【 2007 年度 授業概要】
科   目 制御工学II ( Control Engineering II )
担当教員 笠井 正三郎
対象学年等 電子工学科・5年・前期・必修・2単位 ( 学修単位II )
学習・教育
目標
工学系複合プログラム JABEE基準1(1)
A-4-3(100%) (d)1,(d)2-a,(d)2-d,(g)
授業の概要
と方針
4年次の制御工学Iを基礎とし,状態方程式に基づくシステムの表現,制御系の設計,評価方法を講義する。また,実際にコンピュータを用いて制御を行う場合に必要となるディジタル制御についても講義する。



1 【A-4-3】  古典制御と現代制御の違いを説明できるようになる。
2 【A-4-3】  単純な連続系システムのモデル化ができ,状態方程式による線形システムの記述が出来きるようになる。
3 【A-4-3】  可制御性,可観測性の意味を理解し,与えられ線形システムに対して,可制御,可観測の評価が出来るようになる。
4 【A-4-3】  連続系線形システムにおいて,安定性について説明ができるようになる。
5 【A-4-3】  連続系線形システムにおいて,状態フィードバック制御のコントローラを設計できるようになる。
6 【A-4-3】  離散時間信号を数学的に表現する方法(Z変換)を学び,実際に簡単な離散信号をZ変換を用いて表現できるようになる。
7 【A-4-3】  パルス伝達関数を求めることが出来るようになる。
8 【A-4-3】  離散時間系システムでの可制御性,可観測性を評価できるようになる。
9 【A-4-3】  離散時間系システムにおいて,状態フィードバック制御の設計ができるようになる。
10 【A-4-3】  有限整定応答について説明できるようになる。












1 前期中間試験により評価する。
2 レポート及び,前期中間試験により評価する。
3 レポート及び,前期中間試験により評価する。
4 前期中間試験により評価する。
5 前期中間試験により評価する。
6 レポート及び,前期定期試験により評価する。
7 前期定期試験により評価する。
8 前期定期試験により評価する。
9 レポート及び,前期定期試験により評価する。
10 前期定期試験により評価する。




成績は,試験80% レポート20% として評価する。なお,試験成績は中間試験と定期試験の単純平均とする。総合評価は100点満点で60点以上を合格とする。
テキスト 「制御工学 下 −現代制御理論の基礎−」:深海登世司・藤巻忠雄 監修(東京電機大学出版局)
参考書 「自動制御」:伊藤正美著(丸善)
「システム制御の講義と演習」:中溝高好・小林伸明共著(日新出版)
関連科目 D4「制御工学I」,D3「電気数学」
履修上の
注意事項
本講義では,4年次で学習する制御工学Iに加えて,線形代数(行列など)の知識が必要となるので,十分復習しておくこと。本講義は,15週で2単位となる「学修単位II」の科目であるので,具体的な演習は自学自習に負うこととなる。各自,予習復習演習をしっかりと行うこと。

【授業計画( 制御工学II )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 古典制御と現代制御
4年次の制御工学Iと比較しながら,今年度行う制御工学IIの内容について説明を行う。特に,現代制御では,行列を用いた,線形代数,微分方程式をよく用いるので,行列に関する復習を行う。
2 状態方程式によるシステムのモデル化
制御対象となるシステムは,機械的な物,電気的な物,複合的な物と様々である。これらの多くは微分方程式で表現される。ここでは,その中でも線形常微分方程式で表されるものに限り,状態方程式という形で整理し,議論していく。
3 状態方程式の解とシステムの安定判別
状態方程式の解法について説明する。これまで習ってきた微分方程式と考え方は変わらないが,変数(状態変数)がベクトル,係数が行列になるため,新たに行列指数関数を導入する。また,この解より,システムが安定となる条件を考える。
4 線形システムの構造
システムの状態変数表現は一意ではなく,線形変換によってもシステムの特性(伝達関数とか固有値など)は変化しない。したがって,モデルを状態方程式で表現する場合,制御系を設計する場合など,状況に応じて取り扱いやすい表現をとることができる。いくつかの代表的な標準形式について学ぶ。
5 可制御性と可観測性
伝達関数に基づく制御(古典制御)では,入力によって出力が変化するものを扱っている。しかし,実際のシステムでは全ての内部状態が入力の影響を受けるとは限らず,また,全ての内部状態が出力に影響を与えるとも限らない。状態方程式表現では,それらを可制御性,可観測性として判別することができる。
6 状態フィードバックによるシステムの安定化
可制御なシステムでは,各状態変数に適当な係数を掛けた和を制御入力に戻すことにより(状態フィードバック),任意の応答が実現できる。すなわち,システムの安定化,応答改善が可能である。このことを示すとともに,改善させたい極への配置法について学ぶ。
7 最適制御
最適制御の概念を説明する。そして,2次形式で表現された評価関数を最小にする最適制御が状態フィードバックにより実現できることを知り,2次のシステムについて実際にフィードバック係数を求め,制御後の応答特性を評価する。
8 中間試験
1週目から7週目に学んだ現代制御について,到達目標がどの程度達成されたか試験を行う。
9 離散時間システム
近年,ディジタル技術の進歩により,複雑な制御器もマイクロコンピュータやDSPを利用して実現できるようになって来た。これらを利用する場合,扱われる信号は連続的に変化するのではなく一定時間間隔で変化する。このようなシステムを離散時間系という。前半は概要を,後半は離散時間系をどのように扱うか学ぶ。
10 連続時間系から離散時間系への変換
連続時間で表現されている状態方程式を,一定時間間隔でサンプルしたときに同等となる離散時間方程式(状態推移方程式:差分方程式)を導出する。
11 Z変換とその基本的な性質
離散時間を表現する場合,従来のラプラス変換では,時間遅れが有理式とならず,システムの合成,応答などを求めることが難しくなる。その点を解決する手段として,Z変換を導入し,その基本的な性質を理解する。
12 システムのパルス伝達関数
状態推移方程式をZ変換し,連続時間系での伝達関数に相当するパルス伝達関数を求める。また,パルス伝達関数より離散時間系でのフィードバックシステムの合成を行う。
13 逆Z変換
逆Z変換は,Z変換で表現されたパルス伝達関数などをもとの時間領域の関数に戻す変換である。ただし,Z変換によりサンプル点間の値は失われるので,逆変換されたものは,サンプル点での値だけであることに注意する。
14 離散時間系のフィードバック構造と安定性
離散時間系では,サンプラ間で区切られた連続応答素子で1つのブロックとなり,システムの合成を行う場合には,どこでブロックを区切るか注意する必要がある。これらの注意点を例題により確認する。また,離散時間系でのシステムの安定性,双一次変換により連続時間での安定判別の利用などについても説明を行う。
15 有限整定応答
離散時間制御で特徴的な有限整定制御について説明を行う。有限整定とはある有限サンプル時間で目標値に一致する制御のことであり,離散時間制御の場合にこのような制御を実現出来る場合がある。有限整定には,サンプル点でのみ目標値と一致している場合と,ある時間以上で完全に一致している完全有限整定がある。


中間試験および定期試験を実施する。