【 2007 年度 授業概要】

科　　　目			応用物理II ( Applied Physics II )
担当教員			藤井 富朗
対象学年等			電気工学科・4年・通年・必修・2単位 ( 学修単位III )
学習・教育 目標			工学系複合プログラム	ＪＡＢＥＥ基準１（１）
			A-2(30%) A-4-1(70%)	(c),(d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要 と方針			量子論の出現と発展過程を歴史的実験事実から紹介し，ボーアの原子模型，光電効果から核外電子の量子化や光子の運動量，エネルギーを定義する。これらを発展させて固体物性の量子論的説明を展開する。また，気体の分子運動論，化学結合，結晶構造など気体および固体物性を原子，分子の状態から解析する方法を講義する。
到 達 目 標		1	【A-2】　 量子論黎明期の歴史的実験と量子論の基本的概念を理解し，説明できる。
		2	【A-2】　 気体および固体物性をミクロの分子・原子レベルの運動から導き，説明できる。
		3	【A-4-1】　 各種結合，結晶構造を分子・原子の構成から説明し，分類できる。
		4	【A-4-1】　 金属の自由電子論と自由電子のエネルギー分布を理解し，関連のある公式を導出できる。
		5	【A-4-1】　 簡単なモデルにおける波動方程式を解くことができる。
		6	【A-4-1】　 バンド理論の理解と各種物質の電気物性をエネルギー帯から説明できる。
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評 価 方 法 と 基 準	到 達 目 標 毎	1	黒体の熱放射などの量子論的説明，ボーアの原子模型と核外電子の量子化について前期中間試験で理解度を評価する。これと授業中の小テスト，問題演習レポートで総合評価する。（以下同）
		2	マックスウェルの速度分布則の導出をふくむ気体分子運動と固体の構成について，前期定期試験で理解度を評価する。
		3	原子に働く引力と斥力から結合を説明し，結合の種類を分類して物理的・化学的特性を説明すること，結晶構造の表現方法，分類，格子欠陥の説明と分類について前期定期試験で理解度を評価する。
		4	ドルーデの理論による金属内自由電子の運動，ドリフト速度，導電率，移動度の導出に関して後期中間試験で評価する。
		5	周期的ポテンシャル井戸型モデルにおけるシュレディンガーの波動方程式を理解し解く能力を後期定期試験で評価する。
		6	孤立原子の接近，電子の波動性からバンド理論を導き，導体，半導体，絶縁体の電気的性質について後期定期試験で評価する。
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	総 合 評 価		成績は，試験70%　レポート20%　小テスト10%　として評価する。100点法で60点以上を合格とする。
テキスト			「応用物性論」：青木昌治著 （朝倉書店）
参考書			「量子力学の世界」：片山泰久著（講談社ブルーバックス）など量子論の入門・解説書
関連科目			物理，応用物理I
履修上の 注意事項			古典物理（力学），化学，数学（微分，積分，複素関数論）等の基礎知識が必要である。

【授業計画（ 応用物理II ）】

回	上段：テーマ／下段：内容（目標、準備など）
1	熱放射，ウィーンの変位則，エネルギー量子の導入
	古典物理から量子論への歴史的経過を説明して，その契機となった代表的な実験を紹介する。
2	光電効果，光量子の導入，光子の運動量，コンプトン効果
	量子論黎明期のこれらの実験と実験結果の量子論的解釈。
3	水素の原子スペクトル，リードベルクの式
	ボーアの原子模型の出現につながる水素放電管の発光スペクトルの数式化。
4	ボーアの原子模型，角運動量の量子化，電子のエネルギー
	古典論でのスペクトルの解釈と角運動量の量子化。
5	ゾンマーフェルトの理論，核外電子の軌道とエネルギー
	核外電子のエネルギー準位の導出。
6	原子の閉殻構造，核外電子配置による原子の周期性
	多電子原子のエネルギー準位の配置と原子の周期性の結合。
7	量子力学の導入，電子の波動性，シュレディンガーの波動方程式，演習問題
	一次元のシュレディンガーの波動方程式と，簡単な境界条件での解法。
8	中間試験
	量子論誕生の歴史的実験の内容と量子論的説明。核外電子の量子化と電子軌道。簡単なシュレディンガーの波動方程式の解法と波動関数の物理的意味。
9	気体の圧力。状態方程式。気体の分子運動論
	中間試験の解説。ボイルシャールの法則。気体構成分子のエネルギーによる温度，圧力の説明。
10	マクスウェルの速度分布則
	分子の速度成分，早さ，速度に関するマクスウェルの速度分布則を導く。
11	分子の衝突。輸送現象。熱力学的重率。エントロピー。問題演習。
	気体における分子の衝突，エネルギー等配則，拡散理論の説明。
12	原子間に働く引力と斥力
	物質の状態の微視的説明。原子間に働く引力，斥力とエネルギー状態。
13	各種結合力と結合の分類。問題演習。
	結合力の種類の紹介と物質の化学的，物理的特性の出現。
14	結晶の基本格子。単位胞。
	単結晶，非晶質，多結晶。単結晶における各種格子の導入。
15	ブラベー格子と結晶構造の分類
	面心，体心構造その他の特殊な結晶の説明。
16	結晶の面指数，方向の指数。
	定期試験の解説。結晶構造の表現法。面指数，方向の指数の導入。
17	結晶構造の解析。X線回折。電子線回折。
	ラウエの回折条件，ブラッグの回折条件。電子の波動性による回折を利用した結晶構造解析。
18	電気材料として重要な物質の結晶構造。細密構造。
	各種固体の結晶構造と物質の物理的性質，最蜜構造の説明。
19	結晶の不完全性と格子欠陥
	格子欠陥の種類と物質の物理的，化学的性質に与える影響。
20	転位と物質の電気的，機械的性質。問題演習。
	転位の種類と弾性的特性。章末演習問題の解説。
21	金属の自由電子論，超伝導。
	金属の特徴，自由電子の生成過程。導電率の温度特性と超伝導現象の説明。
22	金属の電気伝導理論，ドルーデの理論。ドリフト速度と移動度。
	金属内の自由電子の原子イオンへの衝突と熱運動および電界による加速度運動による電子運動の解析。
23	中間試験
	後期の第22回までの講義内容で出題する。
24	ゾンマーフェルトの金属模型と波動方程式の解
	中間試験の解説。井戸型ポッテンシャルモデルにおけるシュレディンガーの波動方程式とその解。
25	フェルミ＝ディラック分布関数とフェルミエネルギー
	温度によるフェルミ＝ディラック分布関数の形とその物理的解釈。
26	状態密度関数と電子密度。磁界中の電子。ホール効果。
	導入する二つの分布関数と電子のとるべきエネルギ分布の説明。磁界中の運動電子に働くローレンツ力とホール効果および磁気抵抗。
27	金属表面の各種電子放出。問題演習。
	熱電子放出，光電子放出，二時電子放出および電界放出を仕事関数から説明。章末演習問題のレポート提出，解説。
28	固体内電子のエネルギー。バンド理論の導入。
	孤立原子の近似と周期的ポテンシャルモデルで結晶内電子のエネルギーのバンド構造を導く。
29	結晶内電子の運動
	結晶内電子の運動を完全自由電子モデルと周期的ポテンシャルモデルで解析した結果を比較し，実効質量の解釈から正孔を導入する。
30	導体，半導体，絶縁体の電子エネルギー理論による説明。
	バンド構造による固体物質の導電性の説明。
備 考	中間試験および定期試験を実施する。前期定期試験は前期15週で講義した内容について，後期定期試験は後期中間試験以降の講義内容について出題し，実施する。