【 2007 年度 授業概要】
科   目 物理 ( Physics )
担当教員 正木智洋
対象学年等 機械工学科・2年B組・通年・必修・3単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
授業の概要
と方針
物理はイメージしながら考え,頭を悩ますことで初めて理解できる学問である。本授業では数式の暗記を避け,イメージとともに物理を理解し,自ずと公式なり数式が導かれるようになることを目標とする。2学年では熱力学,波動,電磁気学,原子の世界を学ぶ。本授業では実際の現象を例に挙げて内容に入っていく。また学生諸君の理解を定着させるために,毎回例題・問題を解いていく。



1 分子の運動から熱現象を理解することができ,説明することができる。
2 波について理解し,説明することができる。
3 波として音・光について理解し,説明することができる。
4 電場・磁場と電荷の間に成り立つ関係,磁場の変化とともに生じる現象について理解し,説明することができる。
5 電気回路内の各値について求めることができる。
6 光の種類と波動性・粒子性の違い理解し,説明することができる。
7 原子の世界について理解し,説明することができる。
8 紹介した過去の偉人の実験を説明することができる。
9 グループ内で協力して実験をすることができる。
10  












1 熱量,仕事,エネルギー,熱力学第1・2法則について理解できているか前期中間試験,レポートから評価する。
2 波の数式化,重ね合わせ,固定・自由端,回折,干渉,屈折について理解できているか前期中間・定期試験,レポートから評価する。
3 波の考えで音・光に対する各性質や物理現象について理解できているか前期定期試験,レポートから評価する。
4 電場と磁場と電荷にはたらく力(クーロン力,ローレンツ力),電流と磁場の関係,交流について理解できているか後期中間試験,レポートから評価する。
5 オームの法則,キルヒホッフの法則を用いて直流・交流回路内の各値,またコイルがある場合の各値について理解できているか後期中間・定期試験,レポートから評価する。
6 光電効果,コンプトン効果,ブラッグ反射について理解できているか後期定期試験,レポートから評価する。
7 量子化,物質波(ド・ブロイ波),について理解できているか後期定期試験,レポートから評価する。
8 各試験前のレポート,各試験から評価する。
9 実験レポートを見て評価する。
10  




成績は,試験70% レポート30% として評価する。試験は全4回の平均点の70%を評価し70点満点とする。レポートはテスト後に全4回提出し,各レポートを5点満点(全レポート点;20点満点)で評価する。実験レポート2回(各5点×2;10点満点)もレポート点として評価する。100点満点で60点以上を合格とする。
テキスト 「高専の物理」:和達三樹,小暮陽三(森北出版株式会社)
「高専の物理問題集」:田中冨士男(森北出版株式会社)
参考書 「ファインマン物理学I 力学」:坪井忠二(訳) (岩波書店)
「ファインマン物理学II 光・熱・波動」:富山小太郎(訳) (岩波書店)
関連科目 数学I,II(1,2年),物理(1年)
履修上の
注意事項
物理は『イメージ』と『考えること』が重要である。授業で出てきた数式を単に暗記しただけでは問題になったとたん解けなくなる。2年生では学ぶことが多いので,必ず予習・復習は心がけること。そして分からないときは,気軽に質問に来てほしい。

【授業計画( 物理 )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 温度と熱
物質の温度が上がるとはどういうことか,温度の上昇とともに物質の内部で何が起こっているかを理解することを目標とする。
2 熱量
温度の異なる物質(液体・気体)を混ぜたとき温度変化はどうなるのか,熱の流入や流出によって生じる温度変化が物体の質量や物質の違いとどのように関係するかを理解することを目標とする。
3 気体の分子運動
分子の運動から熱現象を解説し,気体が圧力を及ぼす原因を理解することを目標とする。
4 エネルギー保存の法則
熱がエネルギーの一つであることを理解した上で,エネルギーの保存の法則を熱を含む形に拡張する。ここでは特に熱力学第1,2法則について理解することを目標とする。
5 演習(温度と熱の復習)
第1〜4週の間に学んだこと(教科書;第2章)の復習を演習をとおして行う。
6 直線上を伝わる波1
波は連続した物質の一部に起こった振動が運動の法則にしたがって周囲に伝わる現象である。波と波を伝える物質との関係,波の種類と性質,それを数式化したものについて理解することを目標とする。
7 直線上を伝わる波2
2つの波が出会ったとき波はどのようになるのかを数式を交えて解説し,固定端・自由端のときの入射波と反射波の関係について理解することを目標とする。また海面上の波と地震のとき発生する津波の違いを解説する。
8 中間試験
第1〜7週の理解度の確認として試験を行う。物質と熱の関係,波の性質についての理解度を確認する。
9 平面や空間を伝わる波
1点または2点から生じた波の進み方と形,穴が開いている壁を通過するときの波,媒質の性質が変わったときの波の変化について解説する。波の干渉,回折,屈折を理解することを目標とする。
10 音波と振動
我々が日頃から聞く音というのも波である。ここでは音・弦の波に注目し,振動,回折,干渉,うなり,ドップラー効果について理解することを目標とする。
11 光波1
光は何なのかという疑問は古典物理学では大きな問題であった。ここではホイヘンスの唱えた光の『波動説』を主として考え,光の波としての性質について,第6,7,9週で学習したことと比較しながら解説を行う。光の種類,入射波と反射波,媒質中での光の性質について理解することを目標とする。
12 光波2
光の波としての性質として第9,10週との比較を解説する。単スリットによる回折と干渉,二重スリットによる干渉,ニュートンリングについて理解することを目標とする。
13 光学機器
レンズは様々なものに使われおり,我々の眼もレンズと同じ役割を果たしている。ここでは凹,凸レンズについての光の進行と見え方について理解することを目標とする。
14 演習(波と光の復習)1
第6〜10週で学んだこと(教科書;p.88〜p.116)の復習を演習をとおして行う。
15 演習(波と光の復習)2
第11〜13週で学んだこと(教科書;p.117〜p.141)の復習を演習をとおして行う。
16 静電場(学生実験;導体上の等電位線の測定)
物質は全て電荷を帯びた物質であるか,電荷を帯びた粒子の集合体でできている。ここでは一つの電荷が周囲の空間に作る(時間変化が無い)電場,そして電場内の電荷に働く力について理解することを目標とする。また電荷が作る電場の状態について実験をとおして学ぶ。
17 電圧と電流
導線を流れる電流と電圧,回路に接続された抵抗の間にはオームの法則が成り立つ。オームの法則と閉回路での法則(キルヒホッフの法則)について理解し,それらを用いて様々な回路の電流,電圧,抵抗の値が求められることを目標とする。
18 コンデンサー
我々が日々使用する電気機器の内部にはコンデンサーといわれるものが使われている。このコンデンサーの性質,コンデンサーを含む回路中での電流,電圧,抵抗,コンデンサーの関係について理解し,この回路中での各値が求められることを目標とする。
19 電流と磁場1
磁場と聞くと磁石が思い浮かぶかもしれないが,現在は磁気作用は電荷を帯びた粒子の運動によって起こることがわかっている。ここでは電流と磁場との関係,右ねじの法則,フレミング左手の法則について理解することを目標とする。
20 電流と磁場2(学生実験;地球の磁力線)
ここでは電流が流れている導線間にはたらく力,磁場が点電荷に与える影響(ローレンツ力),モーターの原理について理解することを目標とする。また実験で地球の磁力線について考える。
21 演習
第16〜20週で学んだこと(教科書;p.142〜p.188)の復習を演習をとおして行う。
22 電磁誘導と交流1
磁場の変化にともなう電流の変化,コイル間,コイル内の磁場の変化による誘導起電力,エネルギーについて解説し,ファラデーの電磁誘導の法則(レンツの法則),誘導起電力,インダクタンスについて理解することを目標とする。
23 中間試験
第16〜22週の理解度の確認として試験を行う。直流回路での関係,電場と磁場から受ける力についての理解度を確認する。
24 電磁誘導と交流2
交流回路での様々な電磁気学を第22週で学んだことと比較しながら解説し,また日頃よく耳にする電磁波についても解説する。交流,リアクタンス,変圧器,電磁波について理解することを目標とする。
25 電子と光1
20世紀に入って,波動と考えられていた光が粒子性をもち,粒子と考えられていた電子が波動性をもつという意外な事実が発見された。ここでは電子の質量と電荷の測定,光の粒子性とエネルギーについて解説し,理解することを目標とする。
26 電子と光2
ここでは電磁波の種類について説明し,X線の回折・干渉,コンプトン散乱を理解することを目標とする。またミクロの世界では物質と光がともに波動性と粒子性の二重性を兼ね備えていることから物質波(ド・ブロイ波),電子の干渉縞について解説し,理解することを目標とする。
27 原子と原子核1
原子がどのようにできているのか,19〜20世紀初頭に熱心に研究された。その研究過程を追いながら,原子模型,電子の軌道,電子の軌道間の移動に伴う光とエネルギーの関係について解説し,理解することを目標とする。
28 原子と原子核2
何故,化石や地層の年代がおよそ何万年前と分かるのであろうか。それは放射線と深いかかわりがある。ここでは放射線,半減期,核反応そして核反応の利用について解説し,理解することを目標とする。
29 演習
第24〜28週で学んだこと(教科書;p.188〜p.239)の復習を演習をとおして行う。
30 宇宙と素粒子
我々の宇宙はどこからやってきてどのように始まったのであろうか,他に宇宙はあるのか,また我々の体はどのようにして作られたのであろうか。現在我々の宇宙や物質について考えられている宇宙論・素粒子論について解説する。


中間試験および定期試験を実施する。