において原子番号が大きくなると原子の大きさは増大することを解説する.イオンの大きさについても説明する.
18 アルカリ金属元素(Li,Na,K,Rb,Cs,Fr)(1)
金属元素全般について解説後,第1族元素のもつ電子配置の特徴から物理的性質や化学的性質を予測できることを解説する.この族の単体が直接水と反応することなどをあげて,活性な元素グループであることを説明する.
19 アルカリ金属元素(Li,Na,K,Rb,Cs,Fr)(2)
この族に所属する元素の各論として,著名な化合物の製法や性質を説明し,元素グループの理解を求める.また,単体を得る方法に関連して標準還元電位や電池の基本概念も説明し,簡単な電池の起電力の計算も行う.
20 アルカリ金属元素(Li,Na,K,Rb,Cs,Fr)(3)
基本的には第19週と同じであるが,関連する演習も行なう.
21 アルカリ土類金属元素(Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Ra)(1)
第2族元素のもつ電子配置の特徴から物理的性質や化学的性質を予測できることを解説する.この族の単体も直接水と反応することなどから第1族に次いで活性な元素グループであることを説明する.
22 アルカリ土類金属元素(Be, Mg, Ca, Sr, Ba, Ra) (2)
この族の酸化物,過酸化物,水酸化物をとり上げて,元素グループ内での各元素の特徴を解説する.また,ベリリウムの特別な性質についても説明し,簡単な演習を行う.
23 中間試験
16週目から22週目までの内容で中間試験を行う.
24 中間試験の解答,アルカリ土類金属元素(Be, Mg, Ca, Sr, Ba, Ra) (3)
中間試験の解答を行う.その後,この族のカルシウムとマグネシウムに関連して,水の硬度計算や石鹸による洗浄作用への影響など身近な事項を解説し,簡単な演習を行う.
25 ホウ素族元素(B,Al,Ga,In,Tl)(1)
第13族元素のもつ電子配置の特徴から物理的性質や化学的性質を予測できることを解説するとともに,この族内での性質上3グループに分けられることを解説する.
26 ホウ素族元素(B,Al,Ga,In,Tl)(2)
この族ではホウ素のみが非金属性を,アルミニウムとガリウムが両性を示す.他は金属に属する.ホウ素は化合物をつくった後もルイス酸として働く興味ある元素である.チッ化ホウ素やボラゾール,ジボランなどの化学結合の特徴を説明する.
27 ホウ素族元素(B,Al,Ga,In,Tl)(3)
この族は酸化数が3であるが,タリウムのみ1価で安定となるのは不活性電子対効果のためである.金属アルミニウムや亜鉛が両性であることを化学反応式で示す.その他,テルミット法やバイヤー法について説明する.
28 銅族元素(Cu,Ag,Au)(1)
第11族が貨幣金属と呼ばれる理由を説明する.この族が遷移金属に含められる理由を説明する.それぞれの金属を酸化溶解できる酸をあげて,その反応式を示す.それぞれの元素の治金方法を化学反応式を用いて説明する.
29 銅族元素(Cu,Ag,Au)(2)
第28週と同じ.これらの金属の著名な化合物の紹介と化学結合のあり方を解説する.簡単な演習を行う.
30 ホウ素族元素と銅族元素に関する演習
第16週から主に金属元素を中心に学習してきたが,総合的に第2族,第13族,第11族に関連した復習のための演習を行う.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する.