【 2007 年度 授業概要】
科   目 電気磁気学I ( Electromagnetics I )
担当教員 森田 二朗,赤松 浩
対象学年等 電気工学科・3年・通年・必修・4単位 ( 学修単位I )
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
授業の概要
と方針
時間的に変化のない静電気分野を赤松が担当し,磁性体,電磁界分野を森田が担当して,講義演習を行う。静電気分野では電場の概念を理解させること,電磁界分野では,電流による磁界と電磁誘導現象を理解させることがメインとなる。理解を深めるためにレポート,小テスト(授業中の演習も含む)をできるだけ行う。演習の解答は黒板を用いて説明させることにより,プレゼンテーション能力も養う。



1 電気力線,電束線の概念が理解できる。電界,電位,電位差の関係が理解できる。
2 電気映像法による電界の計算ができる。スカラーポテンシャルとラプラスの方程式が理解できる。
3 ガウスの法則を用いて電界の計算ができる。種々の導体形状に対する静電容量が計算できる。
4 コンデンサの静電容量,蓄積電荷量,印加電圧の関係が計算できる。静電エネルギーと導体に働く力が計算できる。
5 電流が一様でない場合の電気抵抗を求めることができる。電荷の連続の式が理解できる。
6 磁束密度と磁化の関係,透磁率と磁化率の関係を理解できる。磁気におけるガウスの法則が理解できる。
7 アンペアの法則が理解できる。無限長の電線電流によって作られる磁界の計算,円環ソレノイドの磁界が理解できる。
8 ビオ・サバールの法則が理解できる。有限長の電線電流,ループ状電流によって作られる磁界が理解できる。
9 磁気回路への変換理論を理解できる。また,ヒステリシス特性をもった磁性体の磁束密度が理解できる。
10 磁界中の電流に作用する力が理解できる。電磁誘導現象を理解できる。












1 電気力線,電束線の分布図が書けるか?,平行平板コンデンサモデルによる電界,電位,電位差の計算が出来るか?,の2点を小テストと前期中間試験の設問で評価する。試験の基本問題80%以上を合格の目安とする。
2 電気映像法による電界の計算ができるか?は前期中間試験の設問で評価。ラプラスの方程式が理解できるか?の評価は,課題レポートと前期中間試験で評価する。試験の基本問題80%以上を合格の目安とする。
3 ガウスの法則を用いて電界の計算ができるか?は,前期定期試験の設問と課題レポートで評価する。種々の導体形状に対する静電容量は前期定期試験の設問で評価する。試験の基本問題80%以上を合格の目安とする。
4 静電容量,蓄積電荷量,印加電圧の関係の計算,静電エネルギーと導体に働く力の計算ができるかの評価は,演習回答によるプレゼン(小テストに含む)と後期中間試験で評価する。基本80%以上を合格の目安とする。
5 電流が一様でない場合の電気抵抗を求めることができる。電荷の連続の式が理解できる。いずれも,小テストと後期定期試験の設問で評価する。試験の基本問題80%以上を合格の目安とする。
6 磁束密度と磁化の関係,透磁率と磁化率の関係を理解の程度確認のために演習回答方式によるプレゼンテーション(小テストに含む)と前期中間試験での設問で評価する。試験の基本問題80%以上を合格の目安とする。
7 アンペアの法則が理解の程度,無限長の電線電流によって作られる磁界の計算,円環ソレノイドの磁界が理解の程度のいずれも課題レポートと前期中間試験の設問によって評価する。基本問題80%以上を合格の目安とする。
8 ビオ・サバールの法則が理解の程度,有限長の電線電流,ループ状電流によって作られる磁界が理解の程度のいずれも課題レポートと前期定期試験の設問によって評価する。試験の基本問題80%以上を合格の目安とする。
9 磁気回路への変換理論に関する計算,ヒステリシス特性をもった磁性体の磁束密度が計算できるかを課題レポートと後期中間試験の設問によって評価する。試験の基本問題80%以上を合格の目安とする。
10 磁界中の電流に作用する力の大きさと方向の計算と電磁誘導現象を移動金属棒モデルを使った誘導電圧の計算を小テストと後期定期試験の設問によって評価する。試験の基本問題80%以上を合格の目安とする。




成績は,試験80% レポート10% 小テスト10% として評価する。(到達目標の1から5:赤松担当)と(到達目標6から10:森田担当)を50%づつで行う。試験以外の20%の評価部分でゼロ点のものは,4度の試験で満点を取ったとしても不合格とする。100点満点で55点以上を合格とする。小テストに演習回答によるプレゼンの評価を含む。
テキスト 「電磁気学」:多田泰芳,柴田尚志著(コロナ社)
プリント
参考書 「電気磁気学」:安達三郎,大貫繁雄共著(森北出版)
「電磁気学」:卯本重郎著(昭晃堂)
「電磁気学」:沢新之輔,小川英一,小野和雄著(朝倉書店)
「電気磁気学」:石井良博著(コロナ社)
関連科目 基礎電気工学,電気回路I,II,応用物理I,電気計測,応用物理II,電気磁気II,電気材料
履修上の
注意事項
1年:基礎電気工学の電荷を扱う部分をクーロンの法則で使う。2,3年:電気回路I,IIとも電流を扱う部分を定常電流に関する現象の説明で使う。3年:応用物理Iの万有引力の法則と電磁気学のクーロンの法則の類似性。3年:電気計測のさぐりコイルによる漏れ磁束の測定の部分で磁束の意味。4年:応用物理の分極を扱う部分の計算で電磁気学の電気双極子が必要。5年:電気材料で誘電体の分極特性で電気双極子が必須。

【授業計画( 電気磁気学I )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 電荷,クーロンの法則
電荷には正および負の2種類があり,電荷間には力が働く。異種の電荷間には引力,同種の電荷間には斥力が働く。このような,電荷に関する基礎を解説する。
2 電荷に働く力
点電荷間に働く力をクーロンの法則により求める方法を講義する。また,点電荷の種類や配置場所によってクーロン力がどのようになるかも解説する。
3 電界と電気力線
電界は電荷に働く力を指す。ここでは,電界の大きさと方向の定義を行い,点電荷による電界を解説する。また,電界と電気力線との関係も説明する。
4 電気力線とガウスの定理(1)
ガウスの定理を用いると,多くの場合の電界を簡単に計算することができる。まず,ガウスの定理を解説し,球導体が作る電界を説明する。
5 電気力線とガウスの定理(2)
前回から引き続き,ガウスの定理 を用いた電界の計算についての解説を行う。ここでは,円柱導体および平板が作る電界を説明する。
6 電界と電位
電位は,電界に逆らって電荷を運ぶのに要する仕事量である。ここでは,電位と電圧の定義を行い,電界と電位の関係を説明する。
7 点電荷のまわりの電位
点電荷を例に取り,点電荷が作る電界と電位についての関係を数式およびグラフを用いて解説する。
8 中間試験
中間試験
9 試験の解答,復習
中間試験の解答を行い,同試験範囲の復習を行う。
10 帯電導体のつくる電界と電位(1)
導体の性質を解説する。その後,同心導体球に電荷を与えたときの電界と電位を例にとり,帯電体が作る電界と電位を計算する。
11 帯電導体のつくる電界と電位(2)
前回から引き続き,帯電体が作る電界と電位を解説する。ここでは,同心円柱が作る電界と電位を例にとって解説する。
12 静電しゃへい,電気映像法
静電しゃへいの概念を解説し,その後電気映像法による電界および電位の計算方法を解説する。
13 一様でない電界と電位
電界は,電位の傾きである。ここでは,一様でない電界における電位の計算についての解説を行う。
14 3次元空間の電界と電位
3次元空間で変化する電界と電位についての解説を行い,電気双極子を例にとって説明を行う。
15 ラプラスおよびポアソンの方程式
空間に分布した電荷の密度と電位の関係としてラプラスおよびポアソンの方程式がある。2枚の平行平板を例に取り,平板間の電荷密度を計算する方法を説明する。
16 前期定期試験解答および復習
前期定期試験の解答を行い,同試験範囲の復習を行う。
17 静電容量
静電容量とは,コンデンサに蓄えられる電荷量の目安を示す物理量である。ここでは,平行平板コンデンサの静電容量を計算する。
18 コンデンサの接続
コンデンサの並列および直列接続による合成容量の計算方法を解説する。
19 コンデンサの静電エネルギー
コンデンサは,電気エネルギーを蓄えることができる。ここでは,コンデンサに蓄えられる電荷と電圧,エネルギーの関係を解説する。
20 静電容量の計算(1)
静電容量の計算として,同心導体球および同軸円柱の静電容量の計算を行う。
21 静電容量の計算(2)
前回から引き続き,静電容量の計算を行う。ここでは,平行な2本の導線の静電容量を計算する。
22 電位係数
多数の導体からなる系では,電位係数という概念を利用すると電荷と電位は極めて簡単な関係であらわすことができる。ここでは,電位係数による電位の計算方法を解説する。また,誘導係数および容量係数についての解説も行う。
23 中間試験
中間試験
24 試験の解答,復習
中間試験の解答を行い,同試験範囲の復習を行う。
25 誘電体と誘電率,分極,電束密度
コンデンサに絶縁体を挿入すると,蓄えられる電荷量が増加する。この絶縁体を誘電体と呼ぶ。ここでは,誘電体による蓄積電荷の増加についての解説を行う。
26 誘電体中のガウスの法則
誘電体をコンデンサに挿入したときの誘電体の中の電界と電束密度さらにコンデンサの静電容量についての計算を行う。
27 誘電体中の静電エネルギーと力
誘電体をコンデンサに挿入したときの誘電体に蓄えられる静電エネルギーの計算を行う。また,仮想変位法によって電極間に働く力を計算する。
28 電流密度,抵抗率,導電率
電流の定義,抵抗率と導電率および電流密度とキャリヤ密度についての解説を行う。
29 電流密度が一様でない場合の抵抗計算
電流密度が一様でない場合の抵抗計算例として,中空管状導体の内側と外側の間の抵抗を計算する。
30 電荷の連続の式
閉曲面を例に取り,電荷の連続の式の概念について解説を行う。
31 日常生活の中の電磁気学の法則
日常生活で扱っている磁石の話や誘導雷などの話を中心に,これから学ぼうとする磁界発生の現象などを定性的に解説する。
32 モーターの回転する定性的な解説
モーターの回転原理を小学生の時代に作ったことのある3極モータのデモを展示して,なぜ回転するのかを定性的に解説する。
33 直流と交流の違いの講義
2年生で習った交流回路における記号法のjωLとか1/jωCなどを理屈を,微分や積分表示での数式で表されていること,電磁気学では,その数式を現象から導出していることを解説する。
34 電流による磁界の発生,アンペアの法則
電流が流れると右ねじの回転方向に磁界が発生する。この強度はアンペアの周回積分の法則によって,電線までの距離と電流値によって表されることを解説する。
35 アンペアの法則を適用した演習
無限長電線を例に取り,平行導線が2本あった場合で同じ方向に電流が流れている場合と逆向きに流れている場合の電線間の磁界を求める。また,電線内部の磁界強度の計算も行う。
36 アンペアの法則を適用した演習
2つの電線の方向が平行で無い場合,発生した磁界は合成ベクトルで表されることの例題を解説する。
37 アンペアの法則を適用した演習
環状ソレノイド,無限長ソレノイド内の磁界計算を解説する。
38 中間試験
中間試験
39 試験の解答,復習
中間試験の解答を行い,同試験範囲の復習を行う。
40 磁性体の物性
磁化の定義,常磁性,反磁性,強磁性の材料特性を解説する。また,材料別比磁化率の大きさを比較しながら説明する。
41 強磁性体を含めたアンペアの法則の展開
強磁性体では,磁界と磁束密度は比例関係にない。一般にヒステリシス特性をもち,磁界を高くしても磁束密度は飽和する。このような特性でのアンペアの法則の関係式を演習問題を例にあげて解説する。
42 磁気回路の講義と演習
空隙を有する環状ソレノイドを例にあげ,アンペアの法則を適用した時に,電気回路と対応した磁気回路の構成を演習問題も混ぜて解説する。
43 磁気におけるガウスの法則の講義と演習
磁気におけるガウスの法則を解説し,静電気問題でのガウスの法則と比較した例をあげて解説する。
44 アンペアの法則の復習と演習
前期で講義した内容のうちアンペアの法則に関係ある演習問題のプリントを配布し,解答説明を黒板を使ったプレゼンテーションする。
45 強磁性体を含めた磁気回路の復習と演習
前期講義した内容のうち強磁性体を含めた磁気回路の関係ある演習問題のプリントを配布し,解答説明を黒板を使ったプレゼンテーションする。
46 試験の解答,復習
前期定期試験の解答を行い,同試験範囲の復習を行う。
47 ビオ・サバールの法則の講義
ビオ・サバールの法則を使った有限長電線から作られる磁界の計算例を解説する。
48 有限直線電流の磁界の演習
前回に引き続き,直方体の3辺に電流が流れた場合,指定座標位置の磁界強度を計算する方法を講義し,別途演習問題を解くことによってを理解を深める。
49 ループ電流の磁界
ループ状の電流を流したときの中心軸上の磁界強度をビオサバールの法則から求める。またヘルムホルツコイルの原理も解説する。
50 ビオサバールの法則を適用した演習
ビオサバールの法則を適用した演習問題プリントを配布し,解答説明を黒板を使ったプレゼンテーションする。
51 ビオサバールの法則を適用した演習
前回に引き続き,解答説明を黒板を使ったプレゼンテーションする。
52 磁界中の電流に作用する力
一定方向の磁界中に電線をおき,電流を流すと電磁力が生じる。この原理を解説し,ベクトル積表示によって,力の大きさと方向とを同時に求める方法を解説する。
53 中間試験
中間試験
54 試験の解答,復習
中間試験の解答を行い,同試験範囲の復習を行う。
55 磁界中の荷電粒子に作用する力
クーロン力,ローレンツ力の解説と,一様磁界中を電荷q,質量mの粒子が円運動しているときの力の大きさ,円軌道の半径を求める方法を解説する。
56 ファラデーの電磁誘導の法則
一様な磁界中を導体棒が一定速度で移動する場合,導体の両端で電圧が発生する。この誘導電圧は磁束が時間的に変動する場合に起こり,ファラデーの電磁誘導の法則といい,閉回路モデルを例示して解説する。
57 ファラデーの電磁誘導則の演習
ヒステリシス特性をもった環状ソレノイドに一定時間の割合で磁界を変化させた時のコイルに生じる時間に対する電圧,電流,電力を計算する。また一周期の間にコイルに供給されるエネルギーは,ヒステリシス曲線の面積に磁心の体積をかけたものと等しいことを示す。
58 周波数と表皮効果の講義
周波数の異なる交流電流を流す場合の電流密度の分布は,周波数が高くなるほど中心部分では電流が流れにくくなる。この現象は交流電流自身による誘導電圧が電流を妨げるような向きに働くためであり,表皮効果といい,この解説を行う。
59 渦電流とIH クッキングヒータ
時間的に変化する磁界を導体に加えたとき,電磁誘導によって導体の内部に起電力が生じ,環状に電流が流れる。これを渦電流といい,この発生原理を解説する。また,この渦電流によって生じた損失をジュール熱によって利用するのがIHクッキングヒータで,周波数特性も含めて解説する。
60 電磁誘導の法則の微分形
ファラデーの電磁誘導の法則を微分形に直し,微分形からさらに積分形に変更できるようなベクトル公式の説明とマクスウェルの方程式の残り3つの概略の説明を行う。


中間試験および定期試験を実施する。中間試験を赤松担当と森田担当の別々に実施する。 定期試験を赤松担当と森田担当の別々に実施する。