科 目 | 線形システム理論 ( Linear System Theory ) | |||
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担当教員 | 小林 洋二 | |||
対象学年等 | 機械工学科・5年C組・通年・必修・2単位 ( 学修単位III ) | |||
学習・教育 目標 |
工学系複合プログラム | JABEE基準1(1) | ||
A-4-3(100%) | (d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g) | |||
授業の概要 と方針 |
自動制御の講義に引き続いて,状態方程式と出力方程式による物理システムのモデリング,可制御性と可観測性,システムの構造,安定性の解析について学ぶ。これらは大学,専攻科で学ぶ,あるいは,企業で使用する現代制御理論による制御系の設計手法を理解するための基礎事項である。本講義では,理論の本質を理解する際の煩雑さを避けるために,一入力一出力の線形システムを対象として授業を行う。 | |||
到 達 目 標 |
1 | 物理システムの数式モデルを,状態方程式と出力方程式で表現し,ブロック線図を用いてシステムを図的に表現できる。あわせて,状態方程式で表されたシステムの解を求めることができる。 | 2 | 可制御性と可観測性の意味を理解し,与えられたシステムの可制御性と可観測性を判定することができる。 | 3 | システムの等価変換の意味を理解し,システムを対角形式(場合によってはJordan 形式)へ変換できる。対角形式(場合によってはJordan形式)のシステムと可制御性,可観測性の関係を理解することができる。 | 4 | 可制御性と可観測性から見たシステムの構造を理解し,システムを可制御なサブシステムと不可制御なサブシステム,あるいは可観測なサブシステムと不可観測なサブシステムへ分解できる。 | 5 | システムの可制御正準形,可観測正準形と伝達関数の関係を理解し,相互に変換できる。伝達関数から状態方程式,出力方程式への変換(実現)について最小実現の意味を理解できる。 | 6 | システムの内部安定性および外部安定性の意味を理解し,与えられたシステムについて,それぞれの安定判別ができるとともに,両者の関係を理解することができる。 | 7 | 8 | 9 | 10 |
評 価 方 法 と 基 準 |
到 達 目 標 毎 |
1 | 物理システムを記述する微分方程式から,状態方程式と出力方程式の導出,ブロック線図による図的表現ができ,状態方程式の解を計算することができる。以上の項目について,課題演習および中間試験で評価する。 | |
2 | システムの可制御性と可観測性について,その物理的な意味を理解し,判別条件を用いて,それぞれの性質について判別をすることができる。以上の項目について,課題演習および定期試験で評価する。 | |||
3 | システムを対角化する過程とその変換法を理解できる。変換されたシステムのブロック線図から,そのシステムの可制御性,可観測性を判定できる。以上の項目について,課題演習および定期試験で評価する。 | |||
4 | 与えられたシステムを可制御正準分解・可観測正準分解することができる。また,Kalman の正準構造定理を説明することができる。この項目について,課題演習および中間試験で評価する。 | |||
5 | システムを可制御正準形・可観測正準形に変換することができる。これに関連して,伝達関数から,実現,最小実現を求めることができる。これらの項目について,課題演習および中間試験で評価する。 | |||
6 | 与えられたシステムについて,適切な手法を用いて内部安定性および外部安定性の判別を行うことができ,両者の関係を説明することができる。この項目について,課題演習および定期試験で評価する。 | |||
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総 合 評 価 |
成績は,試験70% レポート30% として評価する。なお,試験成績は中間試験と定期試験の平均点とする。100点満点で60点以上を合格とする。また,ここでいうレポートとは,授業中に課される課題演習の解答レポートをいう。 | |||
テキスト | 「システム制御の講義と演習」:中溝 高好,小林 伸明 著(日新出版) |
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参考書 | 「システム制御理論入門」:小郷 寛,美多 勉 著(実教出版) 「現代制御論」:吉川 恒夫,井村 順一 著(昭晃堂) |
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関連科目 | 応用数学(線形代数,微積分),自動制御 | |||
履修上の 注意事項 |
年間を通して,行列の演算を中心とした線形代数の知識,簡単な微積分の知識(ラプラス変換を含む)が要求されますので,4年生の間にこれらの基礎を固めておいてください。また,自動制御の内容とも関係しますので,これについても復習しておいてください。 |
回 | 上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など) |
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1 | 古典制御理論と現代制御理論 |
システムの解析や設計を行う際に,周波数領域のツールである伝達関数を用いる古典制御理論と,時間領域のツールである状態方程式・出力方程式を用いる現代制御理論について,それぞれの手法が考案された歴史的背景,手法の違い,現在の状況,今後の動向などを概説する。 | |
2 | システムの記述 |
この講義を通して重要な概念である線形性と非線形性,静的システムと動的システムについて定義を述べたあと,工学で扱う多くの物理システムは,近似的に線形動的システムとして線形微分方程式で表現されることを説明する。これに関連して,伝達関数,インパルス応答による表現を説明する。 | |
3 | 状態方程式と出力方程式 |
線形微分方程式で表されたシステムは,1階の連立微分方程式(状態方程式)と代数方程式(出力方程式)で表されることを説明する。あわせて,これらの数式は,ブロック線図を使ってグラフィカルに表現できることを説明する。 | |
4 | 状態方程式と出力方程式による表現のバリエーション |
線形微分方程式から状態方程式と出力方程式を導く過程を変えることによって,最終的に得られる状態方程式と出力方程式が異なることを示す。また,係数行列の固有値が重複する場合のJordan 形式についても説明する。 | |
5 | 状態ベクトルの等価変換と等価系 |
システムを表す状態方程式,出力方程式は何通りも存在することを示し,このことは座標の取り方に起因していることを述べ,この座標変換を行う等価変換の方法について説明する。 | |
6 | 遷移行列 |
まず,簡単のため,入力がゼロの自由系について,状態方程式と出力方程式の解を求める方法を説明する。スカラーの微分方程式の解法と対比させながら,遷移行列を導入し,この行列の性質について説明する。 | |
7 | 状態方程式(自由系)の解 |
遷移行列を用いて自由系の解が求められることを説明し,バネー質量系の振動を例に挙げて,状態方程式の解を求める手順を説明する。 | |
8 | 中間試験 |
1〜7週目までの理解度を確認するために中間試験を実施する。 | |
9 | 状態方程式(強制系)の解 |
入力が非ゼロとなる強制系について,状態方程式と出力方程式の解を求める方法を説明する。関連する事項として,状態方程式から伝達関数とインパルス応答を計算する方法,マルコフパラメータについて説明する。 | |
10 | システムの可制御性 |
状態方程式で表されたシステムの可制御性ついて,その定義を説明し,その定義に基づいて,入力信号を計算することによって,可制御性のための必要十分条件を導出する過程を説明する。 | |
11 | 可制御性の条件 |
10週目に導出した可制御性の判定条件を使って,さらに使い易い条件を導く。この新たに導出された条件を用いて,システムの可制御性を判定する例題を説明し,あわせて等価変換を行った場合でも,可制御性は保持されることを示す。 | |
12 | 可観測性 |
状態方程式と出力方程式で表されたシステムの可観測性ついて,その定義を説明し,その定義に基づいて,システムの初期状態を計算することによって,可観測性のための必要十分条件を導出する過程を説明する。 | |
13 | 可観測性の条件 |
12週目に導出した可観測性の判定条件を使って,さらに使い易い条件を導く。この導出された条件を用いて,システムの可観測性を判定する例題を説明し,あわせて等価変換を行った場合でも,可観測性は保持されることを示す。関連する項目として,ハンケル行列について説明する。 | |
14 | システムの対角化 |
状態方程式と出力方程式を対角形式に等価変換する方法について説明する。また,対角形式で表されたシステムをブロック線図で表し,そこから図的に可制御性,可観測性を判別する条件を導出できることを説明する。 | |
15 | Jordan形式への変換 |
状態方程式の係数行列が重複する固有値を持つ場合に,そのシステムをJordan形式に等価変換する方法について説明する。また,Jordan形式で表されたシステムをブロック線図で表し,そこから図的に可制御性,可観測性を判別する条件を導出できることを説明する。 | |
16 | システムの構造1 可制御正準構造 |
一般に,システムは可制御なサブシステムと非可制御なサブシステムに分解されることを述べ,その分解の方法,分解後のシステムの伝達関数を求める方法を説明する。 | |
17 | システムの構造2 可観測正準構造 |
一般に,システムは可観測なサブシステムと非可観測なサブシステムに分解されることを述べ,その分解の方法,分解後のシステムの伝達関数を求める方法を説明する。 | |
18 | カルマンの正準構造定理 |
一般のシステムは,可制御かつ可観測,非可制御かつ可観測,可制御かつ非可観測,非可制御かつ非可観測,の4つの性質を持つサブシステムから構成されている。このことを述べたKalman の正準構造定理について説明し,その伝達関数を計算することによって伝達関数が,どのサブシステムを表しているかを明らかにする。 | |
19 | 可制御正準形 |
可制御なシステムは,可制御正準形とよばれる形式に等価変換される。この可制御正準形は,その要素を用いて即座に伝達関数を求めることができることを示す。また,一般の形で表されたシステムを,可制御正準形へ変換する方法と,可制御正準形を対角形式へ容易に変換する方法を説明する。 | |
20 | 可観測正準形 |
可観測なシステムは,可観測正準形とよばれる形式に等価変換される。この可観測正準形は,その要素を用いて即座に伝達関数を求めることができることを示す。また,一般の形で表されたシステムを,可観測正準形へ変換する方法と,可観測正準形を対角形式へ容易に変換する方法を説明する。 | |
21 | 実現問題 |
伝達関数から状態方程式と出力方程式を求めることを実現という。実現においては,一意に状態方程式と出力方程式を決定することができないことを説明する。関連する事項として,プロパーな有理多項式,厳密にプロパーな有理多項式について説明し,それぞれがどのようなシステムに該当するのかを説明する。 | |
22 | 最小実現 |
実現の中でも,解析,設計に役立つ最小実現に関して,定義,性質,次数,最小実現間の等価変換のための行列,最小実現を求める方法などの理論的な点について説明する。 | |
23 | 中間試験 |
16〜22週目までの理解度を確認するために中間試験を実施する。 | |
24 | 内部安定性 |
状態方程式と出力方程式で表されたシステムについて,安定性(内部安定性)がどのように定義され,その性質が係数行列の固有値とどのように結びつき,どういう方法によって安定性を判定できるのかについて説明する。 | |
25 | 固有値とモード |
状態方程式で記述されたシステムの応答特性は,係数行列の固有値と固有ベクトルの積であるモードの合成によって決まることを説明する。 | |
26 | リアプノフ安定とリアプノフ関数 |
非線形まで含めた微分方程式で表されるシステム(の解)の安定性を解析する手段としてのリアプノフ関数について説明する。まず,リアプノフ安定の概念を説明し,つぎにリアプノフ関数のグラフィカルなイメージを述べ,そのあと安定性の解析方法を説明する。 | |
27 | リアプノフ方程式 |
線形システムの内部安定性を調べるためのリアプノフ方程式について説明する。まず,2次形式,正定行列などの数学的な知識を紹介し,そのあと,内部安定であることと,リアプノフ方程式が正定な解を持つことが等価であることを示し,最後に,例題を用いて安定判別の方法を説明する。 | |
28 | 入出力安定(外部安定) |
伝達関数やインパルス応答など,システムを外部からみた,いいかえれば,入出力信号からみた数式モデルに対して定義される安定性について,定義,安定条件を説明する。 | |
29 | 内部安定と外部安定の関係 |
状態方程式に対して適用される内部安定性と伝達関数,インパルス応答に適用される入出力安定(外部安定)性の関係について説明する。前者は後者を包含する関係にあり,両者が一致するのは,システムが可制御かつ可観測であるときに限られることを理解する。 | |
30 | 課題演習と講義のまとめ |
ここまでに学んだ授業内容に関する課題演習を行い,最後にまとめとして,工学分野におけるこの科目の内容と他の科目との関連を説明する。 | |
備 考 |
中間試験および定期試験を実施する。 |